王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第7章 東の帝国マコラ編

⑤グリフォン討伐とヨシノ村の復興

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 ヨシノ村は過疎化が進んでいて、担い手である若手が減り、生活水準が下がり生活機能を維持するのに精一杯な状況だった。

 戦う手段も持たず、今にも襲撃してくるかも知れないグリフォンに怯えながら生活している。

 グリフォンは、村からほど近い山の麓に巣作って棲息していた。レノが視覚強化で「遠見」し、グリフォンを確認する。

「いる・・あそこ。2体、かな」

 レノが感知して、体を固くする。

「正面戦闘を避けて横か後ろから攻撃し、飛び上がったら矢や防弾を当てて落とすんだ」
「分かった!」
「行くぞ!」

 俺の掛け声で三人で立ち向かう。

「レノ、無理するなよ?正面に立たないように意識しろ!距離をとって回避に専念するんだ。いいな?」

 レノは俺を見て、頷く。

 グリフォンはバサバサと空中を旋回して、警戒している。急降下して、俺たちを狙う。

 俺たちは一斉に横に散って視界から外れる。
すぐさま俺の放った風魔法の音速を超える砲弾は、魔物の左翼の付け根に着弾した。

「ギギキーッ!!ギャー!!」

 つんざくような鳴き声に、耳を塞ぎたくなる。バサバサと翼を羽ばたかせ、抵抗するが飛び立てない。

 シュウは、水流を巻き起こし水霧フォグフレアで霧を作り出し高圧圧縮によりグリフォンを捻り潰した。

 更にもう一頭、警戒してなかなか地上に近づこうとしない。

 俺は、雷撃系攻撃魔法を上空に向かって放った。グリフォンに長極太・長高電圧の雷を落とし、ほぼ即死するような超高威力の雷撃で、ほぼ確実に麻痺、失神状態にする。

 直撃したグリフォンは、物凄い音をたて地上に落下したが、まだピクリと動いている。

 トドメはレノが、脳天に水矢を放ち絶命させた。

「こ、怖かった・・すごい迫力だった・・」
「終わったか?」
「ああ、そのようだな。良くやったな、レノ」

 そう言って頭を撫でると、シュウは揶揄うような笑みで俺を見てきた。気持ちを知られてしまった以上、俺がレノに何をしても揶揄れるな。はぁ・・

「どうしたの?カイル」
「いや、何でもないよ」

 レノだけが、知らない事だ。

「そう?疲れちゃった?カイル、怪我してる・・カイルにばかり戦わせちゃったね。俺に癒させて?来て?」

 レノは心配そうに俺の手を引いて、適当な倒木に座らせる。レノは、俺の前に跪いて光を放つ。俺の好きな光だ・・キラキラと煌めいて美しく暖かい。

 シュウもまた目を奪われていて、近くまで歩いてくる。レノはそれに気が付くと、シュウに手を伸ばし引き寄せると、光の粒が舞う場所へ座らせた。

「あったかいな・・」

 シュウが目を瞑る。
 俺はレノから目が離せない。

 痛みのあった場所も、生傷もすっかりなくなって体が軽くなった。

「レノ、ありがとう」
「相変わらずすごいな、レノは」
「ふふっ」

 俺は、レノが女神か何かのように見えて仕方がなかった。



 ヨシノ村は、活気のない村だった。
 その日食べるにも困っているほど困窮していた。傷ついた村を復興するためには、まずは人手や資材が必要だが、今はどちらも足りない状態だ。

 せめて食糧難だけでも解消したいところだが、農産が盛んな東の国マコラの民にも関わらず、農作の手段を村人は十分に知らない。

 それに水がない。
 過疎化で老人や女子供がほとんどの中で、森近くの川へ水を汲みに行くのは大変な事だろう。

「あの井戸はいつ枯れたんだ?」
「はい。井戸が枯れて、もう3年も経ちました。農業が出来なくなり、若い衆は村を出て行きました」
「そうか」
「カイル、井戸を復活させればまた農業が出来て、若者が帰ってくるかな?」
「ああ、そうかもな」
「なら、俺、井戸を作るよ!」

 そう言って、村の中心に土魔法で掘削を進め、形を整備すると綺麗な水が湧くことを確認した。それはあっという間の作業で、村人はまるで神を崇めるかのように喜び、感謝した。

 畑の中心には、水路を作り、水が巡るように水車を作った。

「シュウ・・あのね?火鼠の魔石をひとつだけ、水車に使ってもいいかな・・もし、水が滞っても水車が畑に水を運ぶようにしたいんだ」
「もちろん!そうしよう。俺、種芋と小麦の苗を置いていくから。小麦は風車で粉がひけるように、もうひとつ魔石を使おうと思う」

 そんな会話を聞きながら、なんて欲のない奴らなんだと少し呆れた。あれ程、価値のある魔石を必要としていたと言うのに。

 種芋や小麦の栽培を教え、レノが植物魔法で豊かに実るように力を付与して村を後にした。

 泣きながら感謝する村人は、いつまでも俺たちを見送り手を振っていた。

 村人達が、自給自足し、上手く農地が広がれば若者がそれを担ってくれたらいいと願う。









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