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第2話 現在
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「四季河原」
教室の戸を開けてそう呼び掛けてから、教師・山田はしまったと内心舌打ちをした。
放課後学童の教室内では山田の呼びかけに反応した児童が三人居たためだ。
(三つ子ってややこしいな)
山田は思わずそう思った。
瓜二つと言わず、瓜三つの六の瞳がこちらを見ていた。
だが。
「なんだよー、山チン先生」
「山田先生何ですか?」
「あ、山田先生髪の毛に白髪が!」
三者三様の反応が返ってきたが、三番目に発言された内容に山田はぴくっとこめかみが引きつるのを感じた。
「俺はまだ二十代だぞ!」
最近若白髪が増えたとは思ったが、いざ生徒に指摘されると情けなくなる。
(それと増えたのは明らかにこの三つ子たちが原因だと思う!)
そう、この田舎の小学校に鳴り物入りで入学してきた三つ子。
現在小学四年生であり入学当初からの問題児揃いであった。
「山チン~、遊んで~!」
山田の腕にぶら下がってきたのが、三つ子の代表・四季河原晴。
三つ子の中では元気いっぱいの男の子だった。やんちゃとはこの子の為にある言葉ではないかというくらい、いつも溌溂としていた。
「晴ったら。宿題が終わってないでしょうが」
晴の頭を容赦なく本で叩いて発言したのが、四季河原・雪。
しっかりものの長女の風格が漂うクールな性格だ。
がクール過ぎて、正直教師が掴めない所も多々あるのが難と言ったところだ。
「山田先生の白髪は~、いーち、にーい、さーん、しー」
「あ、雨さんよ? 悲しくなるからどうか白髪を数えないでくださいね!」
眼鏡をずいっと持ち上げながら山田の白髪を数えているのは、四季河原家の不思議っ子担当の四季河原・雨。
本当に、この子の行動と発言は晴以上に掴めない。
一つに結んだ三つ編みをぴょこぴょこ跳ねさせていつも楽しそうだ。
ちなみに三つ子は天気の名前を親につけられたみたいだが、次女の雨が雨女が強い様で、主な行事はいつも雨が降っていた。
おかげさまで行事が行われるときの教師陣はいつも雨の時の対策を取るのが常となった。
「先生ー、晴たちになんか用があったんじゃあないのー?」
他の学童の児童が山田のポロシャツの裾を引っ張って言う。
そこで山田は用事を思い出した。
「そうだった。晴さん、雪さん、雨さん」
四季河原家の三つ子を呼ぶときは教師は皆下の名前を呼んでいた。
「お母さんから電話が来ているから、職員室へ来て欲しいんだ。三人とも、だ」
三つ子は「はーい」と返事をして放課後学童の教室を出ていく。
廊下から、三つ子のかしましい会話が聞こえてきた。
その賑やかさから山田はふと心配になった。
電話を受け取った山田の耳に、憔悴しきった母親の声が思い出されたからだ。
一体、何があったのだろうか。
思わず、外の天気を見遣る。
雷鳴がとどろきそうな、天気だった。
教室の戸を開けてそう呼び掛けてから、教師・山田はしまったと内心舌打ちをした。
放課後学童の教室内では山田の呼びかけに反応した児童が三人居たためだ。
(三つ子ってややこしいな)
山田は思わずそう思った。
瓜二つと言わず、瓜三つの六の瞳がこちらを見ていた。
だが。
「なんだよー、山チン先生」
「山田先生何ですか?」
「あ、山田先生髪の毛に白髪が!」
三者三様の反応が返ってきたが、三番目に発言された内容に山田はぴくっとこめかみが引きつるのを感じた。
「俺はまだ二十代だぞ!」
最近若白髪が増えたとは思ったが、いざ生徒に指摘されると情けなくなる。
(それと増えたのは明らかにこの三つ子たちが原因だと思う!)
そう、この田舎の小学校に鳴り物入りで入学してきた三つ子。
現在小学四年生であり入学当初からの問題児揃いであった。
「山チン~、遊んで~!」
山田の腕にぶら下がってきたのが、三つ子の代表・四季河原晴。
三つ子の中では元気いっぱいの男の子だった。やんちゃとはこの子の為にある言葉ではないかというくらい、いつも溌溂としていた。
「晴ったら。宿題が終わってないでしょうが」
晴の頭を容赦なく本で叩いて発言したのが、四季河原・雪。
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がクール過ぎて、正直教師が掴めない所も多々あるのが難と言ったところだ。
「山田先生の白髪は~、いーち、にーい、さーん、しー」
「あ、雨さんよ? 悲しくなるからどうか白髪を数えないでくださいね!」
眼鏡をずいっと持ち上げながら山田の白髪を数えているのは、四季河原家の不思議っ子担当の四季河原・雨。
本当に、この子の行動と発言は晴以上に掴めない。
一つに結んだ三つ編みをぴょこぴょこ跳ねさせていつも楽しそうだ。
ちなみに三つ子は天気の名前を親につけられたみたいだが、次女の雨が雨女が強い様で、主な行事はいつも雨が降っていた。
おかげさまで行事が行われるときの教師陣はいつも雨の時の対策を取るのが常となった。
「先生ー、晴たちになんか用があったんじゃあないのー?」
他の学童の児童が山田のポロシャツの裾を引っ張って言う。
そこで山田は用事を思い出した。
「そうだった。晴さん、雪さん、雨さん」
四季河原家の三つ子を呼ぶときは教師は皆下の名前を呼んでいた。
「お母さんから電話が来ているから、職員室へ来て欲しいんだ。三人とも、だ」
三つ子は「はーい」と返事をして放課後学童の教室を出ていく。
廊下から、三つ子のかしましい会話が聞こえてきた。
その賑やかさから山田はふと心配になった。
電話を受け取った山田の耳に、憔悴しきった母親の声が思い出されたからだ。
一体、何があったのだろうか。
思わず、外の天気を見遣る。
雷鳴がとどろきそうな、天気だった。
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