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第1話 誕生と別れ
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昔々というかごく最近のお話。
ある所に大恋愛をした末に両家の親の反対を押し切って駆け落ちし、結婚した若い夫婦が居た。
若い夫婦は田舎の片隅のボロ家を一生懸命綺麗にし、そこに住み始めた。
若い夫婦は自給自足の生活で苦しくともそこには常に二人の笑顔が溢れていた。
ある時、夫婦は流星群を見た。
沢山の流れ星に夫婦は祈った。
「早く私たちに赤ちゃんがやって来てくれますように」
その願い通り、しばらくして奥さんには新しい命が宿ったことがわかった。
流石に、産婆も居ない様な田舎だったので夫婦は都会の病院に行くことになった。
そこで産婦人科医に告げられたのは。
「多胎児、ですね」
多胎児とは、双子かそれ以上の赤ちゃんである胎児が居るという可能性が濃厚という事だ。
夫婦は驚き、そして喜んだ。
そしてぴったり十月十日後、奥さんはどうにか無事に子どもたちを出産した。
子どもは四つ子だった。
だが、四番目に生まれた子どもだけが心臓が弱かった。
弱かった為か、生後三日が経った曇りの日の朝。
天国へと旅立って行ってしまった。
夫婦は嘆き悲しんだ。
「残りの子どもだけでも立派に育てよう」
そして、生まれた子どもに名前を付けた。
長男・晴
長女・雪
次女・雨
亡くなった赤ちゃんにも二人は名前をちゃんと付けた。
次男・雲
三つ子となった子どもたちはすくすくと大きくなった。
大きな病気も怪我もすることなく、元気いっぱい育った。
夫婦は三つ子たちに、亡くなった雲のことはちゃんと伝えて育ててきた。
幼いながらも、きょうだいが一人生まれてから欠けたのが分かったのか三つ子たちは棚に置いた雲の位牌に対し神妙に手を合わせ見上げていた。
そして三つ子が小学生になった時。
夫婦はランドセルを前にはしゃぐ三つ子を並ばせて正座をさせた。
「いいかい、今からお前たちに大事な物を与える」
父親の威厳がすっかりついた三つ子のお父さんはそう言った。
「なあに、なあに?」
「変なものは嫌よ」
「お父さんなら大丈夫よ、ね?」
母親はそんな三つ子を愛おしそうに見て、様子を見ていた。
本当なら、ランドセルもそれを喜ぶ姿ももう一つあったということを胸の中で思いながら……。
「お守りだ」
三つ子のお父さんは、晴には赤い色のお守りを。
雪には白い色のお守りを。
雨には水色のお守りを、それぞれ手渡した。
「いいか。一生お前らを守ってくれるお守りだ。肌身離さず大事にするんだぞ」
いつもなら笑って言う父親が神妙な顔つきで真面目に言うもんだから三つ子はそれぞれ大事にお守りを小さな|掌の中に握りしめたのだった。
ある所に大恋愛をした末に両家の親の反対を押し切って駆け落ちし、結婚した若い夫婦が居た。
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ある時、夫婦は流星群を見た。
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「早く私たちに赤ちゃんがやって来てくれますように」
その願い通り、しばらくして奥さんには新しい命が宿ったことがわかった。
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そこで産婦人科医に告げられたのは。
「多胎児、ですね」
多胎児とは、双子かそれ以上の赤ちゃんである胎児が居るという可能性が濃厚という事だ。
夫婦は驚き、そして喜んだ。
そしてぴったり十月十日後、奥さんはどうにか無事に子どもたちを出産した。
子どもは四つ子だった。
だが、四番目に生まれた子どもだけが心臓が弱かった。
弱かった為か、生後三日が経った曇りの日の朝。
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夫婦は嘆き悲しんだ。
「残りの子どもだけでも立派に育てよう」
そして、生まれた子どもに名前を付けた。
長男・晴
長女・雪
次女・雨
亡くなった赤ちゃんにも二人は名前をちゃんと付けた。
次男・雲
三つ子となった子どもたちはすくすくと大きくなった。
大きな病気も怪我もすることなく、元気いっぱい育った。
夫婦は三つ子たちに、亡くなった雲のことはちゃんと伝えて育ててきた。
幼いながらも、きょうだいが一人生まれてから欠けたのが分かったのか三つ子たちは棚に置いた雲の位牌に対し神妙に手を合わせ見上げていた。
そして三つ子が小学生になった時。
夫婦はランドセルを前にはしゃぐ三つ子を並ばせて正座をさせた。
「いいかい、今からお前たちに大事な物を与える」
父親の威厳がすっかりついた三つ子のお父さんはそう言った。
「なあに、なあに?」
「変なものは嫌よ」
「お父さんなら大丈夫よ、ね?」
母親はそんな三つ子を愛おしそうに見て、様子を見ていた。
本当なら、ランドセルもそれを喜ぶ姿ももう一つあったということを胸の中で思いながら……。
「お守りだ」
三つ子のお父さんは、晴には赤い色のお守りを。
雪には白い色のお守りを。
雨には水色のお守りを、それぞれ手渡した。
「いいか。一生お前らを守ってくれるお守りだ。肌身離さず大事にするんだぞ」
いつもなら笑って言う父親が神妙な顔つきで真面目に言うもんだから三つ子はそれぞれ大事にお守りを小さな|掌の中に握りしめたのだった。
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