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25.流れ星
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桜は指輪を怜月に渡した。
「ほら、戻ってきたわ」
彼女はそう言うと、指輪を右手の薬指にはめた。
「・・・ああ、指が細くなってしまったから・・・」
中指にはめ直す。
「うん。ぴったり。・・・まあ、あなた、久しぶりね。日本旅行は楽しかった?」
まるで知人に再会したようにそう言って。
「あなたも懐かしいでしょう?」
左手のこちらもダイヤの結婚指輪に話しかけている。
「おばあちゃん、お母さんにあげたの?」
「違うのよ。シャーロットったら、私と喧嘩して腹いせに持って行ったのよ!」
おかしそうに笑う。
「私、頭に来て、その日とってもお酒を飲んでしまったの。・・・あの子ったら私が寝ている隙に取って行ったのよ。それっきりだもの」
「お母さんは家出をしたの?その指輪をおばあちゃんから盗んで?」
「そう!そうなの」
桜は合点が行った。
だから気まずくて帰宅しなかったのか。
しかし、いつもスーパーの特売でも乗り遅れて目当ての商品を買う事ができなくて、関係ない美味しそうなお菓子買ってきちゃったと笑うあののんびりした母が、大喧嘩の末に、金目のものを盗んで家出とは意外。
日本に来てだいぶ戦闘能力が下がってしまったのだろうか。
「・・・それって、なんでって聞いてもいい?」
「大抵、子供が親と喧嘩するのは、生活態度のことです」
それはわかる。桜もいつもそうだ。
「あとは、恋人のこと」
「・・・・それって、お父さんのこと?」
「はい。桜子ちゃん、ごめんなさいね。・・・私、日本人と結婚したいと聞いて、とっても反対してしまったの。ほら、自分のことがあるでしょう・・・」
悲しそうに彼女は言った。
シャーロットってね、結構モテたのよ。
大学を卒業して、中環にある外資系の大きな会社で秘書をしていたの。
英語と日本語を話せたしね。
一年だけ日本に行かないかという話になって、転勤したの。
そこで、桜子ちゃんのパパに助けられたのね。
一年だけという話だったのに、クリスマスに帰ってきたシャーロットが日本で結婚すると言い出したの。
私はもうびっくり。
ママだけが、あらすてき、いいじゃないのとにこにこしていた。
その頃、ママは女優を引退していて、後進の指導と、お茶やお食事のお誘いは引きも切らずで、それが仕事みたいになっていた。
大哥は相変わらずだったけれど。
大哥も、基本ママの言うことには賛成の人ですからね、一緒に花嫁道具を買いに行こうとかお気軽なものでした。
でも私は大反対。
旦那様が何か宥めていたような気もするけど、私はかまわずにわめき散らした。
そうしたらシャーロットまで大声を張り上げて。
私は怒りながらワインをたくさん飲んだの。
そのままひっくり返ってしまって。
そうして、気づいたら朝。
「お月様、おはよう。今日もとても良いお天気よ。具合はいかが?」
ママが二日酔いに効くお茶を持ってきてきくれた。
私はお茶を飲みながら、なんだか違和感を感じて手を見ると、指輪がない。
やられた、と思った。
「お星様が、昨日のうちに日本に行ったわよ」
「ママ!どうして止めてくれないの!」
「まあ、お月様、ちゃんとお祝いは渡したの?プレゼントはあげた?」
ズレているとは知っていたけど、こんな時まで、と私はもうびっくり。
「・・・ママ!そうじゃないでしょ・・・・」
「どうしてお祝い事におめでとうと言えないの。ねえ、お月様。あの子はとってもいい子よ」
「知ってるわ。とってもいい子よ。だから不幸になるところを、苦労するところを見たくない!」
ママはきょとんとして、それから笑いました。
「そんなもの。構わなければいいじゃない」
人生の負の部分に執着しないママです。
「不幸とか苦労とかに、いつまでもおつきあいする必要はないでしょう?嫌になったら帰ってくるわよ。私もそうだもの」
ママはそう言うと、ちょっと信じられないような金額の小切手と、エメラルドをお祝いにあげた、と自慢した。
ママが大事にしていた大きなエメラルドのブローチ。
ママは暁子にも連絡をしていたようですね。
私は暁子の事はそれっきり。
だって、ママも暁子も大哥も私の味方をしてくれないもの。
私はそのどうしても埋められない溝が悲しかったの。
私にとって娘とのこんな形での別れは本当に大切な星が遠くに消えて行ってしまったように感じたのだもの。
暁子にあのダイヤをもらった時、小さな私は流れ星が手の中に落ちて来たと思ったの。
でも、それはやっぱり本当に流れ星で、私のお星様とどこかに行ってしまったのだと思えて、あの時は本当に悲しかった。
「ほら、戻ってきたわ」
彼女はそう言うと、指輪を右手の薬指にはめた。
「・・・ああ、指が細くなってしまったから・・・」
中指にはめ直す。
「うん。ぴったり。・・・まあ、あなた、久しぶりね。日本旅行は楽しかった?」
まるで知人に再会したようにそう言って。
「あなたも懐かしいでしょう?」
左手のこちらもダイヤの結婚指輪に話しかけている。
「おばあちゃん、お母さんにあげたの?」
「違うのよ。シャーロットったら、私と喧嘩して腹いせに持って行ったのよ!」
おかしそうに笑う。
「私、頭に来て、その日とってもお酒を飲んでしまったの。・・・あの子ったら私が寝ている隙に取って行ったのよ。それっきりだもの」
「お母さんは家出をしたの?その指輪をおばあちゃんから盗んで?」
「そう!そうなの」
桜は合点が行った。
だから気まずくて帰宅しなかったのか。
しかし、いつもスーパーの特売でも乗り遅れて目当ての商品を買う事ができなくて、関係ない美味しそうなお菓子買ってきちゃったと笑うあののんびりした母が、大喧嘩の末に、金目のものを盗んで家出とは意外。
日本に来てだいぶ戦闘能力が下がってしまったのだろうか。
「・・・それって、なんでって聞いてもいい?」
「大抵、子供が親と喧嘩するのは、生活態度のことです」
それはわかる。桜もいつもそうだ。
「あとは、恋人のこと」
「・・・・それって、お父さんのこと?」
「はい。桜子ちゃん、ごめんなさいね。・・・私、日本人と結婚したいと聞いて、とっても反対してしまったの。ほら、自分のことがあるでしょう・・・」
悲しそうに彼女は言った。
シャーロットってね、結構モテたのよ。
大学を卒業して、中環にある外資系の大きな会社で秘書をしていたの。
英語と日本語を話せたしね。
一年だけ日本に行かないかという話になって、転勤したの。
そこで、桜子ちゃんのパパに助けられたのね。
一年だけという話だったのに、クリスマスに帰ってきたシャーロットが日本で結婚すると言い出したの。
私はもうびっくり。
ママだけが、あらすてき、いいじゃないのとにこにこしていた。
その頃、ママは女優を引退していて、後進の指導と、お茶やお食事のお誘いは引きも切らずで、それが仕事みたいになっていた。
大哥は相変わらずだったけれど。
大哥も、基本ママの言うことには賛成の人ですからね、一緒に花嫁道具を買いに行こうとかお気軽なものでした。
でも私は大反対。
旦那様が何か宥めていたような気もするけど、私はかまわずにわめき散らした。
そうしたらシャーロットまで大声を張り上げて。
私は怒りながらワインをたくさん飲んだの。
そのままひっくり返ってしまって。
そうして、気づいたら朝。
「お月様、おはよう。今日もとても良いお天気よ。具合はいかが?」
ママが二日酔いに効くお茶を持ってきてきくれた。
私はお茶を飲みながら、なんだか違和感を感じて手を見ると、指輪がない。
やられた、と思った。
「お星様が、昨日のうちに日本に行ったわよ」
「ママ!どうして止めてくれないの!」
「まあ、お月様、ちゃんとお祝いは渡したの?プレゼントはあげた?」
ズレているとは知っていたけど、こんな時まで、と私はもうびっくり。
「・・・ママ!そうじゃないでしょ・・・・」
「どうしてお祝い事におめでとうと言えないの。ねえ、お月様。あの子はとってもいい子よ」
「知ってるわ。とってもいい子よ。だから不幸になるところを、苦労するところを見たくない!」
ママはきょとんとして、それから笑いました。
「そんなもの。構わなければいいじゃない」
人生の負の部分に執着しないママです。
「不幸とか苦労とかに、いつまでもおつきあいする必要はないでしょう?嫌になったら帰ってくるわよ。私もそうだもの」
ママはそう言うと、ちょっと信じられないような金額の小切手と、エメラルドをお祝いにあげた、と自慢した。
ママが大事にしていた大きなエメラルドのブローチ。
ママは暁子にも連絡をしていたようですね。
私は暁子の事はそれっきり。
だって、ママも暁子も大哥も私の味方をしてくれないもの。
私はそのどうしても埋められない溝が悲しかったの。
私にとって娘とのこんな形での別れは本当に大切な星が遠くに消えて行ってしまったように感じたのだもの。
暁子にあのダイヤをもらった時、小さな私は流れ星が手の中に落ちて来たと思ったの。
でも、それはやっぱり本当に流れ星で、私のお星様とどこかに行ってしまったのだと思えて、あの時は本当に悲しかった。
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