銀河のかなたより

羽月蒔ノ零

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銀河のかなたよりⅡ

その16

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 宇宙船へ足を踏み入れた途端、この船がほかの星からやって来たものだということを、改めて強く認識させられた。

 そこは地球とはまったく別の、完全なる異世界であった。
 
 船の内部は、人類が想像できるあらゆるものを遥かに越えているような、未来世界を舞台にしたSF映画を更に数百年、いや、数千年分未来へ進めたもの、といったような感じがした。

 その不思議で神秘的な光景に見惚れながら、みんなはどんな表情をしているのだろうとふと気になり隣を見てみると、優莉がなにやら難しそうな顔をしていた。

「どうした?」
「なんかさ、船長のフィーモさん、ドラえもんの映画の銀河エクスプレスに出てきた車掌さんにそっくりな気がする。……本人かな?」
「ああ、本当だ! ……いや、けど本人ではないだろう。多分」

「……そうだよね。けどさ、それだけじゃないんだ。なんかもっとこう、どこかで会ったことのあるような、会ったというより、見たことがあるような……」
「お~、なんかそう言われるとそんな気もしてきた。どこかで会ってるのかなあ」
「ん? お!? ……ええ!? あ……、あ!! わかったああ!!」
「なんだ!? どうした?」
「ちょんまげだよ、ちょんまげ! あの、新宿で見かけた! 和服の! そんでそのあと、あの喫茶店でも見かけた! あの人たちだ!」

「……、あ! ほんとだ! あの新宿の、ちょんまげの和服の喫茶店の!」

「我々のことを、知っているのですか?」

「うん! 地球で見たことあるよ! 新宿で!」
「新宿……、たしかに、行ったことがある!」

「喫茶店でも見かけたよ!」
「喫茶店……、行ったね~! 二ッ矢カバダー懐かしい!」
「行きましたね! 私、喫茶店で初めてオレンジジュースを飲んだんです! とってもおいしかった!」

「実はその時、私たちもあの喫茶店にいたんだ!」

「なんと、我々はすでに地球で遭遇していたのか!」

「そういえばあの時、地面が沈んだような、お店が浮かんだような感じがしたんです。あれって……、もしかして!」

「うん! あれはね、ミューの力でお店を丸ごと持ち上げちゃったんだ! あの時は私たちもびっくりしちゃったよ!」

「なるほど! マーリの言っていたことはつまりそういうことだったのか! となると、さっき火星で聞いたのと同じように、喫茶店でも何か声が聞こえたのだが、それもつまり……!」

「うん! あれもレーコさんのテレパシー!」

「なるほど……。そういうことだったんだ……。なんだか、謎がどんどん解けていくね!」
「あのテレパシーは、確か当時の日本の時刻だと……。それは一体なぜですか?」

「実は、ちょうどあの時ミューがひらめいてくれたんだけど、私たちの力は手を重ね合わせることによって強くなるんだ! それで、それぞれの力が一体どのくらい強くなるのかを試してたんだけど、もしも力の増強によってテレパシーが他の人に聞こえてしまったとしてもさほど混乱させたり驚かせたりすることがないようにと、レーコさんは『時刻』を伝えることを選んだんだ!」


「ほ~、なるほど。ふむふむ」

「いやあ~。久しぶりだねえ。久しぶりっていうのもなんか変だけど。あの頃からずっと太陽系にいるの?」

「ああ。実は我々が太陽系に辿り着いたのは、ちょうど新宿の街をちょんまげの和服姿で歩いていた、あの日だったんだ」

「へえ~! そうだったんだ!」

「いやあ、いろいろお話もしたいのだが、あまりゆっくりはしていられない。今この瞬間も、地球は小惑星衝突の脅威にされされているのだ! よし、小惑星の軌道を逸らすため、早速宇宙へ向かおう! それでは、出発進行!!」
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