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第二章
32.興味無い
しおりを挟む告白の返事に期待を寄せた他生徒の視線は、ご指名を受けた拓真へ向けられる。
まるで蟻地獄にはまってしまったかのように集中する視線と無言の重圧は、拓真にとって堪え難いほど苦痛に。
昨日は本人に『俺に近寄るな』と忠告したはずが、何故かたった一晩で事態は悪化の一途を辿っている。
あの時の断り方が中途半端だったのか。
彼女には俺の気持ちが充分に伝わりきらなかったのか。
最後は反論してこなかったから、てっきり納得して帰ってくれたと思っていたのに。
しかも、逃げ道など用意されていない。
右に左にと生徒達に囲まれているせいか、気付けば卍固め状態に。
奴はバカだと思っていたのに、計画は意外にも巧妙だ。
きっと、身体はこの場から逃げる事は出来ても、視線は全校生徒に追いかけられるだろう。
黙ってるだけじゃ事態は収まらない。
だから、彼女にいち早く目を覚ましてもらう為に結果を言い伝えなければならなかった。
本当は大人しく暮らしたい。
この学校で、地味で静かな学生生活を過ごす予定だった。
それなのに、何でこんな破茶滅茶な金髪ギャルに、目を付けられてしまったんだろう……。
運命的な告白から30秒ほど経った頃、拓真はようやく顔を見上げた。
太陽光でキラリと反射したメガネはスポットライトのように眩しい。
奴と目があった瞬間、いい返事を期待した。
毎日コツコツとアピールし続けたLOVE HUNTERの私が、恥らいを捨てて屋上から告白したのだから。
昨日までは無視されたり怒鳴られたり散々な想いをしてきたけど、出会ってから二週間という短い期間で彼の中に私という存在が誕生していたから。
全校生徒が二人の恋の行方を注目している中、ようやく向き合う覚悟が決まった拓真は、和葉に向けて口を開いた。
「あのさぁ、何度も言うけど……。俺、あんたに興味ないから」
あっさりと言い切った拓真の瞳は、先日同様鋭利の刃物のように鋭い。
和葉は天国気分を味わう準備を始めていたが、返事が届いたと同時に奈落の底へと突き落とされた。
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