LOVE HUNTER

風音

文字の大きさ
上 下
32 / 340
第二章

32.興味無い

しおりを挟む


  告白の返事に期待を寄せた他生徒の視線は、ご指名を受けた拓真へ向けられる。

  まるで蟻地獄にはまってしまったかのように集中する視線と無言の重圧は、拓真にとって堪え難いほど苦痛に。



  昨日は本人に『俺に近寄るな』と忠告したはずが、何故かたった一晩で事態は悪化の一途を辿っている。


  あの時の断り方が中途半端だったのか。
  彼女には俺の気持ちが充分に伝わりきらなかったのか。
  最後は反論してこなかったから、てっきり納得して帰ってくれたと思っていたのに。





  しかも、逃げ道など用意されていない。
  右に左にと生徒達に囲まれているせいか、気付けば卍固め状態に。

  奴はバカだと思っていたのに、計画は意外にも巧妙だ。


  きっと、身体はこの場から逃げる事は出来ても、視線は全校生徒に追いかけられるだろう。


  黙ってるだけじゃ事態は収まらない。
  だから、彼女にいち早く目を覚ましてもらう為に結果を言い伝えなければならなかった。



  本当は大人しく暮らしたい。
  この学校で、地味で静かな学生生活を過ごす予定だった。

  それなのに、何でこんな破茶滅茶な金髪ギャルに、目を付けられてしまったんだろう……。



  運命的な告白から30秒ほど経った頃、拓真はようやく顔を見上げた。
  太陽光でキラリと反射したメガネはスポットライトのように眩しい。



  奴と目があった瞬間、いい返事を期待した。
  毎日コツコツとアピールし続けたLOVE HUNTERの私が、恥らいを捨てて屋上から告白したのだから。

  昨日までは無視されたり怒鳴られたり散々な想いをしてきたけど、出会ってから二週間という短い期間で彼の中に私という存在が誕生していたから。






  全校生徒が二人の恋の行方を注目している中、ようやく向き合う覚悟が決まった拓真は、和葉に向けて口を開いた。



「あのさぁ、何度も言うけど……。俺、あんたに興味ないから」



  あっさりと言い切った拓真の瞳は、先日同様鋭利の刃物のように鋭い。

  和葉は天国気分を味わう準備を始めていたが、返事が届いたと同時に奈落の底へと突き落とされた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

処理中です...