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第七章
74.悪夢
しおりを挟むーー深夜3時20分
「やめて下さいっ……」
沙耶香は暗闇の中で悲鳴を上げながら布団からガバっと起き上がった。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
等間隔に漏れる荒い息づかい。
額にビッシリと滲む冷や汗。
しかし、視界に入ってくるのは暗闇に包まれている颯斗の部屋の中。
次第に現実へと引き戻されて直前まで見ていたのが夢だと判明すると、胸に手を当てて呼吸を整え直した。
颯斗は沙耶香の悲鳴で目が覚めて身体を起こして、ゴシゴシと目を擦りながら聞いた。
「どうしたの? 突然悲鳴なんて上げて……」
心配して横目を向けるが、沙耶香の頭の中は悪夢から抜けきれずに返事をする事が出来ない。
一年に二回以上同じ夢を見るくらい辛い過去に縛られている。
衝撃的だったあのシーンが鮮明に思い出される度に傷付くし、後悔の波が押し寄せてくる。
当時の一件がトラウマになってしまっているせいか、何年経っても苦しみ続けていた。
出口の見えない悪夢。
私はこの先何年同じ夢を見続けるのだろう。
「サヤ?」
颯斗が隣からパジャマの半袖をクイッと引っ張ると、沙耶香はそこでハッと現実に引き戻されて颯斗へと目を向けた。
「颯斗さん……」
「なんか怖い夢でも見てたの?」
でも、今はいつも目覚めた時とは違う。
彼が隣にいるから私の心は救われている。
「何でもありません」
心の事情は明かせない。
だから、目線を落としたままそう言った。
しかし、彼は……。
「頼れる肩がすぐ隣にあるのに、どうして使わないの?」
「えっ」
「最近『何でもありません』ばかりだよ。辛い時は寄りかかればいいじゃん。俺はサヤの彼氏じゃないの?」
颯斗はそう言いながら、沙耶香の頭を手で引き寄せて肩にもたれかかせた。
沙耶香は颯斗の香りと優しさに包まれると、鼻がツンと刺激されるくらい喜びが込み上げる。
「そうでしたね。颯斗さんはサヤの一生大切な人です」
沙耶香は颯斗の優しさで穏やかな気持ちになると、そっと瞼を閉じた。
過去のトラウマを乗り越えるには想像以上の時間がかかるかもしれないけど、大好きな人が隣にいるという今に精一杯感謝しなければならない。
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