仮想世界β!!

音音てすぃ

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72.こっちの意地っ張り

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 フラグメントマスターは両手剣だが片手持ちでも扱うことができる剣。
 射程が長く、軽く防ぐとクリアの技術も重なって、かなり凶悪だと理解できた。
 剣自体には大した重さはないだろう。衝撃波が気になる。遠距離対応だった場合、すごく嫌。
 流石、片腕の剣士だ。
 さらに浮遊する二本の白い剣、これもクリアに接近した時、盲点から攻撃してくるのが厄介だ。

「休むなオトメ!死力を尽くせ、マグナの仇はこんなものでは埋まらぬぞ!」
「知らねえよ、剣を握るなら……死を覚悟しろ!」

 ルーンナイフを三本投擲、一本が左太ももに命中、一瞬のスキができた、今だ。

「シロカミなんて知らねえ、生きたきゃ必死に生きろ!」

 接近からの短剣二本による連続攻撃。
 片腕でも見事に防ぎきるが、疲労が早い。

「お前はさぞ幸せに生きてきたんだろうな。人に助けられ、自分から何もしなくても、誰かに道を示してもらったのだろう……」
「ああ、そうかもしれない」
「ならば、我らの痛み、知らぬと言うなら今ここで教えてやる!」

 僕の愁と絶叫をはじき、突攻撃をしかける。
 予測通り、後ろからも白い剣が来る!
 挟み撃ちだ。

「もう無理だ」

 体を翻す、白い剣を踏んで、クリアの前に直進、フラグメントマスターを避けつつ、右腕の青い「絶叫」を玉座方面に投擲。
 クリアは先の攻撃を予測し、横に避けた。
 ここまで予想通り、すぐに魔糸を巻き取り、体が引っ張られ、玉座に向かう。

「ここに先の腕とイノセントがある」

 兜割りで破壊した白い剣が玉座の横に寝ていた。
 そしてそこに剣が刺さり、柄には僕の腕が必死に腕に力を込めていた。

「ありがとう、代わってやる」
「その剣は先の?」

 白い剣を足で踏み、愁と絶叫をしまい、引き抜く。

 奥で五月蠅い。

 腕を放り投げる。
 イノセントは淡い白い光を纏い、視界に文字が浮かぶ。

『固有技:イノセントブレイザー』

「固有技を会得しました」
「そうか、ノウェさんがくれたんだな……」
「解説、イノセントブレイザーは、刀身を非殺傷魔炎化、HP攻撃ではなくMPとCP攻撃に切り替えます」
「わかった」

 剣一本、今度は間違えない。

「剣一つで何を」
「ふぅ……」

 攻撃予測の隙間を見た。
 そこ目掛けて直進、剣を振りかぶる。丁寧に息を吐いていた。
 綺麗に二本の白い剣を回避し、クリアの体を捉える寸前、フラグメントマスターが邪魔をした。
 数回攻撃をしたが、すぐに体勢を整える。

「なぜ白い剣を目視を必要せず回避できる!?」

 もう答えない、僕は最後の攻撃にする。
 既にクリアの剣術のクセは見えた。

 さらに追い打ち、そして急に僕はしゃがんだ。

「!」
「お前は目しか信じていないんだ」

 上に斬り上げ、フラグメントマスターを弾く。
 そして一瞬、クリアの胴体ががら空きになる。

「いくぞ白の王」
「『固有技:イノセントブレイザー』発動」

 個体の刀身が軟化、そして魔炎化する。
 刀身が2倍長くなり、真っ白い魔剣が誕生した。

 そして、がら空きのクリアに右下から左上えの斬り上げ。
 手ごたえが重い、血は出ずに、白い光が傷口になるはずだったところから漏れだした。
 フォロースルーで一歩前に出た。

「オトメ……憎き者め……」
「僕は誰かに助けられてきたし、多分そうじゃなかったらここにいない。けどそれでも、僕はなんでも使って生きる!お前と違うかもしれないが、僕は死にたくないし、全力で何でもして生きるんだ!だから……そう、クリア……さんは凄いと思うよ、自分でここまでやってきたんだろ?まぁすこし意地っ張りだけどね」
「……痛みは右腕だけだ、貴様の剣は我の肉体でなく、気力を切り裂いた。こんなに侮辱的な剣があるだろうか?」
「僕の目的はお前をぶっ飛ばすことと、キリカを取り戻すことだ。だから、お前らの生き死にはあんまりどうでもいい」
「下らないと言っただろ?」
「さてどうかな?キリカだってわかってるはずだと思う。ここにとどまりたいけど、そうするわけにはいかない。一週間でも夢を見ていたかっただけなんだろうな……と、勝手に思ってる」

 クリアの声に驚愕の表情が感じられる。

「お前、一週間と?誰から……いや、この城の頂点の砂時計のことを知っているのか?」
「いや、ノウェさんって人から聞いたのだけど……」

 それ以降、クリアは口を開けなかった。




ーーーーーー

 一方のキリカ、カエデ戦。

 カエデは一歩引いた瞬間、アサルトライフルを発砲、容赦しないようだ。
 キリカは青の剣閃を広範囲展開、銃弾を全て防ぎきる。
 盾のようで剣であったそれに着弾すると、青い破片が綺麗だった。
 触れた弾丸は粉々にされた、斬られたのだろうか。

「乱暴な使い方を……オトメはPEだが、キリカのその力は一体何なんだ……?」
「声、漏れてるよ」

 次、キリカが剣の射程を伸ばしてカエデを狙う。
 避けようと回避した方向にキリカは走る。
 先の剣を捨てて、もう一本の青い剣を出し、カエデに斬りかかる。

「チッ……」
「斬れろ!」

 直前で身体強化魔法を使い、距離をとろうとしたが、それに合わせてキリカが射程を伸ばす。

「ステルス起動……」

 姿を消し、剣閃を回避、危なかった。
 続いて対物ライフルを構える、スコープはとびきり倍率が低いものがいいが、今回はアイアンサイトを用いて感覚で狙う。

「(見えてない……よし)」
「消えるんじゃねぇ!」

 カエデの姿は見えていなはずなのだが、キリカは勘で剣を振り回した。

「危な!」

 カエデの服をかすめたところでステルスが切れる、ミーツケタ!という表情でカエデに斬りかかる。
 速い、避けるより一発撃つか?

「受けきってみろよ」

 発砲、ほとんどゼロ距離での射撃。
 弾丸の速さについてこれなかったキリカの青い剣は軟弱で、完全に防ぐことができなかった。

「ぐっは……あ!」

 金属を何かで爆発させたような音が鳴り、キリカは数メートル吹き飛ばされる。
 生きているのが不思議なくらいだ。

「魔力切れになるぞ、私もなったが……なぜ気絶しなかったかはしらん」
「発散だよ……まだまだ足りないぜぃ!」

 結局キリカは青の剣閃しかないのだ、キッチリ避け切って、脳に理屈叩き込んでやる。

「そうか……」

 コッキング。
 薬莢を手に取り、投げる、当然斬られる。
 さて、と、もう一度発砲。

 キリカの瞳孔が動く気がした。

「ッ!」
「ウソだろ!」


 剣閃は何層か重なって、50口径の弾丸を防ぎ切った。
 割れた剣閃は壁、床に突き刺さって消える。
 この娘の魔力が底知れない。

「彼女の力、ちゃんと私が使わないといけないの!」
「彼女の力?」
「ヒエン……力を貸せぇ!」

 さらに強力な剣を作る。
 それは肌で感じた感想だが、まるでマグナの固有技のように強力な魔力を感じた。

「そんな魔力、エーテル場がもたないぞ!」
「再生の力、そんなに軟弱じゃないよ」

 向こうが何でも斬るなら、こちらも徹底的に攻撃を加える必要がある。
 単純な火力でもいい、こちらのスキも多くなってもいい。
 全火力を投下する。

「これでも……斬ってみろ!」

 カエデは手榴弾を投げた。
 バーサーカーモードのキリカは容赦なく斬る。
 衝撃が加わり、当然爆発した。

「これで……」

 カエデは投擲した後、匍匐し極力衝撃を防いだ。
 煙が立ち込める中、カエデは何かに持ち上げられる。

「な、なんだ!」
「やるじゃん、おっりゃー!」

 背中を掴まれていたらしく、キリカに宙を三回転くらいさせられたあと、玉座方向に投げられる。
 その時見えたキリカは頭から血を流していた。
 手榴弾は防ぎきることはできなかったようだが、執念は感じた。

ーーーーーー

 僕の前にカエデが落ちて来る。

「な、なんだ!」
「キリカに……」
「はぁ?なんで?」

 僕は後ろを振り返り、クリアが気絶していることを確認し、扉方向を見る。


「オトメ君、私を……止めてよ!今はあなたの敵ぃ!」

 半透明の青い剣、魔力の塊のようなそれは間違いなく『青の剣閃』だ。
 そうか、これは僕が終わらせる事だったのか、そうかそうか。

「任せろ、怒り、悲しみ、諸々、全部僕が断ち切って受け入れてやる!」

















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