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アストン子爵家とベニート男爵家は合意の上で婚姻に望んだ。愛はなかったがそれなりに信用していたはずだ。
「追々、信頼関係を築き、やがてほんとうの夫婦になろう」
「はい、テレンツォ様」
マリエラはその言葉を信じて頷いた、この方に付いて行けば良いと決心した。

ところが上辺だけの言葉だったのだと痛感するのは、新婚一月と経っていない頃だった。
「騙されたわ……あの人ときたら!」
テレンツォはとにかく金にだらしなく、あればあるだけ使ってしまうのだ。蟄居していた両親が大慌てで戻って来たほどだ。

「どうしたというのだ!この程度で傾いたりはしないがあまりに豪快に使い過ぎるぞ」
「ええ、お父様。テレンツォがやらかしたのです」
共同預金から7桁の数字が一気に減った、数百万という額にアストン卿は悲鳴をあげた。実直で慎重派の彼にとってその額はあまりに大きかった。


「はぁ?その程度の額で何を騒いでいるんだい」
「その程度って……貴方は」
「いいじゃないか、投資だよ投資!ちゃんと利息がつく買い物なんだ、それとも私が信じられないのかい?」
「そ、それは」

開き直った物言いにアストン卿は激怒して預金を勝手に引き出せない様に処理をした。
「いいかマリエラ、好き勝手させてはいけないよ、しっかり手綱を引くんだ。あの男は駄目だ」
「ええ、お父様。承知いたしました」

その後、テレンツォは口座から自由に引き出せないと知るやマリエラに当たり散らす。
「どうしてだ!私が自由に買い物できないなどあり得ない!」
「きゃあ!?」

張り手を食らわされたマリエラはそのまま昏倒してしまい、数日間寝込むことになる。




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