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それは美しい指輪
しおりを挟むいよいよ路銀がままならなくなったテベリオたちは、己たちの装飾品を売り捌いて凌いだ。
だがそれは日々の糧のために消えてしまう。
仕方なく最終的に戻ることにしたのだが旅費がない、そこでベネッタを何とか宥めすかして指輪と腕輪を手放すように言った。
「ほんとに買い戻してくれるのよね?ねえ!」
「うん、約束する。なんならもっと良いものを買ってあげるよ」
「わかったわ、約束だからね!」
宰相からの返事が来ないままホテルを出た彼らは早速と質屋へ急いだ。開店と同時に雪崩込んできた連中を見て店主は泡を食う。急場凌ぎのためとはいえ、ここまで必死な彼らを訝しむ。だが、彼らの正体を聞いて口をあんぐり開けた。
「おやまあ、王太子殿下でしたか……余程の事とお見受けする」
「ああ、そうなんだ!王宮から返事がなくてな、とり急ぎ頼む帰りの旅費に当てたい」
王族の証である刺青を見せてテベリオはそう言った。
まず最初に見せたのは見事なレースのドレスだった、一度着たものは用事が無いとベネッタが言ったからだ。
「うーん、これは型取りした紙製ですね、レースではない」
「どういうことよ」
「型を取った量産品ということです、手縫いのレースではなく薄く梳いた紙をレースのように仕立てたものです」
「そんなバカな!では宝石を鑑定して頂戴!これは本物のはずよ!」
今度は指輪と腕輪を見せてドヤ顔をする、これほどの品は滅多に目にかかれないだろうと御託を並べた。
だが……
「……お客さん、これはすべて模造品です、ガラス工芸としてなら買い取りますが二束三文ですね」
「なんですって!?」
これには王太子も参戦して抗議した、王族の品が紛い物のはずがないだろうと。
「そんなはずはないんだ!わざわざ職人を呼び寄せて造ったものなんだぞ!」
「そう言われましても……申し訳ないが他をあたってください」
このような対応に王太子夫妻は激怒して「こんな店では話にならない」と言い放ち他の質店の戸を叩く。
でも、そこでも似たような反応が返って来てしまった。やはり模造品であると論破されてしまう。
「ど、どういうことだ!すべてイミテーションだったなんて……」
「おかしいわ!こんな事って、あ!ひょっとしたらアンドレイナが本物とすり替えたのじゃないかしら?」
「なんだって!?」
斜め上を行く発言をしたベネッタに同調したテベリオは「許せないことだ」と激高した。
だが、ほんとうは金喰い虫でしかない王太子夫妻に最初から模造品を渡していたのだ。そうとは思っていない彼らは行き場のない怒りをアンドレイナにぶつける。
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