完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
9 / 14

王妃と王女

しおりを挟む



相も変わらずテベリオから「支援の要請」が届く、それを一瞥して「捨て置け」と言ったのは宰相であった。
「国の一大事と言う時にあの方は……」
いまも何処かで呑気に新婚旅行だといって遊んでいる男に用はないと言った。共和制に向けて動き出した国会は忙しない。



一方、城の一室では王妃と王女が慌てふためいていた。身柄を拘束される前にできるだけ宝飾品を搔き集めているのだ。そんなことをしても身体検査で発覚するれば没収されるというのにご苦労なことだ。

「あああ!早く!首飾りをありったけ入れるのよ」
「わかっているわ、お母ちゃま!指輪はぜんぶ詰め込んだわ」
ギャアギャアと姦しく騒ぐふたりを置いて、侍女達は冷めた目で見ている。最後のひと足掻きには参加させて貰えない。


「あらあら、噂を聞いてやってきてみれば醜いこと。その指輪一つで民がどれくらいパンが買えるかわかって?約3年分よ、罪深いわ」
アンドレイナ・サンドリーニがやって来て嫌味を言う、部外者がやってきたことで王妃はヒステリーを起こす。

「何よ貴女!無礼だわ!」
「そうよ、たかが第二妃の癖に!」

だがアンドレイナはそれに反応せず、淡々と話す。
「ねぇ、貴方方に食べさせる日々の糧が勿体ないと思うの、今後は私と同じに日に1食だけにしましょう。おかげでサイズが2段も落ちたのよ」
「な、なにを言っているの?」

急に怯みだした王妃がポトリと首飾りを落とした、それを「勿体ない」といって拾いあげる王女だ。

「無駄話は御終いね、皆様よろしく」
彼女がそう言って手を叩けば騎士達が雪崩れ込んできて、王妃と王女を拘束した。もちろん、隠そうとした宝飾品は没収だ。

「きぃぃ!放しなさい、私を誰だと思っていて!?」
「いや~放してよぉ、お母ちゃま助けて!お父ちゃまは何をしているのよ!」

「貴女の御父様は間もなく断頭台へ行かれるわ、文句も言わずとても勇敢なのね」
「んな!?だ、断頭ですって……」
目を見開いた王女は青褪めて震え出した、自分も同じ道を行くのかと恐れて泣き出す。

「いや、いやだ……お願いよ。命だけは」
「あらぁ?命乞いをするのね、どうしようかしら?」彼女はコロコロと笑って「すぐには殺さないわ」と笑った。

「命乞いをするなら宰相に掛け合ってあげる、まぁ最悪の選択になるとは思うわ」
「どういう意味……?私は命が助かるならばなんでも良いわ!」

それを聞いた彼女は微笑んで「楽しみにしていて」と言った。




そして、断頭台を逃れた王妃と王女は国を追われた。北の荒野に放逐されたのだ。
ある意味、断頭より遥かに厳しい処断といえる。

「お母ちゃま……私達は最悪の選択をしたの?」
「うぅ……お腹が空いたわ、昨日から何も食べてない」

雪だらけで何もない、遠くから鹿の鳴き声がしたが仕留めて食べるようなことは出来ないだろう。風雪を凌ぐ装備も碌にしていない。
彼女らの行き着く先は目に見えていた。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

男爵令息と王子なら、どちらを選ぶ?

mios
恋愛
王家主催の夜会での王太子殿下の婚約破棄は、貴族だけでなく、平民からも注目を集めるものだった。 次期王妃と人気のあった公爵令嬢を差し置き、男爵令嬢がその地位に就くかもしれない。 周りは王太子殿下に次の相手と宣言された男爵令嬢が、本来の婚約者を選ぶか、王太子殿下の愛を受け入れるかに、興味津々だ。

【完結】愛人を作るのですか?!

紫崎 藍華
恋愛
マリエルはダスティンと婚約し愛され大切にされた。 それはまるで夢のような日々だった。 しかし夢は唐突に終わりを迎えた。 ダスティンが愛人を作ると宣言したのだ。

忘れられた薔薇が咲くとき

ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。 だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。 これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。

まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。 私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。 お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。 けれど、彼に言われましたの。 「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」 そうですか。男に二言はありませんね? 読んでいただけたら嬉しいです。

とある侯爵令息の婚約と結婚

ふじよし
恋愛
 ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。  今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

処理中です...