4 / 32
4
しおりを挟む「え、セレンに会えないとうはどういうことですか?父上」
「愚か者!陛下と呼べ!ここは公式の場であるぞ!」
宰相や大臣らが居並ぶ中、叱責を食らった王子はビクリとした。何故にそこまで怒っているのか見当がつかないようだ。良く良く見ると彼女の父である近衛騎士団長のアルドワン卿の姿があった。
「アルドワン卿……あのセレンとは」
「……」
彼は宰相の後ろに控えているが身分は相当高い人物だ。形式上は父である国王を護る盾として控えてはいるが貴族派筆頭なのは事実なのだ。
彼はフイッと視線を外し国王を護る顔に戻った。
王からの警告を聞かされたが耳に届かない、ただこのままセレンジェールを蔑ろにするのならば今の立場は危うくなるというのは分かった。
「父……国王陛下、俺は……私は決っして彼女を蔑ろにしては」
「ほう、ならば高熱を出した婚約者を何故に帰らせた?留めて介抱すべきではなかったのか?その場で手当てをしていれば彼女は数日間寝込むまで容態は悪くならなかったはず。お前はビルド伯爵令嬢と遊ぶことばかり優先した結果であろうが!言い訳をする前にそのことをどう説明する!」
激高した王はガシャンと大音を立てて玉座の上に立ち上がった。王杓を床に突き立て大穴を穿った音だった。
「ひぃ!だって帰るというから……それなら安心だと思って従者らも沢山いたし」
「……はぁ、浅慮なことよ。大切な婚約者を捨て置いて己の欲望を満たすことばかり。お前は誰も知らないと思っているのか?ビルド嬢と同衾していることはわかっているのだ」
「え、そんな……俺は」
益々と青褪めて行くコランタムは言い訳を失って震えるばかりだ、まさか自分の従者らが裏切るなど思ってもいなかった様子だ。
「ぐ、クソ……爺やが吐いたのか、内緒だとあれほど言っといたのに!」
「大馬鹿者!人のせいにするな!このままでは王太子交代も視野にいれなけばならないのだぞ!貴族筆頭の令嬢を裏切ったことを猛省いたせ!」
「そ、そんな!一度きりの過ちだというのに」
ちらりとアルドワン卿の顔を見たが彼は微動だにせず、ただ黙って王の護衛をしていた。当事者としてそこにいながら『誰が王太子になろうが知ったことではない』という態度だった。
コランタムはそちらに出向き話をしようとしたが、大臣たちがそれを阻む。
「どちらに行かれるのですか?貴方はやるべきことが山積みでしょう」
「左様、此度のことを深く自省なさいませ。危うくなった御身分のこと含めて」
「そんな!俺は!俺は!どうか聞き届けてくれないか!アルドワン卿よ!」
彼は酷く後悔したが、それは己の地位が揺らいだことで焦っただけだった。そのようなことを看破しているアルドワン卿は相手にしなかった。
1,866
あなたにおすすめの小説
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」
みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。
というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。
なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。
そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。
何か裏がある――
相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。
でも、非力なリコリスには何も手段がない。
しかし、そんな彼女にも救いの手が……?
【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……
小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。
この作品は『小説家になろう』でも公開中です。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。
心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。
ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」
幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。
──どころか。
「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」
決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。
この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる