カイリーユと山下美那、Z(究極)の夏〜高2のふたりが駆け抜けたアツイ季節の記録〜

百一 里優

文字の大きさ
111 / 141
第3章

3-34 やっぱり俺は恋愛に発展しない系モテ期?

しおりを挟む
【前回のあらすじ】
 4チームでの練習試合は成功に終了。ルーシーと美那、リユの高校生3人は飲みに行く大人たちとは別行動に。駅へと向かう途中、ルーシーが美那とリユが付き合っているのかをく。腹ペコの3人はルーシーのリクエストでトンカツ屋に入り、そこでルーシーがバスケから遠ざかっていた訳と再開した理由を語る。



「あの時、あの海の横の公園で、あなたたち二人の、プレーを見たら、なぜだか、わからないですが、また、バスケットボールを、やる気が、いてきたのです」
 ルーシーは、そう言うと、俺と美那を交互に見ながら、優しく微笑ほほえむ。
「なんでだろうね?」と、美那がルーシーに問いかける。
「そうですね……たぶん、とっても楽しそうにバスケットボールをしていたから、でしょうか」
 美那と顔を見合わせる。オツと同じようなことをルーシーが俺たちのプレーに感じていたとは!
「へえ、そうなんだ!」と、美那が反応する。「実は、先輩のオツが、ペギーたちとプレーして、バスケットボールを楽しめるようになったんだって」
「どういうことですか? 彼は、楽しくないのに、バスケットボールをしていたのですか? リユの説明では、彼は、バスケットボールが大好き、ということでしたが」
「それはそうなんだけど……なんて説明したらいいのかな。えーと、日本の学校の部活動は、その部活動を担当する先生にもよるんだけど、プレーに自由を許さずに、先生に言われた通りにしないといけないことが多いの」
「ブカツドウは、a high school basketball team  の意味ですか?」
「イェス。そう。それで彼は高校時代に、先生から厳しくされて、伸び伸びとプレーできなくなってしまっていたらしいの。ところが、ペギーたちのプレーを見て、ああいう風に自由に楽しくプレーしていいということに気付かされた、って言ってた。あ、それと、この人のプレースタイルも影響を与えたみたいけど」
 美那はそう言うと、俺の方を向いて、グーで俺の肩を軽くく。
「あー、リユのプレースタイルはとても興味深いです。バスケットボールをする前は、どのスポーツをしてましたか?」
「テニス」
「オー、ヤー。なんとなく、わかります。とても、動きが、鋭いです」
 ルーシが俺ににこりと笑いかける。
「それを言ったら、ルーシーもすっげー、動きが鋭いよな。チームで作戦を考えるときに、どうやってルーシーの鋭い動きを抑えるか、難しかったもんな」
「そう。どうやったら、あんな風に動けるようになるの? どういうトレーニングをしてきたの?」
「そうですね……特別なトレーニングというよりは、いろいろなスポーツをしてきたからではないでしょうか?」
「たとえば?」
 美那は興味津々きょうみしんしんらしい。
「コミックで読みましたが、日本では、ひとつのスポーツを、続けるのが、普通、みたいですね。アメリカではシーズンごとに、違うスポーツをします。わたしの場合、陸上もしましたし、サッカーもしました。テニスは、家族でしたりしました。冬は湖でスケートとか」
「へー、いろいろするんだ」
「はい。でも、一番好きなのは、やっぱり、バスケットボールです」

 そんな話をしていたら、オツからメッセージが。
——>木村の件、よかったら美那に話をしておいてくれ。よろしく。
 あー、あの件かぁ。でも、これは避けては通れないよな。
<——了解です。
 と、返信。
「オツからなんだけど」
 俺は隣の美那を見る。
「先輩、なんて?」
「実は、話の流れで、木村主将からディフェンスと体力増強の方法を伝授してもらうことになったんだ。お前も一緒に」
「え、そうなの?」
 美那が驚いた顔を見せる。
「うん……」
「オツから、ですか? 何か問題ですか? ジャックか、ペギーが暴れてるとか」と、ルーシーがく。
「そういうんじゃないから大丈夫、ルーシー。俺たちのチームの連絡」
「ああ、そうですか。試合に負けた後に、お酒を飲むと、あばれることがあるので、少し心配でした」
「そうなのか……一応、どんな状況か聞いてみようか?」と、俺。
「いいえ、いいえ、リユ、大丈夫です。今日は、とてもフェアな良い戦いでしたし、負けても、スッキリした顔をしていたので、たぶん、大丈夫だと、思います」
 ルーシーが少しだけ首をかしげて、優しい笑みを浮かべて、俺を見つめる。
 やべ、ちょっとドキッとした。
 美那がテーブルの下で俺の足を軽くる。
「え、なんだよ」
「別に」
「ま、いいけど」
 なんだか、美那はまた微妙な表情。ほんのちょっとだけ、さびしげというか。うれがお
「あ、そうだ! ケーキ買って帰ろうよ」
 いきなり美那が話題を変える。
「ワォ! いい、ですね!」
「でも、もう京急は閉まっちゃうんじゃね?」
「うわー、ほんとだ。もうすぐ8時かぁ。そうだ、お母さんに頼んじゃおうっと。ちょっと、リユどいて。電話してくる」
 奥に座っていた美那は、俺を立ち上がらせる。
 そのタイミングで、ロースカツ定食! がやってきた。
「美那、来ちゃったぞ」
「うん。すぐに済むから、先に食べてて」
 美那はそう言うと、電話を掛けながら、店の外に出て行く。
 そんな情景をルーシーが面白そうに見ている。
「こういうのを、気が置けない、ともだち、というのでしょうか?」
 気が置けない? 遠慮がいらないとかそんな意味だったよな。外国人に適当なことを教えるわけにはいかないから、スマホで調べよ。
「ま、そうだな。そういう感じかな。遠慮しなくていい、みたいな? そんな言葉まで、よく知ってるよな、ルーシーは」
「そうですね。まあ、日本語を勉強していて、調べた言葉は覚えます」
「ところで、腹減ったし、美那も言ってくれたし、先に食べてようか?」
「そうですね……でも、すぐに戻ってくると言ってましたから」
 ルーシーは美那が行った方向を振り返る。
「いや、あいつは待たなくていいよ」
「あっ、そうでした。リユ、おはしの使い方を教えてください。まだ、うまく使えないんです」
「え、まあ、いいけど……じゃあ、ちょっと持ってみて」
 うぅむ。確かに見過ごせない箸づかい。これじゃ、食べにくいだろうな。
 向かい側の席からだと教えにくいから、ルーシーの隣に移動して、見本を見せる。
 ってか、いちいち考えずに使っているから、自分で実演しながらじゃないと、うまく説明できんし!
 親指と薬指で片方の箸を固定して、人差し指と中指でもう一本の方を動かす、と見本を見せながら説明する。ルーシーはちゃんと日本語での各指の呼び方を知っているからスゲえ。俺なんか、英語でどういうか知らんし。親指はサムアップっていうくらいだから、サムは知ってるけど、スペルもわからんし。
「ワォ。わかりました。ありがとう。リユは教え方が、とても上手じょうずですね」
「そんなこともないと思うけど……」
 と言っていたら、美那が戻ってきた。
 美那が奥に座ったところで、俺も自分の席に戻る。
「ごめん。もしかして、待っててくれた?」
「いや、ちょうどルーシーに箸の使い方を教えてた」
「あ、そうなんだ」
「はい。リユのおかげで、お箸が、上手に、使えるように、なりそうです」
 そう言って、ルーシーがトンカツを一切れ、つまむ。
「あ、ほんとだ。すごい。普通に使えてる」
「昨日までは、うまく使えずに、日本食を、食べるのに、苦労、してました。ペギーたちに、自慢できます」
 ああ、サクサクでジューシーなトンカツが美味うまい! 俺は、ご飯とキャベツをおかわり。美那とルーシーはキャベツだけ。
 そろそろ食べ終わろうというときに、美那が思わぬことを口にする。
「そういえば、加奈江さんも呼んでおいたから」
「え、なんで。かーちゃんはいいだろ」
「だって、せっかくリユのアメリカ人のガールフレンドがウチに来るのに、紹介したいじゃん。加奈江さんは英語ができるし」
「それ、変だから。ルーシーは、ガールフレンドっていうか、普通にトモダチだろ。かーちゃんに変な誤解させんなよ。可哀想じゃん」
「そうだよね。加奈江さん、早くリユが彼女を連れてきてくれないかなぁ、ってなげいてたもんね」
「カナエさん?」
「あ、リユのママ」
「オー、ヤ。わたしもリユのママに、お会いしたいです」
「でしょ? そう思って、呼んだの」
「ありがとう、ございます、ミナ」
 そういや、美那のやつ、香田さんのことも、かーちゃんに話しやがったもんな。俺の中じゃ、〝リユに彼女をつくる会〟説はまだ消えてねーし。
「じゃ、俺は遠慮しておくわ。女ばっかだし」
「そうすれば? ケーキだけ食べて帰れば? 一応、ケーキはリユの分も頼んどいたから」
「ちぇ。まあ、俺は甘いもの、嫌いじゃねえし……疲れてるし」
「ってか、リユ、今日は絶対すぐ寝るね。だから、早く帰って、寝た方がいいと思うよ。チョー活躍したし」
「なんだよ。なんか、邪険じゃけんに扱うかと思えば、微妙にめてるし」
「ジャケン?」と、ルーシーが訊く。
「あー、つまり、人のことを、軽く、意地悪く扱う感じ?」
「ナルホド……」
 そして、なぜかルーシーは美那のことを見て、くすりと笑う。あー、なんか、ナオさんと同じような笑い方じゃん。なんなんだろうな、これ。どっかで流行はやってるのか? ナオさんとルーシーの共通項は英語? いや、それはねえだろ。
「あ、さっき思いついたんだけど、ルーシーはまだしばらく、日本にいるんだよね?」
「はい。あと、10日くらい」
「じゃあさ、3人でどっか行こうよ。ペギーたちを誘ってもいいけど、高校生3人でどっか行きたくない?」
「オー、That's a great idea! それ、いいです!」
「でしょ。ねえ、リユ、どっかいいところないかな?」
「そんなこと、急に言われてもな」
 デートもしたことのない奴に、そんな質問、振るなよ!
 と、思ったけど、確か、今度の水曜日は旧七夕きゅう・たなばたで、それを調べた時、ちょうど鎌倉辺りで祭りみたいのがあったような……日本っぽいし、いいかも。
「ちょっと、待って」
 スマホで検索。お、これだ。
「これなんか、どうだ?」
 俺はふたりにスマホの画面を見せる。
「鎌倉のお祭り?」と、美那。
「お前に言わなかったっけ? ちょうど試験期間の中の日曜日にお茶したじゃん? あの日は梅雨つゆ最中さなかの雨だったけど、七夕の日でさ、でも七夕って旧暦だと、今頃なんだよ。ほんとは、晴れてる日が多いはずなんだよ」
「え、聞いてない。でも、確かに、そうか。一ヶ月くらいズレてるもんね」
「タナバタ。聞いたことがあります。お願いする、お祭りですね?」
「そう」と、美那が答える。「今は7月7日が七夕なんだけど、でも、リユが言うには、本当は今頃なんだって。日本は今、アメリカと同じカレンダーになっているけど、少し前までは、少し違う独自のカレンダーだったの」
「オー、そうなんですか」
「それでね、その日に晴れていたら、あまがわっていう星の川、リバー・オブ・スターズ? を渡って、織姫おりひめ彦星ひこぼしのすごーく仲のいいカップルが、一年に一度だけ会えるんだけど、今のカレンダーだと、ツユっていう雨が多い時期で、あんまり晴れないの。だけど古いカレンダーの七夕はちょうど今の時期で、今日みたいに晴れた日が多いから、ふたりが会える機会が増えるんじゃないか、っていうロマンチックなリユくんの説なの。確か、そんな話だったよね」
「まあたぶんそんな感じだけど、別に俺の説じゃねえし、ロマンチックでもねえし」
「なぜ、一年に一度、しか、会えないのですか?」
「なんか、仲が良すぎて、遊んでばかりいて、引き離されたんだっけ?」と、美那が俺に振る。
「そうだったと思うけど……」
「ルーシー、あとでちゃんと調べて、正しい話を教えるね? で、リユ、そこ、いいじゃない」
「わたしも、日本のお祭り、行きたい、です」
「じゃあ、決まりね。リユ、ちゃんと調べといてね」
「ああ」
 土曜日は香田さんのおともで美術館だっていうのに、水曜日はルーシーと美那のお供で鎌倉かよ。
 ああ、やっぱり俺は、恋愛に発展しない系モテ期なのかも……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。 前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章 後編 「青春譚」 : 第6章〜

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

処理中です...