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エピローグ【拓夢の話3】

菅野さんのイメージするもの

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「えっと、化粧をする前にこちらを着てもらえますか?」

浅野さんが、差し出したのは明らかに喪服だった。

「喪服ですよね?」

「そうですね!」

そう言って、人数分の喪服を渡される。俺達は、服を着替える。

「黒いネクタイかー。何か嫌なイメージだよな」

かねやんは、そう言いながら着替えていた。

「どんなイメージなんだろうな?」

「死神みたいな?」

まっつんとしゅんは、そんな話をしていた。

「メイクをします。市川です」

『よろしくお願いします』

「やだー。普通でいいのよ」

男だけど、女みたいな話し方をしていた。しゅんの兄ちゃんと同じような感じだろうか?市川さんは、俺達四人のメイクを手際よくすませた。

「イケメンよー」

「ありがとうございます」

かねやんは、最後にメイクをされて喜んでいた。

「じゃあ、準備が出来てますから行きましょう」

浅野さんに言われて、俺達は、歩いて行く。

『綺麗だ』

俺とまっつんは、合わせたように声を出した。そこには、ウェディングドレスを着た凛と理沙ちゃんが立っていた。

「えっとー、タクム君とまっつん君。並んでくれるかな」

俺とまっつんは、凛と理沙ちゃんの隣に行く。

「そこにある椅子に、二人は座って」

そう言われて、俺は凛の隣の椅子に、まっつんは理沙ちゃんの隣の椅子に座る。

「うーんと、しゅん君とかねやん君は、そっちに立ってくれるかな」

森田さんが、しゅんとかねやんを誘導する。凛は、しゅんと手を繋がされて。理沙ちゃんは、かねやんと手を繋いだ。

「タクム君と凛ちゃんは、そうそう」

キスするぐらい近くで顔を止められる。

「まっつん君と理沙ちゃんもね」

そう言われて、まっつんと理沙ちゃんも同じ格好をさせられてるのがわかる。

「そのままで、いきます」

カシャ、カシャ、カシャ、カシャとカメラのシャッターの音が響き渡る。暫くして、「楽にしていいよ」と森田さんに言われた。

そして、菅野さんが「キスは、NGだった?」と凛と理沙ちゃんに尋ねる。二人は、何も言わなかった。

「歌詞の横についてる写真でキスが撮りたかったんだけど。素人さんだから無理だろうな…。アクリル越しにするかな」

凛と俺は、無言で見つめ合う。

「二人、付き合ってるみたいなのになー。無理かー」

菅野さんは、そう言って頭を掻いていた。心臓が早くなるのを感じる。

「じゃあどうしようかなー。あっ、そうか」

そう言って、菅野さんは浅野さんに何かを頼んでいた。暫くして、金魚鉢を持った浅野さんが現れる。

「えっと、二人でこれを持ってくれるかな」

浅野さんに言われて、俺と凛は金魚鉢を持たされる。

「これにね、キスしてくれるかな?ちょっと待ってね」

そう言って、浅野さんは俺達の為に金魚鉢を拭いてくれる。

「いけるかな?」

『はい』

俺と凛は、金魚鉢越しにキスをする。

「目はね、薄く開けててくれる。金魚鉢の中を見る感じで」

浅野さんに言われた通りにする。

「オッケー、そのままね!お願いします」

浅野さんの言葉に、カシャ、カシャとシャッター音が響いてく。

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