俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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異変

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教室に行くと、いつもより少し早いからかナツとヨシュアはまだ来ていなかった。

椅子に座って二人が来るまで待っていると、俺の前に三人くらいの大柄な男が立っていた。

「…俺になにか用?」

「お前さ、あの人間の兄なんだっけ?」

「だったら何だよ」

「お前も好きなんだろ?溜まってんだよ、ヤらせてくれない?」

人間と言われたら、この学園では歩夢と俺しかいない。

俺は人間というのを隠しているから、人間は歩夢の事になる。

ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて俺の肩に触れるから手を振り払った。

歩夢の事、嫌な目で見やがって…コイツらも歩夢を騙してるのか?

周りの生徒達は関わりたくないから、遠くから見ていただけだった。

他の仲間達は笑っていて、勝手に盛り上がっていた。

手を振り払われた男は俺の胸ぐらを掴んで、机の上に押し倒された。

眉を寄せて目の前の男を睨むと舌なめずりしていた。

「いいねぇ、もっと抵抗してくれた方が興奮する」

「ふざけんじゃねぇっ……」

俺は電流を流そうと思って手に力を込めた。

でも、俺の手からは何も出なくて…何度も何度も繰り返した。

手を開いたり閉じたりしたが、全く出なくて顔が青ざめた。

なんでだ?魔力がまた切れたとか?…でも、今朝レオンハルトは何も言わなかった。

レオンハルトなら魔力切れかどうか分かる筈だし、ここに来るまで今日は魔力を使っていない。

じゃあなんだこれは…いったいなにが起きてるんだ?

腕を動かしたり、足をばたつかせてもガタガタ音が鳴るだけで何も変わらなかった。

「離せよ!!」

「なんだぁ?本当に離してほしいなら魔法使ってみろよ」

「うるせぇ!お前なんか使わなくても…」

「抵抗してるフリなのは分かってるからさ」

誰がフリなんだよ!ふざけんな!!

なんで魔法が使えないんだ?このまま好き勝手にされてたまるかよ!

そう思っていても、体格差があり俺の力なんてコイツにとっては子供くらいにしか思わないんだろう。

シャツの襟がよれよれになり、他の男の手が伸びてきてネクタイを引っ張られる。

鳥肌が立って、腕力で逃げようとしても相手を喜ばすだけだ。

力を抜くと「なんだ、もう観念したのか」と言って俺に顔を近付けてくる。

その時を待っていたんだ、思いっきり頭突きを喰らわした。

俺の方までかなりのダメージを喰らったが、目の前の男の力が緩んでそのまま押し退けた。

他の奴らに掴まれるが、すぐに振り払い離れる。

「テメェ…よくも…」

男が腕を伸ばすから、教室から出ようとよろけながら手を伸ばした。

すると教室のドアが開いて、目の前にナツとヨシュアがいた。

俺の姿を見て、慌てて駆け寄ってくれて大柄な男達は舌打ちしていた。

先生もやって来て、これ以上何もされる事はなかった。

「じゃあまたな」と諦めていないような感じで自分の席に戻った。

歩夢の事もこうやって無理矢理やっていたのかもしれない、ナイトがいれば大丈夫だろうが…心配だ。

それに俺の魔力はなんで出なかったんだ?

もう一度試しても何も変化はなかった。

「梓馬、どうしたんだその頭!」

「…え?」

「血が…」

ナツが驚いて俺の額を見つめていて、俺は笑いながら保健室に行くと二人に言って教室を出た。

なんで魔法がいきなり使えなくなったんだろう、レオンハルトに会いに行きたいが今は傷の手当てをしないとな。

保健室に向かうと、そこには誰もいなくて傷口の手当てくらいなら自分でしようと薬品棚から消毒液を取り出す。

こういうところは魔法だけに頼らなくて俺みたいな人には助かる。

傷口に消毒液を染み込ませた綿を当てると頭が割れそうなほどの激痛を感じて大きい声で叫んだ。

涙目になるほど痛い、でもまだ一瞬しか触れてないし…もう少し傷口に当てないと…

何度も深呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと傷口に当てようとした。

「何やってんだよ」

「わぁっ!!」

誰もいないと思ってたのに声が聞こえてびっくりした綿を床に落としてしまった。

ベッドがあるカーテンが突然開かれて、眠そうな目をしたナイトが現れた。

大きな欠伸をしていて、サボっていたんだというのが分かる。

また新しい綿でやらないとなと、床に転がった綿をゴミ箱に捨てた。

そして再び痛みと緊張の中、綿を傷口に当てようと頑張った。

ナイトが俺のところまで来て顔を覗き込んでくるから驚いて、思いっきり綿を額に押し当てた。

俺の痛みで苦しむ悲鳴が保健室中に響き渡った。

「何処かぶつけたのか?」

「…ま、まぁな…いてて」

「ほら、出来た」

ナイトに頭を包帯で巻いてもらって、ひとまず安心した。

知らない男達に襲われたなんてナイトに言えない、でも歩夢が同じ目に遭ってると思うと胸が張り裂けそうだ。

白猫はいないみたいだ、歩夢のところにまだいるなら守ってくれるよな。

ナイトは俺の手当てが終わったらベッドの中にまた入っていった。

一年からサボるって、凄い精神力だよな…卒業出来なくても知らないぞ。

ナイトが横になるベッドに近付くと、目を開けた。

「どうした?一緒に寝る?」

「違う、サボるつもりはないから…でも、一つ歩夢について聞きたい事がある」

「歩夢?」

「歩夢は、今…大丈夫なのか?悲しんでたり苦しんでたりしないか?」

今朝の歩夢が心配でナイトに言ったら、大きな欠伸をしながら「歩夢が危なかったらこんなにのんびりしてな…」と言い終わる前に眠ってしまった。

本当にナイトといると気が抜けるな、でも…ナイトがいるから歩夢の事を安心して任せられる。

「ありがとう」と一言お礼を言って保健室を出た。

教室に戻ると、ナツとヨシュアが大丈夫だったかと心配されたが先生に怒られて授業を真面目に受ける。

なんだろう、この嫌な視線は…好奇心とかではない…ねちっこくて不愉快になる視線だ。

俺の学生生活のなにかが変わろうとしているんだと思った。
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