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勇者カイルの過去と現在(旧題)忍者は見た
魔力切れから目覚められたカイル様のご様子(護衛視点)※
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彼が大切にしているというオーク。それを聞いた時、私は大切な人を失った彼を癒す、愛玩動物のような存在なのだと思っていた。オークなので当然小さくも可愛らしくもなかったけれど。
オークは王都から戻った夜、ベッドの中央に眠るカイル様を見降ろしていた。
隣に寝ようと一度無理矢理横になるが、そこはオークが横になるには狭すぎた。
身を起こしたオークは隣の部屋を見やり、カイル様に再び目を落としてその額や首筋に手を当てるとベッドを降り、隣の床に横になる。そのまま眠るのかと思いきや、しばらくすると起きて彼に触れる。それを何度も繰り返していた。
深夜になった頃、オークはふと彼の口元に手のひらをかざし、胸に耳を当てた。その直後弾かれたように大きな声を上げながら彼を揺さぶる。当然反応は返らず、オークは部屋を飛び出して館の管理を任される侍従長のバートン氏を叩き起こした。
激しく魔力を失うと呼吸や心拍が極限まで抑えられる事を知らなかったオークは彼が息絶えたと誤解したらしい。
ここで私は違和感を覚えた。
このオークは呼吸や心拍という知識があるのか。違和感は興味に変わった。
翌日、薪割りをしていたオークに声を掛けてみた。
王都で買い物をしていた際にも思ったがこのオークの言葉はとても流暢だ。
オークと聞いた時はせいぜい人の言葉が分かる賢い犬ぐらいに考えていたが、言葉どころか人間と同等の知能も持っているように思われる。賢く思慮深い。彼がこのオークをそばに置く理由が分かった気がするとともに、私はかつて実在したいまや伝説ともなった女性をふと思い起こした。
オークは仕事の合間にも何度も彼の様子を確認していた。
こうなると肌の色が違うだけで、犬歯の目立つ大柄の男と変わらないようにも思えてくる。
大好きだというケーキを彼の部屋で食べながら嘆息し、眠り続ける彼を見やるオークを見て私はオークが彼を心から心配しているのだと思わざるを得なかった。
魔物であり、姿は違えどこのオークは彼を癒す大切な存在なのだろう。
傷付き、壊れかけた彼をこのオークが癒すのであれば何人もこのオークを脅かしてはならない。だからこそかつて彼の補助を務め、戦友でもある陛下は「衣服を着たオーク保護法」を制定されたのだとその采配にも感嘆を覚えた。
カイル様の魔力の回復を感じる。
もうすぐ目を覚まされるだろう。
その時、きっとこの二人は嬉しそうに笑うのだろう━━
「ひぁ! あ゛っ、あ゛ッ、ああ゛~~~! カイル、もムリぃ、ツラいぃ」
「かっわいいなぁ。ォラ、ここだろハルが好きなの。ハメまくってやるからな。嬉しいなぁ? あーきもちい」
「イイぃ、イイぃぃ、もっと・そこもっとぉぉぉ」
鍛え上げられた彼の裸身は美しく、彫刻の裸像もかなわない。そんな肉体美を誇る彼が肉厚で豊満な緑の尻たぶに激しく腰を打ち付ける。魔力を吸収され弛緩しきったオークのそこは柔らかいのだろう。部屋に肉と肉が当たる音を延々と響いた。
情けないことに私はそこから一歩も動けず、目を離す事も出来なかった。
いや、それでいいのだ。これが私の任務なのだから。
任務を終え、王都に戻りバドルス様に報告を求められた際もまだ私は頭が上手く働かない状態だった。
「カイルはハル様に無体を強いたり虐げるようなことはなかったか?」
無体。虐げる━━
バドルス様に問われ、思い返す。
あれを無体と言わずして何と言うのか。
いやいやだめだ、だめだ。思い出せ。
そうだ、あのオークは「もっと」と言っていた。大丈夫だ。
「ハイ、ハル様ハ・トテモ献身的ニ看病されてイマシタ」
私はそう報告した。
バルドス様の射るような視線に背中に汗が伝う。真意を見定めるように、私の罪を見破らんとするかのようなそれに耐える。
「ご苦労だった」
やがてバドルス様はそう言って視線を外し、私は退室が許された。
私は虚偽と言う罪を犯したのかもしれない。しかし後悔はない。
どうか、もう二度と彼が光を失いませんように。
******バドルスさん******
カイルは魔法切れを起こししばらくは満足に動けないだろう。その護衛をカイルに傾倒し、篤く恩義を感じている男に命じた。
戻った男はひどくたどたどしく「問題ない」と報告するが、その様子から問題しかないだろう事は明らかだった。
しかしその追究は不要だ。男はカイルの不利になることはしないだろう。
陛下は慈愛に満ちた女性だ。女子供にはとくにお優しい。
よって当然のようにハル殿を心配しておられるが、私にとって優先すべきはこの国であり陛下他ならない。その為にはカイルが健全にこの国に存在する事が絶対条件だ。
護衛に就かせた男はかのオークから陛下へ宛てられた二通の礼状を持ち帰った。本人が下書きしたものと、バートンが書かせたものの二種類だ。
バートンもまさか破棄したものを探られるとは思っていなかったのだろう。陛下には清書された物をお渡しするが、破棄されていたもう一通を見てほら見た事かと思う。
これだけの知能だ。
現状に不満があるなら逃げるだろうし、逃げた後もどうとでもなるはずだ。
逃げられるけれど、それをしない。それは本人の意志他ならない。
私が陛下から離れられないのと同じだ。無体を強いられているという点では同類と言えよう。
だからあの二人のことは心配するだけ無駄なのだ。
私は男の報告そのままを陛下に報告した。
オークは王都から戻った夜、ベッドの中央に眠るカイル様を見降ろしていた。
隣に寝ようと一度無理矢理横になるが、そこはオークが横になるには狭すぎた。
身を起こしたオークは隣の部屋を見やり、カイル様に再び目を落としてその額や首筋に手を当てるとベッドを降り、隣の床に横になる。そのまま眠るのかと思いきや、しばらくすると起きて彼に触れる。それを何度も繰り返していた。
深夜になった頃、オークはふと彼の口元に手のひらをかざし、胸に耳を当てた。その直後弾かれたように大きな声を上げながら彼を揺さぶる。当然反応は返らず、オークは部屋を飛び出して館の管理を任される侍従長のバートン氏を叩き起こした。
激しく魔力を失うと呼吸や心拍が極限まで抑えられる事を知らなかったオークは彼が息絶えたと誤解したらしい。
ここで私は違和感を覚えた。
このオークは呼吸や心拍という知識があるのか。違和感は興味に変わった。
翌日、薪割りをしていたオークに声を掛けてみた。
王都で買い物をしていた際にも思ったがこのオークの言葉はとても流暢だ。
オークと聞いた時はせいぜい人の言葉が分かる賢い犬ぐらいに考えていたが、言葉どころか人間と同等の知能も持っているように思われる。賢く思慮深い。彼がこのオークをそばに置く理由が分かった気がするとともに、私はかつて実在したいまや伝説ともなった女性をふと思い起こした。
オークは仕事の合間にも何度も彼の様子を確認していた。
こうなると肌の色が違うだけで、犬歯の目立つ大柄の男と変わらないようにも思えてくる。
大好きだというケーキを彼の部屋で食べながら嘆息し、眠り続ける彼を見やるオークを見て私はオークが彼を心から心配しているのだと思わざるを得なかった。
魔物であり、姿は違えどこのオークは彼を癒す大切な存在なのだろう。
傷付き、壊れかけた彼をこのオークが癒すのであれば何人もこのオークを脅かしてはならない。だからこそかつて彼の補助を務め、戦友でもある陛下は「衣服を着たオーク保護法」を制定されたのだとその采配にも感嘆を覚えた。
カイル様の魔力の回復を感じる。
もうすぐ目を覚まされるだろう。
その時、きっとこの二人は嬉しそうに笑うのだろう━━
「ひぁ! あ゛っ、あ゛ッ、ああ゛~~~! カイル、もムリぃ、ツラいぃ」
「かっわいいなぁ。ォラ、ここだろハルが好きなの。ハメまくってやるからな。嬉しいなぁ? あーきもちい」
「イイぃ、イイぃぃ、もっと・そこもっとぉぉぉ」
鍛え上げられた彼の裸身は美しく、彫刻の裸像もかなわない。そんな肉体美を誇る彼が肉厚で豊満な緑の尻たぶに激しく腰を打ち付ける。魔力を吸収され弛緩しきったオークのそこは柔らかいのだろう。部屋に肉と肉が当たる音を延々と響いた。
情けないことに私はそこから一歩も動けず、目を離す事も出来なかった。
いや、それでいいのだ。これが私の任務なのだから。
任務を終え、王都に戻りバドルス様に報告を求められた際もまだ私は頭が上手く働かない状態だった。
「カイルはハル様に無体を強いたり虐げるようなことはなかったか?」
無体。虐げる━━
バドルス様に問われ、思い返す。
あれを無体と言わずして何と言うのか。
いやいやだめだ、だめだ。思い出せ。
そうだ、あのオークは「もっと」と言っていた。大丈夫だ。
「ハイ、ハル様ハ・トテモ献身的ニ看病されてイマシタ」
私はそう報告した。
バルドス様の射るような視線に背中に汗が伝う。真意を見定めるように、私の罪を見破らんとするかのようなそれに耐える。
「ご苦労だった」
やがてバドルス様はそう言って視線を外し、私は退室が許された。
私は虚偽と言う罪を犯したのかもしれない。しかし後悔はない。
どうか、もう二度と彼が光を失いませんように。
******バドルスさん******
カイルは魔法切れを起こししばらくは満足に動けないだろう。その護衛をカイルに傾倒し、篤く恩義を感じている男に命じた。
戻った男はひどくたどたどしく「問題ない」と報告するが、その様子から問題しかないだろう事は明らかだった。
しかしその追究は不要だ。男はカイルの不利になることはしないだろう。
陛下は慈愛に満ちた女性だ。女子供にはとくにお優しい。
よって当然のようにハル殿を心配しておられるが、私にとって優先すべきはこの国であり陛下他ならない。その為にはカイルが健全にこの国に存在する事が絶対条件だ。
護衛に就かせた男はかのオークから陛下へ宛てられた二通の礼状を持ち帰った。本人が下書きしたものと、バートンが書かせたものの二種類だ。
バートンもまさか破棄したものを探られるとは思っていなかったのだろう。陛下には清書された物をお渡しするが、破棄されていたもう一通を見てほら見た事かと思う。
これだけの知能だ。
現状に不満があるなら逃げるだろうし、逃げた後もどうとでもなるはずだ。
逃げられるけれど、それをしない。それは本人の意志他ならない。
私が陛下から離れられないのと同じだ。無体を強いられているという点では同類と言えよう。
だからあの二人のことは心配するだけ無駄なのだ。
私は男の報告そのままを陛下に報告した。
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