XLサイズの龍大くんはくっつきたがりなクーデレ男子

星詠みう菜

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トシを考えなさい

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 鈴夏はその週、2日休んだぶんを取り返すために必死で働いた。日課にしていた龍大との通話も途切れ、毎日残業で遅れを取り戻す日々。やっと土曜日になり、休みが来たので、気分転換に髪を切ることにした。行く美容院は、寿一郎が勤めるサロンだ。 唯翔も寿一郎の腕は確かだと言っていたので、きっと髪型もいい感じにしてくれるだろう。
 寿一郎の名刺に書かれていたホームページのURLからネット予約して、約束の時間にサロンへ着いた。白を基調にした清潔感のある店内には5席のスタイリングチェアとセット面があり、スタイリストは3人いるらしい。

「いらっしゃーい」
 
 寿一郎に席を案内され、チェアに座ると早速声をかけられる。

「タッツーが好きそうな髪型にしよっか?」
「そんなことできるの?」
「んーん。適当に言った」
「もう! からかわないでよ」
「ごめ」

 寿一郎らしい、マイペースな態度で接客された。一応鏡越しに手を合わせて謝ってはいるが、おそらく反省なんてしていないだろう。
 
「じゃあ、ちょっとだけ短くして……。カラーは派手過ぎない程度に冒険しようかな」
「オッケ。まかして」

 寿一郎がヘアカタログを持ってきて、髪型や色の相談に乗ってくれる。今は鎖骨に届くくらいの長さだけど、もうすぐ蒸し暑い季節が来るから縛れる長さは残して欲しい。そして鈴夏は内勤なので、ある程度カラーは派手でも大丈夫だ。髪色は気分転換に大事な要素だから、ちょっと派手めな色をリクエストした。
 寿一郎にシャンプーしてもらい、再びチェアへと戻って来る。寿一郎は普段ふざけた態度をとるが、仕事中は当たり前だけど真面目にやってくれた。髪を洗うときの力加減も全然痛くないし、シャワーの温度もちょうどいい感じだった。こういうところは職人っぽくて、信頼できると感じた。
 セット面の前に戻ってきて、ケープをかけると目の前のデスクに雑誌を何冊か置いてくれた。鈴夏は普段雑誌を読まないが、美容院に来たときは読むようにしている。スマホは普段から見られるから、美容院でしか読めないものを読みたいからだ。
 ファッション誌も学生時代はずっと読んでいたが、大人になってからは無理矢理服を買わせようとする煽り文句が目についてほとんど読まなくなった。でも久々に読むぶんには新鮮だ。流行はあまり意識しないが、普段私服通勤だから、ある程度社会性はキープしておかないといけない。そういうときに、美容院で読む雑誌は役立った。
 最初に手にとったのは、OL向けのファッション誌だ。季節はもう初夏にさしかかって日差しの照りつけが強くなってきたから、雑誌の中は真夏の装い真っ盛り。ブラウスとパンツのコーデ、ワンピースにスカーフを合わせたコーデ、ワイドパンツにノースリーブニットを合わせたコーデ……。彩り豊かで凛としたコーディネートを見ると、鈴夏自身もこんな素敵な女性になりたいという欲が湧いてくる。
 ファッション特集を過ぎると、コスメなどの美容ページがお目見えだ。話題のコスメを見ていると、その次のページには、セックス特集が組まれていた。最近は女性も性の話題に関心が強い。とは言え、美容院で寿一郎に髪を切られながらではちょっと読みにくい。セックス特集はササッとページをめくって、次の雑誌を読むことにした。
 一度髪を乾かして、今度はヘアカラーの薬剤を塗っていく。今日はハイライトも入れる予定なので、寿一郎もずっと黙々と作業をしていた。
 読んでいた2冊めの雑誌は大人カジュアル向けのファッション誌だ。シンプルで自由で、リラックスしつつもおしゃれなファッションがたくさん載っていて、鈴夏の大好きなタイプの雑誌である。
 海外モデルがアンニュイな表情で魅せるファッションは、年齢も個性も関係ないゆるさがある。なのに着回しや着こなし方も参考になるから、鈴夏は美容院に来たら必ず読んでいた。
 誌面がとにかくおしゃれで楽しいが、ファッション特集を抜けると思いがけないページを見かけた。セックス特集だった。さっきの雑誌に続いてこれもかと思ったが、他人のセックス事情が気になるのもわからなくはない。
 でもさっきの雑誌と違うのは、大々的に性的同意について書かれていたことだった。結局セックスに必要なのは愛より信頼だと力説している内容だ。しかも「好きな体位ランキング」みたいなミーハーな特集ではなく、具体的にコミュニケーションをとることの大事さを熱弁している内容が鈴夏の目を引いた。そして見開き左側のページには、「信頼を深めるポリネシアンセックスのススメ」とも書かれていた。ポリネシアンセックス? 初めて聞くワードに、鈴夏も首をかしげたい気分だ。今はカラーリングしているから無理だけど。
 ポリネシアンセックスは、ざっくり言うと4日前戯をして5日めに挿入を行うセックスのことらしい。体同士をぶつけ合う強い刺激ではなく、ゆっくりとお互いの快感を深めて心のつながりを重視しているのが特徴だ。鈴夏は寿一郎がカラー薬剤を塗っているのも忘れて、その斬新な名前のセックスの内容を読みふけった。
 ふと読み終わったときに、ここが美容院であることを思い出して焦ってページをめくった。寿一郎が気づいてないといいと思いつつ、夢中に読んでしまった自分が恥ずかしい。
 でももう読んでしまったから仕方ない。鈴夏は諦めて次の雑誌を手に取った。
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