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第4章 ゴーレム大地を駆ける
第57話 ゴーレムとレールの始まり
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「じゃ、今度こそおいとまさせてもらうよ! ありがとなっ、ガンジョー神!」
結局ヘルガさんは『ガンジョー神』呼びを貫き通し、教会を後にした。
彼女の去った後の教会はそれはそれは静かで、少し寂しい気持ちになるくらいだった。
「ガンジョーさん! ヘルガさんをジャングルに連れて行く手段を考えるみたいなこと言ってましたけど、それってつまり私もジャングルに行けるかもしれないってことですか!?」
静寂を破ったのはマホロだ。
前からマホロもジャングルに行きたがってたけど、危ないからってそれを許してこなかった。
だからこそ、ヘルガさんが行けるなら自分も行けると考えるのも当然か。
「うーむ……それを今から考えるって感じかな。ジャングルまで安全かつスピーディーに移動する手段は思いついてるんだけど、ジャングル内部を安全に探索するには、もっともっといいアイデアが欲しいところなんだ」
「おおっ、移動手段はもう考えてあるんですね。流石はガンジョーさんです! これならヘルガさんのお願いの半分は叶えられていると言っても過言じゃないですね!」
「あははっ、それは過言かもしれないけど、移動には廃鉱山に向かうために使っているレールと同じ物をジャングル側にも敷こうと思ってるんだ。構造や材質をまるまる参考にすれば、わざわざ新しく設計せずに敷設に取り掛かれるからね」
「なるほど! 確かメタルゴーレムになったガンジョーさんは金属加工も得意になったんですよね。それなら、トロッコも今ある物と同じ物を増やせば、たくさん人と物を乗せられます!」
そう、廃鉱山にはいろんな形のトロッコが放置されている。
その構造をガイアさんに読み込んでもらえば、そっくりそのまま同じトロッコが作れる。
だけど、廃鉱山に残されていたトロッコはどれも鉱石運搬用の貨車で、人が乗り込む客車のトロッコは一つも残っていなかった。
おそらくはガス事故が起こった際に客車トロッコはすべて脱出に使われて、この街に到着した後は何かしらの理由で持ち去られたか、壊れて瓦礫の海の中に転がっているのかも。
まあ、どちらにせよ俺が作る客車は既存の物のコピーではなく、オリジナルにするつもりだ。
それこそ電車の客車のように壁も天井も作って、突然の魔獣の襲撃にも耐えられる設計にする。
幸い俺は元の世界にいた時、電車にはよく乗っていた。
ガイアさんに俺の過去の記憶から情報を引き出してもらい、客車の設計に反映する。
魂の適応が進んだ今なら、俺自身はおぼろげで思い出せないような記憶も、一種のデータとしてガイアさん側で管理出来る。
これからは俺が元いた世界で見て、聞いて、触れて来た物を再現することも可能……かもしれない。
「とりあえずはレールの敷設が最優先だな。どんなトロッコを走らせるにしても、レールがなければただの箱になってしまう」
「そうですね! 早速レールの敷設に取り掛かりましょう!」
「……危ないからマホロはお留守番だよ」
ノリで俺に同行しようとしていたマホロが『ギクッ!』といった反応をする。
霊園作りも街でお留守番だったからか、マホロは最近街の外に出たがっている。
それを叶えてあげたい気持ちはあるが……。
「ガンジョーさん……ダメですか……?」
マホロが心底悲しそうな顔をする。
くぅ……そんな顔されたらなぁ……。
「わかった! 今日のところは街の近くで作業するからマホロも手伝ってくれ」
「わぁ……! やったー! 今日は一日ガンジョーさんと一緒です!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶマホロ。
俺と共に過ごす時間をここまで望んでくれるなら、それを叶えるのも俺の役目だろう。
「さあ、街の東側に行こう。そこからジャングルに向けてレールを敷く!」
◇ ◇ ◇
――ということで街の東側、防壁の外までやって来た俺とマホロとノルン。
ヘルガさんが来ていた時は丸まって昼寝をしてたノルンだが、マホロが移動するとなるとその後ろを静かについて来た。
ノルンにとってジャングルは命を落としかけた場所……。
良い思い出はないはずだが、なぜかノルンはマホロと一緒にジャングルに行きたがっているように見えた。
危険な場所だからこそ、ご主人様一人で行かせることは出来ないという、忠犬ならぬ忠猫精神なのだろうか?
「ニャ~!」
メタルゴーレムになってちょっとひんやりしている俺の脚にも体をこすりつけるノルン。
マイペースだからあまり深いことを考えず、面白そうだからついて来てるだけなのかも?
「さて、まずはレールの始点をどこにするかだな」
「街の中までレールを引っ張れたら、ジャングルで取って来た物をすぐに配れていいと思います!」
気合の入ったマホロが「はいっ!」と手を挙げてアイデアを述べる。
確かにジャングルに恵みをどっさり乗せたトロッコが街の中まで走れれば、その恵みをみんなに分けるのがすごくやりやすくなる。
防壁の中は建物が増えて来ているが、門扉の周りはまだスペースが空いている。
レールを引き込むこと自体は可能だが……。
「とすると……門扉の仕組みを変えないといけないな。今の両開きの門では、地面に敷かれたレールと干渉してしまう。開くタイプではなく、上からガシャンと扉を下ろすタイプにしてみようか」
中世のお城なんかでよく見る、鎖で釣り上げておいた格子状の扉を落とす門。
あれなら地面に接触する杭の位置を調整して、敷いてあるレールとの干渉を避けれるはずだ。
「門を作り変える……。私の意見で手間を増やしてしまったでしょうか……」
「いや、マホロが言うことが正しいよ。どう考えてもトロッコを防壁の中に入れられた方が便利で人の役に立つ。多少手間が増えようが、そうするべきなんだ」
廃鉱山側のレールの始点は防壁の外、瓦礫の海の中にある。
だから、ジャングル側の始点も同じような感じでいいかなと思ってた。
でも、廃鉱山から持ってくる鉱石と違って、ジャングルから持ってくるのは食べ物だ。
それが消費されるのは人々が住む防壁の中。
だから、防壁の中までトロッコが進めるようにした方が便利に決まっている。
「より快適に、より住みやすく……そのための守護神さ。だからこそ、一緒に街に住んでるマホロの意見は貴重なんだ」
「では、これからも気になるところはバシバシ言っていきます!」
「ああ! 頼りにしてるよ、マホロ」
レールの始点は防壁の中に作ると決めた。
次はトロッコに乗り込んだり、物を降ろしたりするためのプラットホーム作りだ。
結局ヘルガさんは『ガンジョー神』呼びを貫き通し、教会を後にした。
彼女の去った後の教会はそれはそれは静かで、少し寂しい気持ちになるくらいだった。
「ガンジョーさん! ヘルガさんをジャングルに連れて行く手段を考えるみたいなこと言ってましたけど、それってつまり私もジャングルに行けるかもしれないってことですか!?」
静寂を破ったのはマホロだ。
前からマホロもジャングルに行きたがってたけど、危ないからってそれを許してこなかった。
だからこそ、ヘルガさんが行けるなら自分も行けると考えるのも当然か。
「うーむ……それを今から考えるって感じかな。ジャングルまで安全かつスピーディーに移動する手段は思いついてるんだけど、ジャングル内部を安全に探索するには、もっともっといいアイデアが欲しいところなんだ」
「おおっ、移動手段はもう考えてあるんですね。流石はガンジョーさんです! これならヘルガさんのお願いの半分は叶えられていると言っても過言じゃないですね!」
「あははっ、それは過言かもしれないけど、移動には廃鉱山に向かうために使っているレールと同じ物をジャングル側にも敷こうと思ってるんだ。構造や材質をまるまる参考にすれば、わざわざ新しく設計せずに敷設に取り掛かれるからね」
「なるほど! 確かメタルゴーレムになったガンジョーさんは金属加工も得意になったんですよね。それなら、トロッコも今ある物と同じ物を増やせば、たくさん人と物を乗せられます!」
そう、廃鉱山にはいろんな形のトロッコが放置されている。
その構造をガイアさんに読み込んでもらえば、そっくりそのまま同じトロッコが作れる。
だけど、廃鉱山に残されていたトロッコはどれも鉱石運搬用の貨車で、人が乗り込む客車のトロッコは一つも残っていなかった。
おそらくはガス事故が起こった際に客車トロッコはすべて脱出に使われて、この街に到着した後は何かしらの理由で持ち去られたか、壊れて瓦礫の海の中に転がっているのかも。
まあ、どちらにせよ俺が作る客車は既存の物のコピーではなく、オリジナルにするつもりだ。
それこそ電車の客車のように壁も天井も作って、突然の魔獣の襲撃にも耐えられる設計にする。
幸い俺は元の世界にいた時、電車にはよく乗っていた。
ガイアさんに俺の過去の記憶から情報を引き出してもらい、客車の設計に反映する。
魂の適応が進んだ今なら、俺自身はおぼろげで思い出せないような記憶も、一種のデータとしてガイアさん側で管理出来る。
これからは俺が元いた世界で見て、聞いて、触れて来た物を再現することも可能……かもしれない。
「とりあえずはレールの敷設が最優先だな。どんなトロッコを走らせるにしても、レールがなければただの箱になってしまう」
「そうですね! 早速レールの敷設に取り掛かりましょう!」
「……危ないからマホロはお留守番だよ」
ノリで俺に同行しようとしていたマホロが『ギクッ!』といった反応をする。
霊園作りも街でお留守番だったからか、マホロは最近街の外に出たがっている。
それを叶えてあげたい気持ちはあるが……。
「ガンジョーさん……ダメですか……?」
マホロが心底悲しそうな顔をする。
くぅ……そんな顔されたらなぁ……。
「わかった! 今日のところは街の近くで作業するからマホロも手伝ってくれ」
「わぁ……! やったー! 今日は一日ガンジョーさんと一緒です!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶマホロ。
俺と共に過ごす時間をここまで望んでくれるなら、それを叶えるのも俺の役目だろう。
「さあ、街の東側に行こう。そこからジャングルに向けてレールを敷く!」
◇ ◇ ◇
――ということで街の東側、防壁の外までやって来た俺とマホロとノルン。
ヘルガさんが来ていた時は丸まって昼寝をしてたノルンだが、マホロが移動するとなるとその後ろを静かについて来た。
ノルンにとってジャングルは命を落としかけた場所……。
良い思い出はないはずだが、なぜかノルンはマホロと一緒にジャングルに行きたがっているように見えた。
危険な場所だからこそ、ご主人様一人で行かせることは出来ないという、忠犬ならぬ忠猫精神なのだろうか?
「ニャ~!」
メタルゴーレムになってちょっとひんやりしている俺の脚にも体をこすりつけるノルン。
マイペースだからあまり深いことを考えず、面白そうだからついて来てるだけなのかも?
「さて、まずはレールの始点をどこにするかだな」
「街の中までレールを引っ張れたら、ジャングルで取って来た物をすぐに配れていいと思います!」
気合の入ったマホロが「はいっ!」と手を挙げてアイデアを述べる。
確かにジャングルに恵みをどっさり乗せたトロッコが街の中まで走れれば、その恵みをみんなに分けるのがすごくやりやすくなる。
防壁の中は建物が増えて来ているが、門扉の周りはまだスペースが空いている。
レールを引き込むこと自体は可能だが……。
「とすると……門扉の仕組みを変えないといけないな。今の両開きの門では、地面に敷かれたレールと干渉してしまう。開くタイプではなく、上からガシャンと扉を下ろすタイプにしてみようか」
中世のお城なんかでよく見る、鎖で釣り上げておいた格子状の扉を落とす門。
あれなら地面に接触する杭の位置を調整して、敷いてあるレールとの干渉を避けれるはずだ。
「門を作り変える……。私の意見で手間を増やしてしまったでしょうか……」
「いや、マホロが言うことが正しいよ。どう考えてもトロッコを防壁の中に入れられた方が便利で人の役に立つ。多少手間が増えようが、そうするべきなんだ」
廃鉱山側のレールの始点は防壁の外、瓦礫の海の中にある。
だから、ジャングル側の始点も同じような感じでいいかなと思ってた。
でも、廃鉱山から持ってくる鉱石と違って、ジャングルから持ってくるのは食べ物だ。
それが消費されるのは人々が住む防壁の中。
だから、防壁の中までトロッコが進めるようにした方が便利に決まっている。
「より快適に、より住みやすく……そのための守護神さ。だからこそ、一緒に街に住んでるマホロの意見は貴重なんだ」
「では、これからも気になるところはバシバシ言っていきます!」
「ああ! 頼りにしてるよ、マホロ」
レールの始点は防壁の中に作ると決めた。
次はトロッコに乗り込んだり、物を降ろしたりするためのプラットホーム作りだ。
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