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第6章 血に刻まれた因縁の地

-101- 血に刻まれた因縁の地Ⅳ〈解答〉

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『紅花! 藍花! 今度は私があいつを引き付ける! その間にぶっ倒してちょうだい!』

『了解ですわ!』

『了解……!』

 ショーの主役は2人だから良いところを譲った……わけではない。
 今のDエッジミサイルの攻撃で龍もどきの怒りは完全に私に向いている。
 私がおとり役になる以外に選択肢はないってわけね。

 そして、こうなるとDエッジミサイルを抱えているのがリスクになる。
 藍花を失ってから龍もどきの攻撃は明らかに苛烈かれつになった。
 口からはビームを照射し続け、2本だけ生えている前足からは電撃を放っている。
 長さを生かしてムチのように振るわれるしっぽは、もはや味方のモンスターを巻き込むことすら気にしていない。

 むしろ、なぜこれほどの戦闘能力がありながら、さっきは藍花を捕まえただけで引き下がったのか……。
 この行動には絶対理由がある。
 でも、今はそれを考えている場合じゃない!
 とにかくDエッジミサイルを撃ち尽くしてしまわないと!

『ミサイルロックオン……! シュート!』

 攻撃をかいくぐりながらなんとかミサイルを放つ。
 しかし、完全体クラスのモンスターにこれだけ警戒されては当たらない。
 ミサイルはすべて手からほとばしる稲妻に撃墜されてしまった。

 でも、これでいい。
 Dエッジミサイルは十分に役目を果たしてくれた。
 それはさっきもだし……今もだ!
 龍もどきはミサイルの威力を恐れるあまりこちらばっかり見ている!
 背後に2機のDMDが迫っているとも知らずに……!

『アンサー・ブルー……フルバースト!』

 アンサー・ブルーの全砲門から放たれるエナジー!
 それは正確に装甲のない部分に命中した!
 その衝撃でまたもや龍もどきの頭は地面に叩きつけられた!

『バスターソード……連結!』

 アンサー・レッドは2本のHi-Deハイドバスターソードの持ち手をピタッと重ね、1本の巨大エナジー刃を生み出す!
 そして、それを龍もどきの首に突き立てた!
 その瞬間ダンジョンにこだまする断末魔……!
 龍もどきは少しの間のたうち回った後、光の粒子となって消滅した。

『私たちの……勝ちだ!』

 案外あっさり勝てたと思うのは、私たちが強くなっている証拠だ。
 それに相手は『怪鳥峡谷かいちょうきょうこく』のヤタガラスや『蟻の巣』の女王アリと違って進化することなく完全機械体のままだったというのも大きい。

『他のモンスターもどこかへ逃げていきますわね。負けを認めた……なんてことはないと思うのですが』

 紅花の言う通り他のモンスターは最奥のこの部屋から逃げるように出ていく。
 もしかしたら地上に逃れる気かもしれない。
 でも、ダンジョンの50レベルより手前には増援部隊が来ている。
 あと、そもそものモンスターの数も多くない。
 龍もどきが暴れて倒しまくっちゃったからね。

『紅花、藍花、いよいよフィナーレね! 2人でダンジョンコアを破壊しちゃって!』

 これは流石に主役に譲らないとね!
 私はその歴史的瞬間を映すカメラマンにてっしよう。

『……ミス・マキナも一緒に参加していただけませんか?』

『えっ? でも、このショーは……』

『もちろんそれはわかっていますけど……ほら、ここまで来られたのはあなたのおかげですし、それにコアを守るバリアが強固そうなので手数は多い方がいいと言いますか……いや、そんなことではないですわね』

 2機のアンサーが目を見合わせる。
 機体を通してでも双子はアイコンタクトが出来るようだ。

『マキナ、これは私たちが確執とか因縁とかを終わらせたという証明なんです』

『そう、そういうことが言いたかったんですわ! 要するに……細かいことは気にするなと!』

 そうか……これが彼女たちの答えなんだ。
 モエギだとか、ヴァイオレットだとか、血に刻まれた因縁だとか……。
 そういったものに決着をつけるため、私たちは手を取り合おう。

『わかったわ。そうと決まれば3機で一斉射撃よ!』

 アイオロス・ゼロリペア、アンサー・レッド、アンサー・ブルーから放たれたエナジーがバリアを貫き、ダンジョンコアを粉々に砕いた。
 これで『黄金郷真球宮』は消える。
 この戦いで多くの人の魂が救われることを祈る……。

『胸を張って帰りましょう!』

 深層ダンジョンともなれば完全消滅までに時間がかかる。
 だから、焦って脱出する必要はない。
 ただ、3機のDMDに残っているエナジーはそう多くないはずだ。
 適度に残ったモンスターを狩りつつ、後のことは後続部隊に任せるのがいいかな。

『あ、砕けたコアを回収しとかないと』

 ダンジョンコアも砕くとアイテムスキャナーで回収出来るようになる。
 深層ダンジョンのコアともなれば、いろんな意味で貴重なサンプルなので絶対に持ち帰らなければならない。
 球体状の部屋の底に落ちているコアの破片に向かって機体の高度を落としていく。

『……ん?』

 破片に混じって卵みたいなものが落ちている。
 いや、落ちているというより……置かれている?
 ちゃんと尖った方を上にしているんだ。

 戦闘中にこんなものあったっけ……?
 ちょうどコアの真下で一番低いところにあるから、目立ちにくいと言えば目立ちにくいし、装飾の一種に見えないこともない。
 アイテムスキャナーで回収も出来ないし、モンスターが落としたアイテムってわけでもない。
 いったいこれは何なんだろう?

 ピピッ――!

 その時、アイオロス・ゼロリペアのセンサーが何かに反応した。
 でもこの反応……今までに一度も見たことがない!
 視界の隅っこの方には『敵性脳波検出』と表示されている……!

 その原因とされているのは……あの卵!
 なんかロクなものじゃなさそうね……。
 こういう時は1人で悩まず育美さんに相談だ!

『育美さん、この卵見えてますか? 今こいつから敵性脳波ってのをゼロリペアが検出して……』

「……っ!」

 育美さんの息を呑む音……。
 その後、育美さんの声は聞こえなくなった。
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