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第5章 蟻の巣抹消作戦
-73- 蟻の巣抹消作戦Ⅲ〈魔蟲〉
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『……先頭を務めるのは私だ!』
チーム単位で動く時、その先頭に立つのはやはりアイオロス・ゼログラビティだ。
なぜなら、他の機体は基本的に中距離および遠距離からの支援をメインにしているからだ。
このチームにおいて機動力に優れる近接戦闘型の機体を操る私の責任は大きい。
移動を始めて最初の内は敵も出てこずスムーズに進むことが出来た。
先行している部隊が上手くやってくれているおかげだろう。
しかし、しばらくすると通路にDMDの残骸がちらほら見え始めた。
これがその先行している部隊の機体かはわからないけど、少なくともここからは機体を壊せるくらいの敵が出てくるということか……。
『全員、気を抜かないでね』
説明通りダンジョン内は分かれ道が多い。
通り過ぎた道からモンスターがやって来て、背後を取られる可能性だって十分にある。
とにかく素早く進むことでそのリスクは軽減できるけど、やはり敵に遭遇すること自体は避けられそうにない……!
『前方に敵! なんかボールみたいなのがこっちに跳ねてくる!』
あれも虫型モンスターならモデルはダンゴムシかな?
丸まったそれは通路の壁で不規則にバウンドしながらこちらに接近してくる!
しかも数は5! 接近して1体1体槍で串刺しというのも面倒そうだ!
『マシンガン!』
シールドの裏に取り付けられたDエナジーマシンガンで排除を試みる。
しかし、ダンゴムシの外皮はDエナジーの弾丸を弾いた!
この武器ではダメか……!
『蒔苗、私が狙撃する! 射線を開けて!』
『頼みます!』
ゼログラビティを天井付近に移動させ、葵さんが操るポラリス・グリントの狙撃に任せる。
新型のスナイパーライフルは連射することは出来ないが、1発の威力は十分!
『……っ!』
ライフルのトリガーが引かれ、光の弾丸が放たれる。
それはちょうど位置が重なっていたダンゴムシ3体を貫き消滅させた!
『よっしゃ、3枚抜き!』
『残りはわたくしがやりますわ!』
今度はグラドランナのストーク・キャノンが光を放ち、残り2体のダンゴムシを消し飛ばした。
やっぱり高威力エナジー兵器は頼りになる!
『蘭、葵さん、ありがとうございます』
『どういたしまして! でも、いきなりDエナジー兵器を使っちゃったねぇ』
『正しい判断だと思います。頑丈そうな相手でしたから』
虫型モンスターの中には今のダンゴムシのような頑丈なタイプもいれば、脆い代わりにすさまじいスピードを誇るタイプもいる。
そのスピードタイプの中でも典型的なのがトンボ型だ。
遠くにいても正確に私たちを認識し、脆い体で体当たりを仕掛けてくる。
胴体は爆発物になっているようで、直撃を受ければ無傷では済まない。
対処に神経を使う……!
『蒔苗様、背後からまたトンボ型です。私が落とします』
『お願いします』
百華さんのディオス・ロゼオの頭部から細かな桜色のエナジーが発射される。
ロゼオエナジーバルカン砲、略してREバルカン砲はまるで桜の花びらを飛ばしているような美しさがあるけど、威力は相当なものだ。
正確にトンボ型モンスターの翼を撃ち抜き、地面に落としていく。
『虫型モンスターというのもなかなか厄介なものです。本物の虫のように種が多彩で、それぞれがまるで洗練されたシステムのように動く。先ほどのダンゴムシ型やこのトンボ型などはまるで最低限の知能を持たされた弾丸……。かと思えばムカデ型のような巨大な個体や、知恵が回る個体もいる。モンスターのモデルとしてこれほど厄介な生物はありませんよ』
虫は今でも毎年大量の新種が発見されるらしいからなぁ。
それだけ短期間で進化を繰り返しているということなんだろう。
でも、もしその進化の早さがモンスターにも適応されていたら……。
日を追うごとにこのダンジョンの攻略は難しくなっていくのかもしれない。
まあ、私が今日でこのダンジョンを消すんだけどね。
『そろそろレベルでいうと20くらいの深さに来たかな』
全体の半分のちょっと手前といった感じだ。
破壊されたDMDを見る頻度が増え、モンスターも機械体が多くなってくる。
それに通路を塞ぐように蜘蛛の巣が張られているのをよく見るようになった。
『フレイム・シューター! サンダー・シューター!』
蜘蛛の巣を2種のシューターで燃やして道を開く。
しかし、肝心の蜘蛛そのものは見つからない。
この蜘蛛の巣は頑丈で物理的に排除するにはかなり時間がかかる。
Dエナジー兵器なら斬ったり燃やすのは簡単だけど、それをやるたびに機体本体のDエナジーが消費されていく。
巣がかなり分厚く張り巡らしてある通路もあるし、そろそろ本体を叩かないと時間とエネルギーのロスがバカにならないことに……。
『育美さん、蜘蛛の巣がかなり多いです。クモ型モンスターの目撃情報はありませんか? 出来れば先行している部隊に排除してほしいんですが……』
「今、その巣を張ってる小型のクモ型モンスターを生み出してる女王みたいな個体を発見したところよ。場所はレベル25あたりにある広い空間ね。これから3部隊で攻撃を仕掛けるから、蒔苗ちゃんたちはそのまま進んで」
『了解です』
各DMDには出撃前の時点で判明している部分を記録したダンジョンマップがインストールされている。
レベル25付近の広い空間というと、ちょうどこの先か……。
その女王みたいな蜘蛛との戦闘が長引きそうなら迂回ルートを探すか、それとも加勢して倒してしまうか……。
とりあえず、今は行く手を塞ぐ蜘蛛の巣を焼き払おう。
『育美さん、その蜘蛛との戦いに何か変化があったら報告をお願いします』
「わかったわ」
育美さんからの報告は、ほどなくして届いた。
「蒔苗ちゃん、女王蜘蛛に攻撃を仕掛けた3部隊は全機行動不能になったわ」
『行動不能……。全機破壊されたということですか?』
「いいえ。なぜか全機壊されることなく、糸で絡めとられて動けない状態なの。まるでエサを保存しているように……」
エサを保存……DMDを捕食……。
つまり、その中のDエナジーも一緒に……。
「でも、女王蜘蛛はかなり巨大らしいから通れない通路がたくさんあるわ。ルートを変更して細い通路を移動すれば、こいつをスルーして進むことも可能なはずよ。巣が張られているのもこの女王を中心とした一定の範囲内だけだから、しばらく進めばそのうち邪魔な巣もなくなるはずよ」
『……育美さん、その女王蜘蛛は機械体ですか?』
「ええ、混成機械体みたいよ」
『そうですか……。では、マキナ隊はその女王蜘蛛の撃破に向かいます』
育美さんの驚いた声が聞こえる。
チームのみんなの機体も私の方を見ている。
『コアの破壊が優先だということはわかっています。でも、DMDを壊さずエサのように保存しているというのが気になるんです。ヤタガラスは工場に保管されていた濃縮Dエナジーを飲んで進化しました。同じようにDMDの中にも濃縮Dエナジーが入っています。女王蜘蛛が機体を壊さず置いておく理由がもしそのDエナジーだったら……』
「また進化した個体……覚醒機械体が生まれるかもしれない……」
『はい。流石にあの強さのモンスターが生まれる可能性は見過ごせません。マキナ隊はこれより女王蜘蛛に攻撃を仕掛け、標的を撃破後は当初のルートでより深い場所へ進み、コアの探索を行います』
「了解よ、蒔苗ちゃん。隊長であるあなたの判断を信じるわ。頑張って」
『ありがとうございます。あ、他の部隊にも気を付けるように言っておいてください。根拠はありませんけど、DMDの捕食を狙っているモンスターは女王蜘蛛だけではない気がするんです』
「うん、全体に通達しておくわ」
もしかしたら、私たちは自分から巣穴に入っていくエサなのかもしれない。
私の考えがすべて杞憂で済めばいいけど、こういう悪い想像ほど当たるのが人間ってものだ。
気合入れて女王様のお食事を邪魔しにいかないとね……!
チーム単位で動く時、その先頭に立つのはやはりアイオロス・ゼログラビティだ。
なぜなら、他の機体は基本的に中距離および遠距離からの支援をメインにしているからだ。
このチームにおいて機動力に優れる近接戦闘型の機体を操る私の責任は大きい。
移動を始めて最初の内は敵も出てこずスムーズに進むことが出来た。
先行している部隊が上手くやってくれているおかげだろう。
しかし、しばらくすると通路にDMDの残骸がちらほら見え始めた。
これがその先行している部隊の機体かはわからないけど、少なくともここからは機体を壊せるくらいの敵が出てくるということか……。
『全員、気を抜かないでね』
説明通りダンジョン内は分かれ道が多い。
通り過ぎた道からモンスターがやって来て、背後を取られる可能性だって十分にある。
とにかく素早く進むことでそのリスクは軽減できるけど、やはり敵に遭遇すること自体は避けられそうにない……!
『前方に敵! なんかボールみたいなのがこっちに跳ねてくる!』
あれも虫型モンスターならモデルはダンゴムシかな?
丸まったそれは通路の壁で不規則にバウンドしながらこちらに接近してくる!
しかも数は5! 接近して1体1体槍で串刺しというのも面倒そうだ!
『マシンガン!』
シールドの裏に取り付けられたDエナジーマシンガンで排除を試みる。
しかし、ダンゴムシの外皮はDエナジーの弾丸を弾いた!
この武器ではダメか……!
『蒔苗、私が狙撃する! 射線を開けて!』
『頼みます!』
ゼログラビティを天井付近に移動させ、葵さんが操るポラリス・グリントの狙撃に任せる。
新型のスナイパーライフルは連射することは出来ないが、1発の威力は十分!
『……っ!』
ライフルのトリガーが引かれ、光の弾丸が放たれる。
それはちょうど位置が重なっていたダンゴムシ3体を貫き消滅させた!
『よっしゃ、3枚抜き!』
『残りはわたくしがやりますわ!』
今度はグラドランナのストーク・キャノンが光を放ち、残り2体のダンゴムシを消し飛ばした。
やっぱり高威力エナジー兵器は頼りになる!
『蘭、葵さん、ありがとうございます』
『どういたしまして! でも、いきなりDエナジー兵器を使っちゃったねぇ』
『正しい判断だと思います。頑丈そうな相手でしたから』
虫型モンスターの中には今のダンゴムシのような頑丈なタイプもいれば、脆い代わりにすさまじいスピードを誇るタイプもいる。
そのスピードタイプの中でも典型的なのがトンボ型だ。
遠くにいても正確に私たちを認識し、脆い体で体当たりを仕掛けてくる。
胴体は爆発物になっているようで、直撃を受ければ無傷では済まない。
対処に神経を使う……!
『蒔苗様、背後からまたトンボ型です。私が落とします』
『お願いします』
百華さんのディオス・ロゼオの頭部から細かな桜色のエナジーが発射される。
ロゼオエナジーバルカン砲、略してREバルカン砲はまるで桜の花びらを飛ばしているような美しさがあるけど、威力は相当なものだ。
正確にトンボ型モンスターの翼を撃ち抜き、地面に落としていく。
『虫型モンスターというのもなかなか厄介なものです。本物の虫のように種が多彩で、それぞれがまるで洗練されたシステムのように動く。先ほどのダンゴムシ型やこのトンボ型などはまるで最低限の知能を持たされた弾丸……。かと思えばムカデ型のような巨大な個体や、知恵が回る個体もいる。モンスターのモデルとしてこれほど厄介な生物はありませんよ』
虫は今でも毎年大量の新種が発見されるらしいからなぁ。
それだけ短期間で進化を繰り返しているということなんだろう。
でも、もしその進化の早さがモンスターにも適応されていたら……。
日を追うごとにこのダンジョンの攻略は難しくなっていくのかもしれない。
まあ、私が今日でこのダンジョンを消すんだけどね。
『そろそろレベルでいうと20くらいの深さに来たかな』
全体の半分のちょっと手前といった感じだ。
破壊されたDMDを見る頻度が増え、モンスターも機械体が多くなってくる。
それに通路を塞ぐように蜘蛛の巣が張られているのをよく見るようになった。
『フレイム・シューター! サンダー・シューター!』
蜘蛛の巣を2種のシューターで燃やして道を開く。
しかし、肝心の蜘蛛そのものは見つからない。
この蜘蛛の巣は頑丈で物理的に排除するにはかなり時間がかかる。
Dエナジー兵器なら斬ったり燃やすのは簡単だけど、それをやるたびに機体本体のDエナジーが消費されていく。
巣がかなり分厚く張り巡らしてある通路もあるし、そろそろ本体を叩かないと時間とエネルギーのロスがバカにならないことに……。
『育美さん、蜘蛛の巣がかなり多いです。クモ型モンスターの目撃情報はありませんか? 出来れば先行している部隊に排除してほしいんですが……』
「今、その巣を張ってる小型のクモ型モンスターを生み出してる女王みたいな個体を発見したところよ。場所はレベル25あたりにある広い空間ね。これから3部隊で攻撃を仕掛けるから、蒔苗ちゃんたちはそのまま進んで」
『了解です』
各DMDには出撃前の時点で判明している部分を記録したダンジョンマップがインストールされている。
レベル25付近の広い空間というと、ちょうどこの先か……。
その女王みたいな蜘蛛との戦闘が長引きそうなら迂回ルートを探すか、それとも加勢して倒してしまうか……。
とりあえず、今は行く手を塞ぐ蜘蛛の巣を焼き払おう。
『育美さん、その蜘蛛との戦いに何か変化があったら報告をお願いします』
「わかったわ」
育美さんからの報告は、ほどなくして届いた。
「蒔苗ちゃん、女王蜘蛛に攻撃を仕掛けた3部隊は全機行動不能になったわ」
『行動不能……。全機破壊されたということですか?』
「いいえ。なぜか全機壊されることなく、糸で絡めとられて動けない状態なの。まるでエサを保存しているように……」
エサを保存……DMDを捕食……。
つまり、その中のDエナジーも一緒に……。
「でも、女王蜘蛛はかなり巨大らしいから通れない通路がたくさんあるわ。ルートを変更して細い通路を移動すれば、こいつをスルーして進むことも可能なはずよ。巣が張られているのもこの女王を中心とした一定の範囲内だけだから、しばらく進めばそのうち邪魔な巣もなくなるはずよ」
『……育美さん、その女王蜘蛛は機械体ですか?』
「ええ、混成機械体みたいよ」
『そうですか……。では、マキナ隊はその女王蜘蛛の撃破に向かいます』
育美さんの驚いた声が聞こえる。
チームのみんなの機体も私の方を見ている。
『コアの破壊が優先だということはわかっています。でも、DMDを壊さずエサのように保存しているというのが気になるんです。ヤタガラスは工場に保管されていた濃縮Dエナジーを飲んで進化しました。同じようにDMDの中にも濃縮Dエナジーが入っています。女王蜘蛛が機体を壊さず置いておく理由がもしそのDエナジーだったら……』
「また進化した個体……覚醒機械体が生まれるかもしれない……」
『はい。流石にあの強さのモンスターが生まれる可能性は見過ごせません。マキナ隊はこれより女王蜘蛛に攻撃を仕掛け、標的を撃破後は当初のルートでより深い場所へ進み、コアの探索を行います』
「了解よ、蒔苗ちゃん。隊長であるあなたの判断を信じるわ。頑張って」
『ありがとうございます。あ、他の部隊にも気を付けるように言っておいてください。根拠はありませんけど、DMDの捕食を狙っているモンスターは女王蜘蛛だけではない気がするんです』
「うん、全体に通達しておくわ」
もしかしたら、私たちは自分から巣穴に入っていくエサなのかもしれない。
私の考えがすべて杞憂で済めばいいけど、こういう悪い想像ほど当たるのが人間ってものだ。
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