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第5章 蟻の巣抹消作戦

-72- 蟻の巣抹消作戦Ⅱ〈突入〉

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『また……オーラが出た!』

 とにかくムカデの頭をたたっ斬ってやろうと思っていただけで、オーラを出そうとはこれっぽっちも意識していなかった。
 意識すると出ないのに、意識しないと出てくる……。
 武器としてこんなに扱いにくいものはない!

 でも、とにかくムカデ退治には成功した。
 それに愛莉たちに私が来たというサインも送れた。
 気づいてくれてるかはわからないけど、私の想いが届いていることを願う。

 さて、ホッとしている場合ではない。
 むしろ本番はここからなんだ。
 私たちのチームで……このダンジョンを抹消する!

『えっと……マキナ隊行くわよ!』
『了解ですわ!』
『頼むよ新米隊長さん!』
『蒔苗様、何なりとご命令を!』

 追いついてきた輸送ドローンから、3機のDMDが投下される。
 真下にあるのはダンジョンの入口!
 私も垂直降下で突入を試みる!

 それにしても、マキナ隊って……。
 4機で動く以上そのチームの名前が欲しいとは言われたけど、私以外全員一致で『マキナ隊』を推すなんてちょっと卑怯じゃない?
 多数決でそのままゴリ押されてしまったし。
 まあ、わかりやすくはあるけどね。

『突入後、すぐに着地の準備を!』

 このダンジョンの入口は8つあるが、どれも入口付近の構造は似ている。
 地上にある穴から入ると、まず縦穴に出る。
 つまり入口の穴が本当に穴で、突入後は機体が真下に落ちていくことになる。
 だから、油断してると下の地面に激突してしまう。

 全機絶妙な加減でスラスターを吹かせ、着地は難なくこなした。
 まあ、みんなそれなりに場数を踏んだDMD操者ですもんね。
 こんなところでトラブルを起こしたりはしない。

『……なんかグラドランナの後ろにくっついてない?』

 実は降下中から気になっていた。
 グラドランナの後部に連結される形で、黄金のピラミッドのような物がくっついている。
 しかもそのピラミッドにはキャタピラや外付けのミサイルポッド、バズーカまで装備されている。
 兵器ではあるみたいだけど、ミーティングでも聞いていない新兵器に存在を無視し続けるわけにもいかず、蘭に直接聞いてみた。

『これはファレノプシス・ユニットという無人機らしいですわ』

『無人機……? その黄金ピラミッドが?』

『そのようですの。DMDを支援するために作られたメカで製造元はモエギ・コンツェルン。見ての通りグラドランナちゃんに使われた技術やパーツが流用されているらしいですわ』

 確かに黄金も黄色と考えればグラドランナの機体カラーと方向性は一緒だ。
 それに特徴的なキャタピラ、機体同士を不具合なく連結できる相性の良さは、技術的に無関係では実現出来ないだろう。

『まあ、無人機といっても連結している間は私の制御下にありますし、機体を制御するAIが勝手に暴れ出すなんて心配は無用ですわよ』

『要するにグラドランナの一風変わった追加武装って感じなのかな』

『そういう認識で問題ございませんわ。アイオロス・ゼロが強化されたのに、わたくしのグラドランナちゃんだけ何も無しというのも寂しい話でしたし、これは良いサプライズプレゼントになりましたわ! ちなみにファレノプシス・ユニットでは長いので、わたくしはこの子を「ファレナ」と名付けましたの。皆さんも気軽にそう呼んでくださいまし』

 ファレナをくっつけたグラドランナはまるで黄色いカタツムリみたいな感じだけど、これは言わないでおこう……。
 今は作戦を円滑に進めることを考えるんだ。

『百華さん、作戦の確認をお願いします』

『了解しました蒔苗様。まず、我々は現在探査が最も進んでいる場所、要するに現時点でのダンジョンの最深部を目指して移動します。そこから真のダンジョン最深部、ダンジョンコアを目指して探索を続け、コアを発見し次第これを破壊。ダンジョンの抹消を図ります』

 やるべきことは至ってシンプルだ。
 この立体迷路をクリアし、目的地にたどり着けばいい。
 しかし、この迷路には移動を邪魔する敵もいる。

『現在、他の部隊が我々の移動ルートの安全確保に務めてくれていますが、何分なにぶんこのダンジョンは分かれ道が多いです。とてもすべてをカバーすることは出来ません。ゆえに常にどこからかモンスターが飛び出してくるという覚悟をしておいてください』

 このダンジョンのモンスターはどこからでも湧いてくるらしい。
 まさに虫と言ったところか……。
 『怪鳥峡谷』はダミーコアというわかりやすい出現場所があっただけマシだった。

『また、戦闘はあくまでも迅速な移動のためだけに行ってください。深追いしてまで敵を倒す意味はありません。我々のチームは高いブレイブ・レベルを持つ操者を抱えています。あくまでもコアの発見と破壊が優先です。敵の撃破だけなら他の部隊でも出来ます』

 ここのダンジョン・レベルは45。
 当然そこまでたどり着ける操者は限られている。
 ゆえに私たちのチームはコアの破壊を優先すべきチームになっている。

『武器は機体に外付けされている実弾武器から優先して使用し、弾を使い切った後はその場で武器をパージして機体の軽量化を図ります。長時間の作戦になる可能性もありますから、機体本体のDエナジーはなるべく温存してください』

 実際ダンジョンのコアがどこにあるのかという点は不明だけど、それ以外に関してはガチガチに作戦を固めて来ている。
 それだけ私たちが……いや、この戦いに関わるすべての人が本気ということだ。

『蒔苗様、おおよその作戦内容について確認が終わりました。さらに詳細な作戦も確認致しますか?』

『いえ、ここまでで十分だと思います。ありがとうございました』

『では、蒔苗様からお言葉を』

『ダンジョンを抹消する。それを最優先に考えた行動を期待します。マキナ隊、行動開始!』

 私の言葉に合わせて3人の『了解』がこだまする。
 その場のノリで案外それっぽいことが言えちゃうのね私。
 これは案外隊長に向いていたりして……?
 なら、それもありがたい。
 少なくとも私がこの作戦を成功させられる隊長でありますように……!
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