Dマシンドール 迷宮王の遺産を受け継ぐ少女

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第4章 ブラッドプラント防衛作戦

-50- ブラッドプラント防衛作戦Ⅵ〈飛翔〉

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「やああああああーーーーーーっ!!」

 この得体の知れないモンスターを飛び立たせてはいけない!
 こいつが地上で暴れられたら、どれほどの被害が出るかわからない……!

《ガァァァァァァァァァッ!》

 進化したヤタガラスは巨大な翼を羽ばたかせ熱風を起こす!
 その風圧はすさまじいもので、アイオロス・ゼロは前に進むどころか後ろへ吹き飛ばされ、工場の防壁に激突した!
 しかし、攻撃はそれで終わりではなかった。
 ヤタガラスはくちばしを開き、口の中に隠されていた大砲に深紅のDエナジーをチャージし始めた!
 この後なにをしてくるのか、こんなにわかりやすいことはない!
 でも、回避しきれるか……!?

 発射のタイミングを見極め、ギリギリのところで大きく横へ跳躍する!
 ヤタガラスの口から放たれた深紅のDエナジービームは、ついさっきまで私がいた場所を通過し、後ろにあった工場の防壁に直撃!
 その防壁をバターのように簡単に溶かし大穴を開けると、さらに後ろのバリアにまで穴を開け、深紅のビームはダンジョンの彼方まで飛んでいった……!

 なんて火力……!
 こんなのDエナジーのシールドでも受け止めきれない……!
 ただチャージに時間がかかる分、避けきれない攻撃でもない……!
 となると一番の問題はこちらの攻撃が通るかどうか……。

『……あっ! 待てっ!』

 ヤタガラスが飛んでいってしまう!
 こっちはどう倒そうか必死で考えているのに、向こうはもはや私たちに興味がないみたいだ!
 なんとか撃ち落とさなければならないけど、熱を操るようになった相手にフレイム・シューターは使えないし、サンダー・シューターだけではどうにも威力が足りない!

『くっ……! うぅ……! 待て……!』

 私の言葉を聞くはずもなく、ヤタガラスはエレベーター設備を破壊しながら真上へと飛んでいってしまった……。
 これで私たちは地上へ戻ることも出来ない……!
 どこまでも頭が回り、どこまでも強い奴!

 このダンジョンでの戦いは完敗だ……。
 救援部隊はほとんど倒れ、工場にも被害が出た。
 その上、進化したモンスターを地上へと解き放ってしまった!

 私たちには敵を追いかけ、戦う責任がある……!
 追いかける手段はないし、勝てるかどうかもわからない。
 でも、それでも……諦めるわけにはいかない!

「蒔苗ちゃん、なにがあったの!? さっきからまったく連絡がないけど……」

『あっ、育美さん! 増援部隊を地上側の入口に配置してください! さっきまで戦ってたカラス型のモンスターが進化して、ダンジョンから出ていこうとしてるんです!』

「し、進化!? ダンジョンから出ようとしてる!? 状況が上手くつかめないけど、わかったわ! 増援部隊は地上に配置する! それに敵が地上に出て来てくれるなら、通常兵器だってつかえる! そっちも出撃要請を出しておくわ!」

『ありがとうございます……! 敵は1体ですけど、とんでもなく強いです! 絶対に人の住んでいる場所にいかせちゃいけません! 私もなんとか地上に戻る手段を考えますから、そっちはよろしくお願いします!』

「了解! 最善を尽くすわ!」

 育美さんはそう言ってくれるけど、正直怖い……!
 ヤタガラスの強みはいろいろあるけど、一番驚異的なのはやっぱり飛行能力!
 飛行のスピードが進化で増しているとしたら、市街地に到着するまで数分とかからない。
 そして、市街地に出てしまえば1回のビームでどれだけの人が犠牲になるのだろう……。

 工場の防壁もバリアも貫くあのビームを回避出来たのは、人体よりも優れた機能を持つDMDだったからだ。
 生身の人間にはあんなもの回避出来ない……!
 なんの抵抗も出来ないまま死んでいくだけだ……!
 私はそれが怖くて、怖くて……!

『落ち着きなさい。あんたならまだ戦うことが出来るはずよ』

『あ……葵さん…』

 半壊のディオスはアイオロス・ゼロの肩に手を置き、大きくうなずいた。
 この行動ですら首が取れそうなくらいの損傷度なのに、不思議と力強さを感じるのはなぜだろう……。

『ふふっ、まあ私も恥ずかしながら、やっと落ち着いたところだけどね。でも、あんたたちの戦いはずっと見てたし、覚えてるよ。あのカラスを完全に追い込むなんてすごいなぁ……』

『でも、結局倒せなくていろんな人を危険に晒しています……! 負けたようなものです……』

『まだ勝負は決まっちゃいないよ。少なくともあんたに関してはね。流石に私は機体がもうダメだ。ここまでよく頑張ってくれたけど、あのカラスの前ではもうただの金属製の案山子かかしね。そっちのお嬢様の機体もちょっとキツイんじゃない?』

『ええ……限界圧縮破壊弾の熱が機体全体にいろんな不具合を起こしていますわ。まさに焼きが回った状態ですわね……』

『でも、あんたのアイオロス・ゼロはまだ戦えるんじゃない? 多少装甲が焦げたりへこんだりしてるけど、システムには問題ないはず。武器だってまだ残ってる。戦う意思だって……あるんでしょ?』

『ええ、もちろんです! 必ずあいつを倒します!』

『頼もしい言葉ね……。移動中にあんな偉そうなことを言ってごめんなさい。情けない話だけど、私はもうお願いすることしか出来ない……』

『いいんですよ、そんなこと! 私の機体が無事なのは、機体が優れているからで間違いありませんし、その機体を与えられた私は他の人よりも果敢に戦う義務があるんです! でも、そんな優れた機体も空は飛べません! なんとか地上に戻る方法を見つけないと、戦うことすら……!』

『地上に戻る手段ならあるよ。簡易ドックにジェットパックがね……!』

『ジェ、ジェットパック……!? あの背中に小さいロケットみたいなのを背負って飛ぶ奴ですか?』

『そう! さっきドックで機体を修理しようした時に見つけたんだ。エレベーター故障時にDMDをダンジョンから脱出させるための装備のようだけど、かなり旧式だし使われることはほとんどなかったんだと思う。でも、整備自体は行き届いてるし、ここの現場の人間は優秀だね』

『それを装備すれば、地上まで飛んでいけるんですね!』

『ああ、その通り。アイオロス・ゼロは軽そうだし重量に問題はなし。後は制御の問題だけど……まあ、あんたなら大丈夫でしょう。すぐにドックで取付作業に入って! 同時にエナジーも補給しておくこと!』

『了解です!』

 早く戦わなければらないという気持ちを抑え、落ち着いてジェットパックを装備。
 エナジーも補給し、各システムに異常がないこともチェック……うん、問題ない!
 ジェットパックは機体に接続するというより、ただ背中に固定している感じだ。
 操作は左手に持った簡単な制御装置で行うので、脳波を使うこともない。
 つまり、システム的に機体と合わないということはないんだ。
 こういうところは旧式の利点と言えるかも。

『制御装置のボタンを長押しすればジェットパックが起動するよ。その後、装置のレバーを握って徐々に力を込めていく。強く握れば噴射の勢いが強くなるし、弱めれば弱くなる。ぶっつけ本番だと加減がわかりにくいと思うから、最初は絶対ゆっくり握るんだよ』

『はい! わかりました!』

 制御装置のレバーは自転車のブレーキみたいな感じだ。
 私だって自転車くらい乗ったことがあるし、握る感覚だってなんとなくわかる!

『では、行ってきます!』

『蒔苗さんなら大丈夫ですわ!』

『あんたなら出来るさ!』

 制御装置のレバーをゆーっくり握る。
 ……なかなか動かないなぁ。流石に力が弱すぎる?
 もう少し力を入れないとダメかな?
 ギューッと……。

『ぎゃああああああああああああっ!!』

 アイオロス・ゼロは急上昇!
 まるで本物のロケットのように飛び上がった!
 下に見える蘭たちの機体がみるみる小さくなっていく……!

『し、姿勢制御……!』

 体を傾けたり、機体の方のスラスターを吹かせたりして調整しながら真っすぐに飛ぶ!
 大丈夫……コツはつかめた!
 地上までそう時間はかからない!
 ほら、みるみる天井が……。

『ま、マズイ……! ぶつかっちゃう!』

 このダンジョンは入口から短めの洞窟を進んだ後、地下へ伸びる長い縦穴がある。
 つまり、地下から縦穴に沿って真っすぐ飛ぶと、洞窟の天井にぶつかるようになっているんだ!
 本来なら地上が近づくにつれて速度を緩めないといけないんだろうけど、私は全速力でここまで来てしまった!
 ブレーキなんてないし、かくなるうえは……!

『曲がれーっ!』

 ほぼ直角90度に軌道を曲げ、短い洞窟をジェットパックで通り抜ける!
 そして、そのまま文字通り地上へと飛び出した!

『あっ……』

 地上に戻って最初に目に飛び込んできたのは……ヤタガラスの背中だった!
 まだここにいるということは、地上の増援部隊と戦ったんだ!
 でも、ヤタガラスの周囲に動いているDMDはいない。
 代わりにおびただしい数のDMDの残骸が転がっている……。
 まさか、この短時間で全滅させられた……?

 ……それでも、ここまで来たからには戦うしかない。
 ジェットパックはあくまでもダンジョンからの脱出用だから、長時間の飛行は出来ない。
 上空に逃げられたらもう追いかける手段はない……!
 だから偶然にも……いや、増援部隊のおかげで背後が取れた今!
 その背中に飛びついて、攻撃を仕掛けるしかない……!

 ジェットパックに残ったわずかな燃料でヤタガラスに突撃!
 その分厚い装甲の隙間にオーガランスを突き立てた!
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