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第3章 友情と日常

-36- ニューウェポンズ

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 火曜、水曜、木曜、金曜……。
 私は休むことなく学校に通い続けた。
 そして、今日は土曜日!
 いよいよDMDを操縦してもいい日がやってきた!

 私と愛莉、芳香、芽衣はいつもの交差点に集合し、マシンベースまで歩いてやってきた。
 5日間離れていただけなのに、この建物がなんだか懐かしく思える。
 正門の守衛さんにリングを提示し、通用口を開けてもらう。
 育美さんとは整備ドックで待ち合わせをしているから、今日は出迎えがない。
 私が前に立ち、愛莉たちをドックへ案内する。

「なんかもう、蒔苗は慣れてるって感じね~」

 芳香がキョロキョロとあたりを見渡しながら言う。

「まあ、私もここに来るのは今日で3回目なんだけどね。さあ、エレベーターに乗って。整備ドックは地下にあるから」

 私たちを乗せたエレベーターが静かに降りていく。
 目的の階に着くまでそう時間はかからないけど、みんなはまだかまだかとソワソワしている。
 もちろん、私もアイオロス・ゼロがどう仕上がってるか気になってうずうずしてる!

「さあ、着いたわ」

 エレベーターのドアが開くのとほぼ同時に飛び出し、早歩きでドックに向かう。
 ドックは1つの階層に複数存在するけど、緊急時でもない限りDMDは最初に整備を行ったドックで継続的に整備を行うことになっている。
 だから、場所はバッチリ把握している。

「育美さん、おはようございます!」

「おはよう! こっちの準備は万端よ。すべての武器を完成させて、装備してあるわ!」

 育美さんの言葉通り、アイオロス・ゼロには新しい武器が複数装備されていた!
 でも、決して見知らぬ武器ではない!
 休みの間も情報のやり取りを繰り返し、私の意見も取り入れられた私のための武器なんだ!

 メインウェポンであるオーガランスは据え置きで、右手に握られている。
 左腕には新たなる盾『ネオアイアン・エッジシールド』が装備されている。
 今まで両腕に装備していたネオアイアン・ライトシールドを外し、左腕1本に盾を絞る代わりにサイズは大型化している。
 最大の特徴はその名が表すように盾の先端が鋭く尖っていること。
 防御のためだけでなく、刺突しとつ武器としても運用出来るようになってるんだ!

 また、盾の裏側には新たなる剣『ネオアイアン・エッジソード』が2本仕込まれている。
 ネオアイアンソードより軽量化が図られていて、刃の形状は細長い三角形のようになっている。
 切れ味は変わっていないが、刃の先端がより尖ったことにより貫通力が上がっている。
 それはつまり、敵に投げつけた時の威力も上がっているということだ。

 剣が盾の裏に移動したことで空いた両方の腰には、2つの銃がマウントされている。
 右には赤い炎の銃『フレイム・シューター』。
 左には黄色い雷の銃『サンダー・シューター』。
 どちらも潮騒迷宮で手に入れたアイテムが素材に使われていて、フレイム・シューターはエナジーを炎に、サンダー・シューターにはエナジーを雷に変換して射出することが出来る。
 さらに撃ち出す弾丸にはいくつかのバリエーションが……。

「うおおおおっ!! これがアイオロス・ゼロ!! 確かにアイオロスの面影がある!」

 アイオロス・ゼロを見た芽衣が絶叫する。
 まるで推しのアイドルが目の前に来た時のファンのようだ。

「でも、少しゼロの方がスリムに見えますね。装甲が薄いのかな?」

「ええ、ゼロの方が装甲は薄いわ。というよりも、オリジナルの方が装甲を増設してるって言った方が正しいかしら。アイオロスシリーズのコンセプトはそもそも高機動高反応だから、ゼロの姿が本来の設計思想に近いの」

「へ~! では、なぜオリジナルのアイオロスは装甲を増やすことになったんですか?」

「装甲を削ってまで求めた機動力と反応速度が、操者にとって過ぎたものだったから……かな。いくら速くても操縦が追いつかなかったら無用の長物だからね。装甲を増設して使いこなせる範囲までスピードを下げ、耐久力を上げた方が扱いやすかったのよ」

「なるほど……ん? でも、元々のアイオロスの操者ってあの萌葱大樹郎さんですよね? 彼をもってしてもアイオロス本来の性能は引き出せなかったってことですか?」

「ええ、その通りよ。ただし、アイオロスシリーズはそもそも人間が使いこなせるかどうかを考えず、ただひたすらに高性能を求めて作られたものだから、本来の力を引き出せないのも当然っちゃ当然なのよ。それに本来の運用方法でなくても、大樹郎さんの操るアイオロスは強かった……。間違いなく人類最強のDMD操者だったわ」

「私もそう思います……! アイオロスが戦う姿はモエギ・コンツェルンが公開している映像でしか見たことありませんが、あの強さとカッコよさは人類最強と呼ぶにふさわしい! あれ? でも、姫が操縦してるゼロは本来の姿のままなんですよね? ということは……」

「ふっふっふっ……お察しの通りよ。蒔苗ちゃんならアイオロスシリーズ本来の力を引き出すことが出来る!」

 その場にいた育美さん以外の全員が『えっ!?』と驚きの声を上げる。
 そう、私も驚いている……!

「育美さん! みんなの前だからってそんな無理に持ち上げなくてもいいですから! 私にはまだアイオロス・ゼロを完全に使いこなす腕前はありませんよ!」

「そうかな? 確かにまだ完全ではないけど、その力の片鱗は見えてきてると私は思うなぁ」

 うぅ……! 褒められるのは嬉しけど、この場だとみんなの期待のまなざしが痛い……!
 私はお爺ちゃんが操るアイオロスのことをあまり知らないけど、流石にDMDを操縦し始めたばかりの私が追いつける存在ではないと思う……!

「それで、これからどうする? 蒔苗ちゃんがこれまでに行った2回の探査活動の映像を見るか、マシンベースの訓練場で新たな武器のテストを行うアイオロス・ゼロを生で見るか……」

 この流れなら愛莉たちがどちらを選ぶかハッキリわかる。
 3人は顔を見合わせた後、口を揃えて言った。

「テストを生で見たいです!」

「了解! じゃあ、蒔苗ちゃん準備よろしく! いつも通りにやれば問題ないわ!」

「……はい!」

 こうなったら良いとこ見せちゃうぞ私!
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