君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと

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いじめっ子

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「兄様、そろそろ私学校に行かないと」

「まだ行かなくていいよ」

「どうして?」

「コトハは…誰かに殴られたりしているんだろう?学校でいじめられているんだよね?」

「…うん」

こくりと頷くコトハ。

悲しそうな表情にこちらが辛くなってしまう。

「なら、行かなくていい」

「でも」

「誰にやられたの?」

「…みんな」

「そっか」

嫌われ者の三男坊の娘。たとえ血の繋がりが無くとも関係はなく、村の奴らは鬱憤をコトハにぶつけた。

それを見ていたクソガキたちは、コトハはいじめてもいい相手と勘違いしてコトハを乱暴に扱った。

殴る蹴るは当たり前。

痣だらけだったコトハ。

それを見ても止めない大人たち。

「コトハ、もう一度言うよ。コトハは学校には行かなくていい。僕が行けと言うまでは」

「いいのかな…」

「大丈夫、僕を信じて」

さて、どんな制裁を下してやろうか。

再起不能なくらいにしてやらねば気が済まないが…ああ、それはコトハの寝静まった夜にでも考えようか。

今はシュンとしているこの子を慰めるのが先。

「コトハは真面目だね。そんなに学校を休みたくないの?」

「だって、勝手に休んじゃいけないって先生が…」

あー、本当にロクでもない村。

「休みの連絡は僕がしたから、ズル休みじゃないよ」

「そう…なの?」

「うん。だけどお勉強は必要だから、僕とお勉強してみようか」

「うん」

そしてコトハをお勉強に誘う。

僕的にはコトハを励ますための気分転換のつもりだったが…。

「…えっと、うーんと」

「なるほど」

コトハはあのクソどものネグレクトのせいで、だいぶ、なんというべきか…遅れている。

「…コトハ、まずはひらがなとカタカナの読み書きからやろっか!」

「ごめんなさい…」

「謝ることはないよ!時間はたっぷりあるんだ、一緒に頑張ろう?」

「うん…」

まずは読み書き、次はそろばん。

そこだけ押さえておけばまあ…そのうち、追いつけるだろう。

努力は必要になるけれどね。

「さあ、コトハ。今日からは僕が先生だよ。二人きりの学校生活の始まりだ!」

「…二人きりの学校生活!」

コトハはその言葉の響きが気に入ったようでキラキラと目を輝かせる。

やる気が出たのはいいことだね。

一緒に頑張ろうね、コトハ。










「さて、今日はこのくらいで切り上げようか」

「どう?兄様。少しはできるようになった?」

「うんうん、一日でだいぶ頑張ったねぇ。コトハは偉いなぁ!天才だなぁ!」

「ふふ、わーい!」

まだまだ同級生と比べれば全然だが、そのうち追いつけるだろう。

うん。

とりあえずまずはやる気を削がないことからかな。
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