上 下
7 / 51

新たな保護者となる

しおりを挟む
結果的に、コトハの両親はすぐに見つかった。

逃避行ごっこもこれでおしまい。

そしてコトハを放置した保護責任者遺棄罪でそのまま逮捕されることになった。

肝心のコトハの処遇だが、僕が監護権をもぎ取った。

仕事はないが金はあるので、弁護士に助けてもらってゴリ押しした。

「コトハ、大事なお話があるんだ」

「なに?兄様」

「コトハのお義父さんとお母さんが見つかったよ」

「本当!?」

「うん、でも二人ともとっても悪い子だから…警察のお世話になっててね、刑務所に行っちゃうんだ」

僕の言葉に泣きそうになるコトハを抱きしめる。

「でもね、コトハ。僕が代わりにコトハを育てていいことになったから…これからは僕がコトハを守るよ。絶対守るから」

「…兄様はどこにもいかない?」

「もちろん。君の一生が終わるまで、見守り続けるよ」

ぎゅっとコトハが僕を抱きしめ返してくる。

この小さな子を、これ以上悲しませないために。

彼らとは、今は悲しくてもきちんと縁を切ろうね。











娘を放置した罪で捕まった。

あの子が前の夫の子ではないとわかって、前の夫に捨てられた。

あの子の父親に心当たりが多過ぎて誰なのか特定できなくて。

そんな私でも受け入れてくれる人と再婚した。

元々この子のせいで悲惨な目にあったのだからと、ネグレクトを繰り返して、繰り返して…ある日、彼が闇金に手を出して借金の督促状が届いたことで、あの子を置いて逃げ出した。

「まさか、親戚に売られるなんて」

結果私たちは捕まって、バラバラに収監されて、幸せだった逃避行の日々は今は夢。

もうずっと、夫と会えていない。

子供を置いて逃げ出したことを追求され、そもそもあの子が疫病神だったのだと訴えたが聞いてもらえない。

あんな子、産まなければよかった。

『へえ、そんなこと言うんだ』

誰もいないはずなのに声が聞こえて振り返る。

やはり誰もいない。

『…なら、お前たち夫婦には悪夢をあげよう。あの子がどんな思いでお前たちを待っていたのか、身をもって知るがいい』

急に意識が途切れる。

そして、長い長い夢を見た。

ずっとずっと、帰ってこない親を求めてひもじい日々を送る夢。

あの子の夢だと気付いたが、死にそうになるまで飢え、また最初から夢を見る。

夢は終わらない。

「ん…」

「目が覚めた!?大変!先生、先生!」

いつのまにか医療刑務所で治療を受けていたらしいが、起きていられる時間は短くまた夢に落ちる。

これが私のしてきたことの罰なのか。

夫も今同じ目に遭っているのか。

本当にあの子は、私にとっては疫病神だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

処理中です...