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出会い〜ツガイ編
6話 ジレウス視点
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(本当に変な奴だな、コイツ)
名を告げた後に散々笑ったかと思えば
いつの間にか夢の園へと旅立ってしまった、腕の中の子供ー、コーキ。
いい響きだと褒めた、ただそれだけでニコニコと機嫌良さそうに笑っていた様子がなんだかおかしくも悲しく感じられ、つい微妙な顔になってしまう。
最初、名前を聞いて彼が言葉に詰まったとき。
そもそも生まれたばかりで名前がないのかと思った。
同時に、華族の生態が不明なだけになんとも言い難いが、それでも生まれた姿が赤子の状態ではなく少年だったことで、名前はちゃんとあるのではないかと変な確信を抱いてもいた。
だから彼が躊躇いがちに名を俺に告げた時、
ああやはりちゃんと名があるんだなと安心もしたのだ。
しかし名を告げた瞬間彼が、コーキがあまりにも悲しそうな顔をしたから。
その後笑ってくれた後もどうにも彼の心内が気になって仕方がなかった。
「…まぁ、笑えている内は、いいさ」
人間、笑えなくなってしまったらそれこそ本当に心を病んでしまう。
実際に笑えなくなり心を壊した人物を知っているだけに、
その様子を思い出しては苦いものが込み上げてくる。
ファミリーネームがないことから、身寄りがない可能性が高いコーキ。
華から生まれたにしろ、人やその他種族から生まれたにしろ、
名があるということは、名付けた者がいるはず。
しかしあの時彼は独りだった。
誰も周りに残っていた形跡すらなかった。
まだ年若い彼は1人では生きられない。
誰かが彼を、独り立ちするその時まで保護してやらないと…
(こんな可愛いの、ほっとけるかよ…)
下手にあの場に放置していたら最悪魔物の餌か
盗賊に捕まり奴隷にされるかのどちらか。
そして知り合ってしまった今、
そんな境遇に彼が堕ちてしまうことは断じて許容できないのだ。
(何も持ってねぇし、顔も、目立つしな……。
ギルドで住所登録(俺の家)して、服とか雑貨買い込んで、それから……)
規則正しいリズムで寝息を立てる可愛らしい少年をしっかりと守るため、
ギルドへと到着した後の行動を脳裏で並べ立てる俺は、
己が本来他人に対して面倒を嫌ってほどほどに無関心を貫く人間であることに。
そんな自分が、
独占欲からコーキを自分のものであると無意識で定義していることに、
この時まるで気付いてはいなかった。
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