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第二部。

この世界を守って。

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 ——シルフィーナ。シルフィーナ。聞こえる? 大丈夫?

 魂の奥底からそんな声が聞こえるような気がする。

 ——うーん、ダメかぁ。あたしをここから出してくれさえすれば、もっと力になってあげることができるんだけどなぁ。

 白銀の妖精? そんなイメージが頭に浮かんだ。

(誰? 誰なの?)

 ——ダメかぁ。聞こえないよね。あたしはずっと貴女の中にいるのに……。

(聞こえているわ。どうして?)

 ——しょうがないかぁ。貴女の心が幼い頃に閉じてしまってから、何度呼びかけても意思の疎通ができなかったんだものね。今ここでいきなりお話ができるようになるって奇跡、おきないよね……。

 白銀の妖精にはセラフィーナの心の声は届かなかいようだ。それでも、彼女が言うことが本当なら、今まで心を閉じてしまっていたのは自分の方らしい。

 ——まあでも? 枷を解いて力を解放できた今ならもう少しあたしの力を移しても大丈夫そうよね? あたし、マキナの権能のいくつかを貴女に託すわ。この世界を守れるのは今は貴女だけなんだもの。お願いよ。

 白銀の妖精はそこまで話してすうっとシルフィーナの心の奥底に還っていった。

(わたくしの心の奥底に、貴女はいるの? マキナ様……)

 今まで感じていた力の根源がなんなのか、少しわかった気がする。
 コレット家の血筋の中に、ずっと彼女がいたんだってことも。
 あの神の魔法。
 あれが彼女なんだって、そう感じて。


 ♢ ♢ ♢

「奥様、奥様!」

「ああ、リーファ。わたくし、寝ていたのかしら……」

 肩を少しゆすられ目を開けるとそこには侍女のリーファが心配そうな瞳でこちらを覗き込んでいた。

「奥様は聖緑祭の会場でお倒れになったんだそうです。旦那様が抱き上げてお屋敷まで連れ帰って下さって、今この寝室に運び込まれたところですわ。そのまま寝かせておくようにおっしゃられたんですけど、何かうわごとをおっしゃっていらっしゃったから」

 怖い夢でも見ているのか、それとも何か苦しかったりするのか、と、目をうっすらと開けるシルフィーナに思わず声をかけたのだとリーファ。

「ああ、そうだったわね。ごめんなさいリーファ。心配かけたわね。もう大丈夫よ」

 そう体を起こす。

「シルフィーナ様の心音、体温、脈拍、正常値に戻りましたね。もう大丈夫そうです」

「タビィも。ありがとう」

 そばには猫型自動人形オート・マタのタビィも可愛らしい侍女服を身に纏い佇んでいた。
 そんな姿を見て自然と笑顔になるシルフィーナ。

「お気づきになったこと、旦那様にも伝えてきますね」

 シルフィーナが笑顔を見せたことで安心したのか、リーファも笑みをみせ一礼し寝室を出て行った。

 時間はどうやらまだ夕刻前。
 あの事件はどうなったのかしら?
 だんだんと思い出してきて、少し不安になる。

 あの巨大な魔の瘴気。まだ上空を漂っているのを感じる。
 なんとかしなくては。
 夢の中で誰かにそう言われた気もする。
 この世界を守って、と。
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