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第一章 The war ain't over!
10-2 思い込みは暴走の燃料Ⅱ
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騒ぎに駆けつけた熟年の男性は窓を叩き割らんばかりに喚く母親の肩を掴み、車から引き離して事情を聴こうと試みる。
同時に、別の家からも尋常ではない騒ぎに様子を見に来た女性が現れ、熟年男性に代わって泣き喚き要領を得ない母親の対応に乗り出した。そこで熟年男性は怒鳴りながら窓をこじ開けんとする父親を宥め、そのまま自宅の敷地の方へと退避させる。
両親が車から引き離されたところで、レインは窓を閉める。生活道路で路上駐車の状態は気が引けたものの、車を敷地に入れる事はおろか、車から降りてよいかも分からず、レインはただ呆然と運転席から混乱を眺め続けた。
途方に暮れていると、父親を宥めていた熟年男性が静かに運転席の窓を叩いた。
レインは漸く運転席側の窓を少し開け、熟年男性に謝罪する。
「えっと、その……父が、すみません」
「いや、まあいいよ」
「えっと、それで……」
「親父さん、アンタの事心配してたよ。ニュース、見てないのか?」
レインは首を傾げた。
「見てないのか……山の中で焼死体が見つかったんだよ。警察は自殺だろうって話だが、アンタに背格好が似てるってんで、慌てて来たそうだ。電話もつながらないと言っていたが、どうして電話に出ないんだ」
「電話……あぁ、壊れてます。壊れてるから、連絡しようも有りません」
熟年男性は渋い表情を浮かべる。
「すみません、親子のごたごたに巻き込んでしまって。その、仲裁、ありがとうございました」
「いや、そうじゃなくて、こう、謝るなら」
「父とは改めて話をします。車の事もあるので。その、本当に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」
レインはこれ以上何かを聴きたくはないと話を切り上げ、深々と恭しく頭を下げてせた。その態度に熟年男性はこれ以上何かいう事を諦める。
「……ちゃんと謝るんだぞ、分かったね」
「はい。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
熟年男性はレインへの説教を諦め、父親に対して車をかわす様にと伝えた。
一方、母親は自宅の玄関先へ連れられており、其処で泣き崩れていた。
熟年男性の説得に応じ、軽自動車は駐車スペースへと突っ込まれ、レインは車体の半分を自宅の敷地に滑り込ませ、道路の空間を確保することには成功した。
「由雨生ぃっ!」
レインがエンジンを止めるなり、立ち上がった母親は鬼の形相でレインの車へと駆けより、再び運転席側の扉を激しく叩いた。見かねて女性が再び駆け寄り、その肩を抱く。
「落ち着いて、落ち着いて、ね?」
その反対側、助手席側には鬼の形相の父親が立っており、こちらに仲裁する人物はいない。
レインは覚悟を決めて少しだけ助手席側の窓を開ける。
「一体どれだけ心配したか分かっているのか!」
窓の隙間からねじ込まれる怒鳴り声によると、レインの両親は焼死体発見の報道を受け、連絡のつかなくなったレインを案じて早朝から車を出したのだという。
レインは内心、何処の誰の所為で携帯電話が壊れたのかと呆れながらも、件の熟年男性の事もあり、まずは謝罪をとその言葉を述べた。しかし、両親の怒りは収まらず、現在の住居の方へ住民票を移して働けという。
「電話に出なかったのは悪かった。でもその携帯を壊した一因はかーさんに有るじゃないか。それに、そんなに心配なら、どうして警察に言わないんだ!」
その指摘に両親は一瞬沈黙したが、効果はなく、結局は全てレインが悪い、音楽家である事が悪いと的外れな非難を続けた。
「あぁ、もういい! お前に音楽を続けられなくさせてやる!」
反論せずに言いたいだけ言わせておく、レインは先日ミカがとったのと同じ手法で暴言を受け流し、馬頭に耐えた。その結果、しびれを切らした父親は捨て台詞を吐き、馬頭を切り上げた。
「帰るぞ!」
父親は母親に怒号を飛ばすが、母親はまだ収まらない。
「いいから帰るぞ!」
父親は母親の手を引き、無理やり車に押し込むと、そのまま車を出した。
その後、レインは一度家に戻り、冷蔵庫の扉を開けた。暫く、この家で暮らすのはやめておこう、と。
同時に、別の家からも尋常ではない騒ぎに様子を見に来た女性が現れ、熟年男性に代わって泣き喚き要領を得ない母親の対応に乗り出した。そこで熟年男性は怒鳴りながら窓をこじ開けんとする父親を宥め、そのまま自宅の敷地の方へと退避させる。
両親が車から引き離されたところで、レインは窓を閉める。生活道路で路上駐車の状態は気が引けたものの、車を敷地に入れる事はおろか、車から降りてよいかも分からず、レインはただ呆然と運転席から混乱を眺め続けた。
途方に暮れていると、父親を宥めていた熟年男性が静かに運転席の窓を叩いた。
レインは漸く運転席側の窓を少し開け、熟年男性に謝罪する。
「えっと、その……父が、すみません」
「いや、まあいいよ」
「えっと、それで……」
「親父さん、アンタの事心配してたよ。ニュース、見てないのか?」
レインは首を傾げた。
「見てないのか……山の中で焼死体が見つかったんだよ。警察は自殺だろうって話だが、アンタに背格好が似てるってんで、慌てて来たそうだ。電話もつながらないと言っていたが、どうして電話に出ないんだ」
「電話……あぁ、壊れてます。壊れてるから、連絡しようも有りません」
熟年男性は渋い表情を浮かべる。
「すみません、親子のごたごたに巻き込んでしまって。その、仲裁、ありがとうございました」
「いや、そうじゃなくて、こう、謝るなら」
「父とは改めて話をします。車の事もあるので。その、本当に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」
レインはこれ以上何かを聴きたくはないと話を切り上げ、深々と恭しく頭を下げてせた。その態度に熟年男性はこれ以上何かいう事を諦める。
「……ちゃんと謝るんだぞ、分かったね」
「はい。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
熟年男性はレインへの説教を諦め、父親に対して車をかわす様にと伝えた。
一方、母親は自宅の玄関先へ連れられており、其処で泣き崩れていた。
熟年男性の説得に応じ、軽自動車は駐車スペースへと突っ込まれ、レインは車体の半分を自宅の敷地に滑り込ませ、道路の空間を確保することには成功した。
「由雨生ぃっ!」
レインがエンジンを止めるなり、立ち上がった母親は鬼の形相でレインの車へと駆けより、再び運転席側の扉を激しく叩いた。見かねて女性が再び駆け寄り、その肩を抱く。
「落ち着いて、落ち着いて、ね?」
その反対側、助手席側には鬼の形相の父親が立っており、こちらに仲裁する人物はいない。
レインは覚悟を決めて少しだけ助手席側の窓を開ける。
「一体どれだけ心配したか分かっているのか!」
窓の隙間からねじ込まれる怒鳴り声によると、レインの両親は焼死体発見の報道を受け、連絡のつかなくなったレインを案じて早朝から車を出したのだという。
レインは内心、何処の誰の所為で携帯電話が壊れたのかと呆れながらも、件の熟年男性の事もあり、まずは謝罪をとその言葉を述べた。しかし、両親の怒りは収まらず、現在の住居の方へ住民票を移して働けという。
「電話に出なかったのは悪かった。でもその携帯を壊した一因はかーさんに有るじゃないか。それに、そんなに心配なら、どうして警察に言わないんだ!」
その指摘に両親は一瞬沈黙したが、効果はなく、結局は全てレインが悪い、音楽家である事が悪いと的外れな非難を続けた。
「あぁ、もういい! お前に音楽を続けられなくさせてやる!」
反論せずに言いたいだけ言わせておく、レインは先日ミカがとったのと同じ手法で暴言を受け流し、馬頭に耐えた。その結果、しびれを切らした父親は捨て台詞を吐き、馬頭を切り上げた。
「帰るぞ!」
父親は母親に怒号を飛ばすが、母親はまだ収まらない。
「いいから帰るぞ!」
父親は母親の手を引き、無理やり車に押し込むと、そのまま車を出した。
その後、レインは一度家に戻り、冷蔵庫の扉を開けた。暫く、この家で暮らすのはやめておこう、と。
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