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第一章 幼少期編
58.
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「失礼します」
皇子の声に応じ、ガリウスが部屋へと入ってくる。
先ほど廊下ですれ違った際に感じた嫌な雰囲気を微塵も感じさせない、さわやかな好青年といった面持ちだ。
とても先ほどの彼と同一人物とは思えない。
「どうしたんだいガリウス。君への話は終わっているはずだけれど」
皇子が少し訝しむ様にして、ガリウスに尋ねる。
俺が来る前に、既に彼への話は終わっていたらしい。
「はっ。今後兄上にお仕えするに当たり、私も兄上や甥であるアルフォンスと契約を交わしておくべきかと愚考いたしまして。つきましては、殿下にその立ち合いをお願い致したく」
神妙な面持ちで膝をつき、殊勝に述べるガリウス。
俺の魔法契約であれば立ち合いなどおらずとも効力はきちんと発揮される。
しかし対外的なことを考えれば、立会人を用意するのは必要なことだ。
それが皇帝の息子である皇子ともなれば、信用は十分だろう。
「ふむ……まぁ君がそう言ってくれるのは私としても有難いけどね。醜い御家争いは帝国の疲弊を招く。それが立ち合い一つで解決するのなら私も吝かではないよ。よし、折角こうして揃っているんだ。厄介な話はさっさと終わらせてしまうことにしよう」
そう言って、魔法契約書を用意させる皇子。
ガリウスを厄介呼ばわりとは少々気の毒な気もするが、俺も彼と契約を結んでしまえるのなら安心だ。
先ほどの様子が気がかりではあるが、契約さえ結んでしまえば大丈夫だろう。
きっとまだ俺の事を憎んではいるのだろうが、自分の感情よりも今後の実をとることにしたのだろう。
「悪いけど、君のことを完全に信用したわけではないよ。だから内容は少々重くさせてもらう。すまないね」
「いえ、殿下のお立場から見れば、致し方ない事かと」
「そうかい。ではあとはこれにそれぞれサインをしてもらおうか」
そう言って、皇子は俺たちに契約内容を書き記した二枚の契約書を差し出す。
内容は、相手の損害になり得る行為を意図して行わないことといった基本的なことを始め、今後の事について細かい部分まで書き記されてある。
罰則は行為を行おうとしただけでも全身に激痛が走り、一定時間続ける場合は死に至るという物。
すぐに死に至るようにしていないのは、内容の細かさ故だろう。
俺と父さんはそれぞれ自分の契約書に一通り目を通し、署名欄にサインを記す。
そして俺の横に移動してきたガリウスに手渡すと、ガリウスもペンをとりサインを記し始めた。
俺との契約書にサインを終えると、契約書がいつもの如く発光し、俺とガリウスへと吸い込まれる。
「これはいつ見ても不思議な光景だねぇ。全く凄い力だ」
そう言って感心する皇子。
ガリウスも同意するように頷く。
そして父さんとの契約書にサインを記そうとした時――
――ドガンッ!!
突然窓側の壁が破壊され、辺りに土煙が立ち込める。
気づけば壁の向こうから侵入者が十名ほど入り込んできていた。
咄嗟に魔法を放とうとするが、煙で視界が悪く、どれが味方か咄嗟に判別ができない。
それぞれの後ろに待機していた護衛達が護身用の武器を抜き、主人を守ろうと立ち回る。
ジャックスとソフィーネも机を蹴飛ばし俺の前へと回った。
隣で座っていたガリウスも、俺を守ろうとしているのか俺とジャックスたちの間に入り俺を庇う。
とその時、俺の首に誰かの手が触れた。
そして――
「――転移」
女性の暗い声と共に、足元で魔法陣が小さく光る。
気づいた時には既に魔法は発動されており、俺は魔法陣から逃れようと、咄嗟に目の前のものを掴んでしまう。
「なっ!?」
転移する瞬間、誰かの驚愕の声が聞こえた。
しかしその人物を特定する間もなく、俺の視界は光に呑まれていった。
皇子の声に応じ、ガリウスが部屋へと入ってくる。
先ほど廊下ですれ違った際に感じた嫌な雰囲気を微塵も感じさせない、さわやかな好青年といった面持ちだ。
とても先ほどの彼と同一人物とは思えない。
「どうしたんだいガリウス。君への話は終わっているはずだけれど」
皇子が少し訝しむ様にして、ガリウスに尋ねる。
俺が来る前に、既に彼への話は終わっていたらしい。
「はっ。今後兄上にお仕えするに当たり、私も兄上や甥であるアルフォンスと契約を交わしておくべきかと愚考いたしまして。つきましては、殿下にその立ち合いをお願い致したく」
神妙な面持ちで膝をつき、殊勝に述べるガリウス。
俺の魔法契約であれば立ち合いなどおらずとも効力はきちんと発揮される。
しかし対外的なことを考えれば、立会人を用意するのは必要なことだ。
それが皇帝の息子である皇子ともなれば、信用は十分だろう。
「ふむ……まぁ君がそう言ってくれるのは私としても有難いけどね。醜い御家争いは帝国の疲弊を招く。それが立ち合い一つで解決するのなら私も吝かではないよ。よし、折角こうして揃っているんだ。厄介な話はさっさと終わらせてしまうことにしよう」
そう言って、魔法契約書を用意させる皇子。
ガリウスを厄介呼ばわりとは少々気の毒な気もするが、俺も彼と契約を結んでしまえるのなら安心だ。
先ほどの様子が気がかりではあるが、契約さえ結んでしまえば大丈夫だろう。
きっとまだ俺の事を憎んではいるのだろうが、自分の感情よりも今後の実をとることにしたのだろう。
「悪いけど、君のことを完全に信用したわけではないよ。だから内容は少々重くさせてもらう。すまないね」
「いえ、殿下のお立場から見れば、致し方ない事かと」
「そうかい。ではあとはこれにそれぞれサインをしてもらおうか」
そう言って、皇子は俺たちに契約内容を書き記した二枚の契約書を差し出す。
内容は、相手の損害になり得る行為を意図して行わないことといった基本的なことを始め、今後の事について細かい部分まで書き記されてある。
罰則は行為を行おうとしただけでも全身に激痛が走り、一定時間続ける場合は死に至るという物。
すぐに死に至るようにしていないのは、内容の細かさ故だろう。
俺と父さんはそれぞれ自分の契約書に一通り目を通し、署名欄にサインを記す。
そして俺の横に移動してきたガリウスに手渡すと、ガリウスもペンをとりサインを記し始めた。
俺との契約書にサインを終えると、契約書がいつもの如く発光し、俺とガリウスへと吸い込まれる。
「これはいつ見ても不思議な光景だねぇ。全く凄い力だ」
そう言って感心する皇子。
ガリウスも同意するように頷く。
そして父さんとの契約書にサインを記そうとした時――
――ドガンッ!!
突然窓側の壁が破壊され、辺りに土煙が立ち込める。
気づけば壁の向こうから侵入者が十名ほど入り込んできていた。
咄嗟に魔法を放とうとするが、煙で視界が悪く、どれが味方か咄嗟に判別ができない。
それぞれの後ろに待機していた護衛達が護身用の武器を抜き、主人を守ろうと立ち回る。
ジャックスとソフィーネも机を蹴飛ばし俺の前へと回った。
隣で座っていたガリウスも、俺を守ろうとしているのか俺とジャックスたちの間に入り俺を庇う。
とその時、俺の首に誰かの手が触れた。
そして――
「――転移」
女性の暗い声と共に、足元で魔法陣が小さく光る。
気づいた時には既に魔法は発動されており、俺は魔法陣から逃れようと、咄嗟に目の前のものを掴んでしまう。
「なっ!?」
転移する瞬間、誰かの驚愕の声が聞こえた。
しかしその人物を特定する間もなく、俺の視界は光に呑まれていった。
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