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2巻

2-3

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「……」

 的確すぎてなんか照れるのだけれども。
 案の定、顔を赤らめた俺にあきれ声が飛んできた。

「ああ、わかりやすい奴じゃのー」
「いいだろ別に! 期待するだけならタダなんだから!」

 しょっぱい反応のカワズさん達に、俺もさすがに恥ずかしくなって口をとがらせた。
 神秘的で高貴な雰囲気漂うエルフ美女。期待しちゃうのは悪い事なのか?
 ただ俺のこの熱い思いは理解されないようで、実に残念。
 自分でも馬鹿だなと思うそんな茶番を終わらせたのは、きりがよかったからじゃなかった。

「……この音は、いったい――」

 頭上から聞こえる異音。突然、勇ましい雄叫おたけびと共になにかが空から降ってくれば、誰だって馬鹿話は中止するだろう。

「ヌオオオオオ!!」
「逃げて!!」
「お?」

 セーラー戦士の指示が飛ぶ。その声に反応してその場を飛びのく。
 ズドン!
 すごい音が聞こえたと思ったら地面が爆発したようにえぐれ、飛んできた土を思いきりかぶっていた。

「……」

 トンボはすでに俺のすぐ後ろに隠れている。カワズさんも、今回は静観を決め込んだようで、ニヤニヤ笑いながらやっぱり俺の後ろにいた。
 真剣な表情なのはセーラー戦士ただ一人。
 落っこちてきたのは、武骨な鎧にモーニングスターを振り回す、耳の長い巨漢だったのだ。
 だがそいつは丸い。あまりにもでかくて丸い。
 いやいやいや……耳が……長い?
 まさか……!
 この時、俺は顔面蒼白そうはくになった。
 これがエルフ? いや待て、そうじゃない。よく見るんだ、あのもふっとした耳を。
 大きな体も、よく見れば熊のように毛むくじゃらじゃないか。
 あんなのがエルフなわけない。
 あれは……あんなモサモサは……そうだあれは……!

「あなたのお名前なんていうの!!」
「どうしたんじゃ! いきなり叫び出して!」

 フラフラと丸いのに歩み寄ろうとする俺を、カワズさんが必死に止める。

「止めないでくれ! 俺はあいつに名前を聞かねばならないんだ!」
「聞いてもわからんじゃろう!」

 そりゃそうだけれども!……うん、そりゃそうだ。
 セーラー戦士はさっそく、そのでっかい丸いのに飛びかかっていくし。
 しかし、手助けしようにも彼女の動きについていけるのか、それはおおいに疑問である。
 とんでもない勢いで飛び出したセーラー戦士は、丸いのに向かって蹴りを食らわせたのだが、その威力が問題だった。
 丸いのは文字通りボールのように跳ね飛ばされると、後ろにあった木のみきに激突したのである。

「……ああ、なんて事を」

 俺はオロオロしながら手を伸ばすが、どうやら丸いのはまだ無事っぽい。
 木屑きくずを振り払うと、元気に跳ね起きて、再び雄叫おたけびを上げながらセーラー戦士に向かっていく。

「オオオオオ!!」

 だがそれだけではない。丸いのは、五メートルほど垂直に飛び上がり、炎を噴きやがったのだ。
 セーラー戦士は炎弾を飛びのいてかわし、周囲にある一本の木を垂直に上りながら、さらにスピードをあげた。
 木とはいっても、大人が十人かかっても囲いきれるかわからない程の大樹。てっぺんなどまるで見えない。
 そんな大樹を駆け上がり、ジャパニーズ忍者も真っ青な身のこなしで、背後から狙い撃たれた炎を器用にかわしていくセーラー戦士。炎が途切れた瞬間を見極め、幹から踏み切ると、剣を構えたまま丸いのに襲いかかる。
 ドシリと重い体で地面を揺らし、着地した丸いのは、待ち構えるようにセーラー戦士に向けて口を開き、すぐさま炎を放った。
 瞬間、勝ちを確信していた丸いのの表情が、驚愕に染まった。
 彼の炎が炸裂さくれつするよりも速く、その眼前に魔法陣が三つ現れたのだ。
 その展開速度は、あまりにも圧倒的だった。

「!!」

 一つは水の魔法で、炎を相殺そうさいしている。
 残り二つの氷の魔法は丸いのに直撃。付近の地面ごと氷漬けにする。

「ふぅ。すごいタフだね、君」

 セーラー戦士は無傷で着地して、自分の髪を後ろへね上げながら丸いのに告げた。
 わずかな落下時間で行われた一連の動作には全く無駄がなく、呆然ぼうぜんとしてしまうくらいかっこよかった。

「なにあれかっこいい……今のってどうなってんの?」

 セーラー戦士の人間離れした動きの説明を、後ろにいるカワズさんに求めると、まるで解説者みたいに言った。

「肉体強化がかなり洗練されとるな。魔法の展開速度も速い。しかし、あそこまで魔法を使いこなすとは、よほど才能があるんじゃろうて」
「……さすがセーラー戦士、パないわ」

 ところが、優勢に思われたセーラー戦士の状況は、次の瞬間ひっくり返される。
 再び上空から別の黒いなにかが飛び出してきて、とんでもなく巨大な剣でセーラー戦士に斬りかかったのだ。
 木の上にひそんでいたらしいそいつは、フルプレートの鎧をまとい、二メートルはありそうな巨大な剣を両手に一本ずつたずさえて現れた。
 相当の重量だろうに、その重さをまるで感じさせない剣さばきもさることながら、着地の衝撃を見事に殺してみせたしなやかなバネと肉体の強靭きょうじんさは、常軌じょうきいっしている。加えて高度な技巧も持ち合わせているらしい。
 セーラー戦士は攻撃をかろうじてかわしたが、その間に氷が叩き割られ、丸いのが復活していた。あの一瞬で狙ってやったのだとしたら、大したものだ。
 これで二対一。
 セーラー戦士は、さっきまでと比べてかなり鋭い目つきになっている。カワズさんも戦況の悪さに眉をひそめていた。

「まずいのう。あの丸い奴もいるとなると……」
「……まずいかな?」
「どうするの? 助けないの?」

 トンボが心配そうにそわそわし始めたが、俺もどうすればいいものかと頭を悩ませる。

「うーん。相手はたぶんエルフのお仲間だし、手を出すのはよろしくないと思う。セーラー戦士がさっさと戻ってくれば、それで済む話なんだけど……」
「呼べばいいじゃん」

 当たり前の事をトンボは言うが、それもどうかと思うのだ。

「でもあれだろ? 勝つつもりで出ていったわけだし、邪魔するのはどうなんだろう? それに、彼女の強さがどの程度信頼出来るのか、見ておくチャンスかも?」
「うぇ。根性悪いよ、それ」
「いやいや、大事な事よ? セーラー戦士は俺達を助けようとしてくれているわけだし。だいたいあれにどうやって加勢するよ? 一分いちぶの隙もない、達人の攻防が繰り広げられているのにさ」
「……まぁ、それはそうだけど! もう! なんかやりようがあるでしょ!」

 興奮して癇癪かんしゃくを起こすトンボを見かねた俺は、用意しておいた隠し玉の存在をうっかり口にしてしまった。

「あー、実は手を打ってないわけじゃない」
「ほんとに? やるじゃんタロ!」
「む、いつの間にそんなものを?」

 トンボは驚いてくれたが、カワズさんは疑いの眼差しを向けてくる。
 俺のチキン具合を舐めてもらっては困るぜ。俺自身は元より、連れに対する守りもおこたってはいないのですよ。

「まぁ備えあればなんとかってやつ? 使わないで済む方がいいんだけどもさ」

 切り札と言ってもどれほど役に立つものか、ちょっぴり自信がなかったりもするんだが、この状況では使った方がいいだろう――。

「ふっ!!」

 剣戟けんげきを振るい戦っている彼らは、お互いに一歩も引かずに器用に立ち回っていた。
 騎士の大剣は太刀筋たちすじが読めず、その暴風のような攻撃は、革で作られた軽めの鎧を身に付けているセーラー戦士にとって、どこに当たっても致命傷になりそうだ。
 だがそれをセーラー戦士は巧みにかわしている。タイミングを計り、しまいには自分の真下を通りすぎる刃を足場にして後方へ跳んでみせた。
 セーラー戦士がバク転のようりょうで身をらし間合いが開くと、一転して二人とも動かなくなった。
 断続的な呼吸音が静かに響く。
 膠着こうちゃく状態を破ったのは、それまで補助に徹していた丸いのだった。
 モーニングスターを振りかぶり、セーラー戦士に殴り掛かる。

「チッ……!」

 巨体から繰り出される一撃を、舌打ちして避けたセーラー戦士がバランスを崩す。
 その時、よろけた彼女を狙って、なにかが飛んできた。

「ありゃいかん! わしがやる!」

 カワズさんが咄嗟とっさに風の魔法で軌道をそらそうとしたがそらしきれず、その一条の光はセーラー戦士の剣を貫いた。
 どこからかまっすぐ飛んできた光が、鋼で出来ている剣を撃ち砕いたのだ。

「なに今の! ビーム!?」
「違う、ありゃ弓矢じゃ! 雷の魔法をまとっておる!」
「まだ伏兵ふくへいがいたのかよ!」

 さすがに三対一ともなると黙って見ているわけにはいかない。
 続けて二度、俺の方にも矢が飛んできたが、結界に弾かれて目の前でパチパチと音を立てて落っこちた。
 ポトリと地面に落ちたそれは、確かに弓矢だ。

「あ、ほんとだ」
「そんなことより、やばいんじゃないの!」

 飛んできた矢に気をとられてしまったが、トンボの声で俺はハッと我に返る。

「そうだった! さっさと切り札を教えてやらないと!」
「早く!」
「おうとも! セーラー戦士! キーワード『剣の畑』!」

 俺は力いっぱい叫ぶ。

「け、剣の畑!?」

 俺の声が聞こえたものの、言葉の意味がわからないらしいセーラー戦士は、ただ素直に復唱しただけなのだが……。
 それでいい。
 ニヤリとする俺。
 キーワードは問題なく認識され、セーラー戦士の胸のあたりから強く青い光が放ち始めた。


      ◇◆◇◆◇


「なんなの、これ……」

 私はなにが起こっているのかわからずにいた。
 光の源は胸に下げたペンダントらしい。
 小さな石がはまったそれは太郎さんから貰ったもの。
 お守りだと言っていたのだけれど……というか、キーワードが必要なら最初から教えてくれないと意味ないじゃないか。
 そんな不満が一瞬で吹き飛んでしまうくらいに、ペンダントはとんでもない効力を発揮した。
 いつの間にかずらりと私の周囲の地面に突き刺さる十本の剣。
 そのすべてが、今まで感じた事がないくらい禍々まがまがしい妖気みたいなものをまとわりつかせて、突き立っていたのだ。
 これはやばい。そんな予感は、相手の方がより強く感じているらしい。

「……!」

 剣が現れた途端とたん、相手の騎士は丸い方を引き連れて、さらに距離を取ったのだ。
 恐る恐る目の前にある一本を手に取ってみる。
 そしてつかに手をかけた瞬間、まるで歓喜に震えるように剣が応えた気がした。

「なるほど……君の近くにいるっていうのは、こういうのを体験するって事なんだね」

 薄々わかっていたけど、正直あきれてしまう。
 全身に鳥肌が立った。

「これは……観光気分でいられるはずだよ」

 引き抜いた剣が紫電しでんをまき散らす。怖いくらい力が溢れているのが、一見してわかる。
 試しに一振りした瞬間、雷光が駆け抜け、樹木にぶつかる。響く轟音ごうおん。その驚くほどの破壊力に、私は身を震わせた。
 光が収まると、その樹木は丸まる一本、炭になっていた。
 あまりにも呆れた威力。相手にとってはさぞかし絶望的な光景だろう。
 だというのに、騎士に諦める気配はなかった。それどころか身をかがめ、私に向かって走り出すと、なにを思ったのか、片方の剣を思いっきり投げつけてきたのだ。
 雑な攻撃。
 悪あがきではあるが、大きくて分厚い剣は、無視するにはあまりにも脅威。
 私が回避に集中して一瞬目をらした隙に、騎士はすぐそばまできて、近くにあった魔剣の一本を掴むと、そのまま引き抜こうとした。
 これには少し焦ったが、心配は杞憂きゆうに終わる。
 騎士が剣に手をかけた瞬間、つかから炎が躍り出て、腕を焼こうとしたのだ。

「……!!」

 騎士は炎が到達する直前で手を放す事に成功したが、剣はどこかに放り投げられてしまった。
 だけど私には、その剣がどこに行ったのか手に取るようにわかる。

「……来い」

 なんとなく出来る気がして、戻って来いと命じると、剣は手繰たぐり寄せられるように足元に突き立った。
 どうやら剣からは見えない糸のようなものが伸びており、ペンダントを通じて私と繋がっているらしい。
 考えるだけで動いてくれる剣達は、まるで体の一部になったみたいだった。

「なるほどね。これの使い方……わかってきた!」

 まず、手近な剣を蹴り上げる。
 抜かれた剣は、空中でくるりと一回転しながらゆっくりと落ちてきて――。

「……いくよ!」

 剣の切っ先が敵に向いた瞬間。
 一蹴り。
 つかをそのまま蹴り飛ばすと、剣はうなりを上げて飛んでいく。
 蹴った勢いを使って回転し、続いて私は二本の剣を抜いて、立て続けに投げつけた。
 これで三本。
 剣は勢いを失う事なく使い手の意志を反映して、おのれの能力を十二分に発揮した。

「ぐっ!」

 再び距離を取っていた騎士は必死に避けようとしているようだが、それは無駄だろう。
 破壊という言葉がしっくりくるほど、たった三本の剣が圧倒的な力を見せつける。
 一本の剣からは真空波が巻き起こり、木々を荒々しく切断していく。
 さらにもう一本からは雷が降り注ぎ、地面を焦がす。最後の一本の剣が地面に突き立った瞬間、氷柱が発生し、周囲数十本の木々をまとめて氷漬けにしていた。

「すごい……これは負ける気がしないや。でも『剣の畑』って……もう少し気の利いた名前はなかったの、かな?」

 あまりの威力に、場違いな感想が口をつく。語尾が震えるのを隠しきれない。
 彼らに直撃させなかったのは正解だった。
 あの騎士も、さすがにすぐ動けないようで、ひざをついたまま微動だに出来ないでいる。

「……!!」

 動けない騎士に代わって、丸いのが捨て身で突っ込んできたのを私は冷静に観察出来た。
 志は買うが、心に余裕の出来た私にもはや隙はない。
 さらに一本、私は剣を引き抜く。思わず、苦笑してしまう。
 この人、ツイてないかも。
 剣を握ると、自分の周りだけ時間の進みが遅くなったんじゃないかと錯覚するほど、体が軽くなった。
 私は、迫りくるモーニングスターを相手のふところに潜りこんでかわしながら木製の柄を断ち切り、さらに鎧を切り裂いた。
 実際には、丸い奴が一回空振りする間の、ほんの短い時間の出来事だが、動きを加速する効果を持つこの剣にとっては、お釣りがくるくらいだ。
 そのまま丸いのの後ろに回り込み、後頭部に強烈な回し蹴りを叩き込む。
 完全にバランスを崩した丸いのは、自身の突進の勢いも加わって、あっという間に吹き飛んだ。


      ◇◆◇◆◇


「ふははははは! 見たか剣の畑! 直訳するとフィールドオブソード! ごめんなさい。今は反省している!」
「今日、タロのテンションおかしくない?」
「そうかの? いつもこんなもんじゃろ?」

 高笑いしてみたが、なんというか……ちょっとびっくりな威力だった。
 伝説の剣だとは聞いていたけど、まさかここまでとはね。

「……畑の柵のくせに。思ったよりすごいな」

 ボソリと呟くと、トンボが正体に気が付いたようである。

「あ、そうだよ! どっかで見た事あると思ったら、あれ畑の柵じゃん!」
「あんな物、いつの間に作っとったんじゃ?」

 カワズさんが不思議そうに聞いてくる。そんなの、出発の時に魔法でちゃっちゃと作ったに決まっているじゃないか。畑は裏庭にあるんだし。
 ようやく剣を使える人が出てきたんだから、使わなきゃもったいないだろ?
 そんな俺の思いつきで、剣達はその力を存分に発揮する事になったわけだが……張り切りすぎである。
 単に投擲とうてきされただけなのにこの威力。剣が通った跡には、残骸しか残ってないし。

「セーラー戦士も出歩く事はあるだろうなと思って……。女の子の一人歩きはいろいろ物騒ぶっそうだろ? 護身用のつもりだったんだけど……」
「やりすぎてしまったと。アホじゃの」
「護身用というか、居並ぶ兵隊まとめて蹴散けちらしそうな威力だよね」

 トンボの意見にはすごく同感だった。今更だけど。
 カワズさんは、むしろ仕組みに興味があるようだ。

「だが今回はええ仕事だったんじゃないかの? アレは呪文で操作出来るんじゃな?」
「そうそう、呪文っつーかキーワードね。『剣の畑』。ペンダントの持ち主を『あるじ』と認める仕様になってる」
「主ってなんじゃよ? どういう機能なんじゃ?」
「あんだけ沢山持ってきたんじゃ相手に剣を奪われちゃうかもしれないだろ? だから呪いを仕込んでみたんだけどさ」

 呪いとは、セーラー戦士の腕輪に仕込まれていたような奴だ。本来は相手を拘束するために用いられる。
 呪いの発動条件は「主」以外が剣に触れる事。つまりペンダントの所有者が呼び出して以降は、それ以外の者が触ると、そいつに呪いが降りかかるという仕組み。
 その効果は、剣自体が持っている魔法を敵に浴びせるたぐいの物で、炎の剣ならば炎が相手を襲う。これは心理的効果も狙っていた。
 うっかり無許可で使おうとすれば、あの騎士同様、剣に拒絶されたような気分を味わうハメになるだろう。

「なんというか……この間、あの腕輪をひどいもんだとか散々言っておいて、すぐさま流用するお前さんには驚きじゃな。ナイス外道」
「……外道でもなんでもいいけど、もうすぐ決着がつきそうだ。スタんばっとけよカワズさん。すぐ治療しなきゃならんのだから」

 俺の言葉に、カワズさんは表情を引き締める。
 さすがにこれだけ戦って無傷じゃすむまい。

「そうじゃの。簡単な傷ぐらいならわしがやるぞい」
「俺は死んでなきゃどうにかなりそうだから。負けた方は任せとけ」

 俺達は戦闘の終結を待つ。クライマックスを迎えたらしく、あの騎士がふらふらよろめきながらもどうにか立ち上がったところだった。

「あああああ!!」

 騎士は大剣を振りかぶり、雄叫おたけびを上げる。
 最後の力を振り絞ったのだろう、その一振りはいかにも威力がありそうだった。
 だが、セーラー戦士は迫りくる大剣をぎりぎりまで引きつけると、分厚い刃を剣で斬り割ったのだ。
 打ち合う事すら出来ずに叩き割られた剣を見て、騎士が驚愕しているのがわかる。
 回転して飛んでいった切っ先は、地面に深くめり込んでいた。
 武器を完全に破壊された騎士と、目を回している丸いの。
 勝負はこれで終了だな。
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