16 / 41
俺、慕われる
しおりを挟む初めて見た時から目が離せなかった。生きているのか?人形じゃないのか?そう思うほどに全てが整っていた。
言葉数は少ない、表情も乏しい。だが時折見せる嬉しそうな顔や悲しそうな顔に目が釘付けになる。名前を教えて欲しいと言われた時には、天にも登る気持ちだった。
ジンさんと遠慮がちに呼ぶカーラ様。あぁ…美しい。この世界の事が知りたいと教えを乞うてくる。騎士団の言葉に一番反応していたが…。あなたとは無縁の場所ですよ。獣人、男しか存在しないと知った時には心底悲しそうな表情をされていた…。
「騎士団に所属していると言っていましたが
…見学は出来ますか?今から…」
あんな野蛮な奴が多い場所に連れて行ったら…心配だ…。ダメですよ、危険ですよと、目で教えてあげる。
「二人とも強そう…です…剣を振るっている姿を…見てみたいです…カッコイイと…思います…」
くっ…こんな…こんな嬉しい事を…カッコイイ?カーラ様の口からカッコイイと…歓喜のあまりに震える。
だが、訓練場に向かうまでに団長に見つかってしまった…。最悪だー。案の定怒られる。拳骨の一発二発ぐらいは覚悟したが、カーラ様の行動に驚く。なんと俺達を身を呈して庇ったのだ!!信じられない…俺でさえ団長の強面は少し怖いのに…。美しく気高いカーラ様。短い間にこんなにも心惹かれるなんて…。
翌日、エレ様がカーラ様にお会いしたいと言うので部屋にお通しした…。俺達は外すようにと…仕方なしに部屋の外でクルトと共に待機する。そして…ニコ様の部屋で二度目の奇跡を目の当たりにする。もう…いつ亡くなられてもおかしくなかったニコ様が…回復なされたのだ。団長の事と言い…本当に神子様ではないのか?と疑問に思う。
そして、放たれた警告の言葉…。まさか全てを見通して…。だがこれ以上は教えられないとばかりに口を閉ざすカーラ様。
急いでシヴァ様に報告に向かう。事は急を要す。これは重大な王族に対する反逆罪だ。シヴァ様に事のあらましを説明し、今後の対応策を講じる。カーラ様あなたのお陰で、城内に蔓延る膿を絞り出せそうです。
カーラ様の元に戻る途中、まさかのご本人に出会った。おかしい…何故こんな所を走っている?それに涙の跡が…そっと指でなぞる。
「カーラ様…」
体が震えている。何かを訴えかける目。胸騒ぎがする。何があったんだ…。
「何故一人なんですか?クルトは?」
少し間が空きカーラ様が言った。
「今は…鬼ごっ…追いかけっこ!!そう、追いかけっこをしています!!離して…欲しいです…?」
そんな見え透いた嘘を…。何に怯えているんですか…。大丈夫です。俺が守ってあげます。カーラ様を抱き締めた腕に力を込めて伝える。
「泣きながら追いかけっこですか…」
会話を続けようとした時、
「カーラ様ー!!!!」
クルトの焦ったような叫び声が聞こえる。間違いなく何かあったな…後でクルトにじっくりと聞かせて貰おうか。
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣
最悪だッ!!どうしてこんな事に…。ベッドで横たわるカーラ様を見て、自分の不甲斐なさを痛感する。
神子様に何度も護衛の断りを入れていた。カーラ様も何か言われたらしく、護衛から外れても大丈夫、神子様を護衛しなくていいのかと、しきりに聞いてくる。俺はカーラ様をお守りしたいんです。
そして、ついに痺れを切らした神子様が行動に出た。神子としての務めを果たさないと…。シヴァ様に申し訳ないが、一日だけでいいからとお願いされ、クルトと共に護衛につく事になった。心配だ…。
カーラ様に笑顔で行ってらっしゃいと見送られる。嬉しいやら悲しいやら…複雑な気持ちだ。非常に後ろ髪を引かれる思いだが…神子様か…はぁ…。
「ジン様ー!!クルト様ー!!お会いしたかったです!!」
耳がキーンとなる程、甲高い声。煩い。この神子様は初めから俺達の名前を知っていた…何故だ?予知力か?
「どうして護衛を引き受けてくださらないんですかぁ?僕、寂しくて…。
この世界にいきなり召喚されて不安だし…」
上目遣いで抱きついてくる神子様。今すぐにでも腕を振りほどきたい…。
「すみませんが、俺はカーラ様の護衛なので」
「カーラ?あぁ、あのエルフか。でも神子は僕だよ?あの人はおまけでしょ?」
カーラ様の事を鼻で笑い馬鹿にする。今すぐこの場から去りたいが、今日一日だけだと、ぐっと堪える。その後も媚びをうる言葉に態度。勘弁してくれ。
そんな時、一人の従者が慌てて部屋に転がり込んできた。カーラ様が襲われたと…。血の気が引くとはこの事か。俺の足は部屋の外へと向かって、自然に駆け出していた。
28
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる