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俺、神。
しおりを挟む何回か顔を触り、傷跡を確かめ、隠れている者を見つめる。段々と目が慣れてきた。こんな事が…二人を押し分け、跪く。上手く言葉が出てこない。
「名前を聞かせてくれないか?俺は騎士団団長のイシスだ」
フードを外しながら目の前の者が話す。
「カーラです。召喚でこの世界に…」
あまりの美しさに目を奪われる。この世の者とは思えない顔の造形。開いた口が塞がらない。美しい…。召喚?そう言えば今日だったな…この方が?!
「まっ、まさか!!神子様とは!!知らなかったとはいえ、御無礼を。申し訳ありません」
非礼を詫びなくては!!
「いや…俺…神子じゃ…」
「神子様ではないと…?これだけの治癒魔法が使えるのに…」
顔を背け悲しそうなカーラ様…何故だ?何故その様な顔をしているのですか…?心が苦しい…。
「神子は黒目、黒髪だと…俺は違いますから…」
「しかし…」
悲しみを隠すように、カーラ様が話を変えた。
「目はどうですか?」
そうだ!!奇跡を起こして下さったのに!!
「私とした事がお礼も申し上げていないとは!!ありがとうございます。驚きです。もう二度と…以前の様に見る事が出来ないと思っていた世界が戻ってきました。感謝しきれません…」
あなたの為なら…どんな魔物からでも守ってみせます。
「良かったです。あと、敬語はちょっと…」
「しかし…」
「俺は神子ではないので…」
「しかし…」
こんな神の化身みたいなお方に…敬語を使わないなど…
「敬語は…イシスさんとの距離を遠く感じます…」
それは…それは…俺との距離を縮めたいと?この俺と?!そんなッ…そんな事…。あぁ…心まで美しい。あなたはまさしく神の化身だ。あなたの願いならば…こんな試練…
「ッ!!わっ、わかり…んんッ!わかった」
そして、試練に打ち勝った俺に微笑むカーラ様。あぁ…心が洗われる…。俺はやり遂げましたよ…。だが、俺に更なる試練を課すカーラ様…。名前を呼び捨てにだとッ!!あぁ、神よ、あなたは何処まで非情なのか。一人悶々と悩む…すると
「あの…騎士団の方々が訓練している姿を見たいのですが…」
との声が掛かる。訓練が見たくて来たのか…
「あっ、あぁ。勿論、許可する。こっちだ」
どうしてもカーラ…いやカーラ様を意識してしまって、動きがぎこちなくなってしまう…。訓練場に着き、ジンとクルトの剣技を見に来たのだと聞いた。羨ましい…。俺だって凄い剣技を持っている!!是非とも披露させていただきたい!!
しかし、それは嬉しい事で叶わなかった。なんと、なんと!!カーラ様が俺に質問を…それも、一つや二つじゃない!!いっぱいだ!!尽きる事のない質問攻め。俺が答える度にコロコロと変わる表情に目が釘付けになる。美しい上に、可愛さも兼ね備えているなんて…俺に臆することなく普通に接してくれる…。
今は真剣に皆の練習姿を見つめている。そんな横顔に見とれてしまう。こんな気持ち初めてだ…。
そうして迎えた次の日…昨日とは一変、俺はいつもよりも不機嫌に歩いていた。朝に来た神子様…ゆうのせいだ。名前を呼ぶ事さえ吐き気がする。
初めてあった開口一番が、アレ?酷い傷がないだ。誰から聞いたのかは知らんが、非常に失礼だ。その後も、媚びるような言葉を並べ、やけに過度なスキンシップを図ってくる。不愉快だった。これが本当に神子様なのか?カーラ様と同じ様に名前呼びを言われたが断る。親しくなどしたくない。
だが、卑怯な手を使ってきた。名前を呼んでくれないなら、神子としての務めを果たさないと…くっ、それは困る…。近くのシヴァ様も申し訳なさそうなジェスチャーをしてくる。はぁー。ゆうと呼ぶと嬉しそうに俺の腕に自分の腕を絡めてきた。正直ぶっ飛ばしたいが…我慢だ…。
やっとの事で、神子から解放された。カーラ様に会いたい。会って微笑みかけて欲しい…心を浄化して欲しい…。
そんな俺の思いは予期せぬ形で実現する事となった。
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