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俺、焦る
しおりを挟むひぇー噂をすればだよ!!相変わらず怖い顔!!涙も引っ込む怖さだわ!!いや、実際には引っ込まないけどね。垂れ流してるけどね。
「危ない。走ってはダメだ。何をそんッ…!!」
吹っ飛んだ体を抱き起こしてくれるイシスさん。しかし俺の顔をみた瞬間に言葉が詰まった。あっ、涙見られちゃった…。恥ずかし…。
「どうしたッ?!何をされたッ?!誰に何をされたんだッ?!」
ひぃ──────!!怖い怖い怖い怖いー!!涙腺崩壊しました…。涙が溢れ過ぎて目の前がボヤける…。顔が…顔が怖い。美丈夫が怒ると更に怖い。増し増しよ。イシスさんの抱きしめる力が強くなる。ぐふっ。更に涙が溢れてくる。今度は息も詰まり始める。
「はっ、はなじでぇ…ぐずっ」
「誰に何をされた。言え」
今泣いている原因は、あなたの顔が怖い事と、抱きしめる力が強すぎるせいかな?口が裂けても言えないが…。あっ、そうだ。神子様に近づくなって言われてた。
「イシスざん…おっ、俺に近付がなぃで…」
「…何故だ…なぜ…何故そんな事を言う?!」
ひぃー怒りが噴火しました!!俺だって別に普通に接したいよ!!でも、でも神子様がさッ!!
「みっ、みっ、神子様が…」
どうしよ…イベントとは言えないし…ハーレムエンドがとか説明出来ないし…。いい言葉が見つからず言い淀む。
「神子様?ゆうの事か?ゆうが何か言ったのか?」
「ゆぅ…?」
神子様の事…名前呼びしてるー?!しかも呼び捨てに。てっきりイベントが進まず八つ当たりされたのかと…なんだよ!!顔の傷治っても親密度上がってるじゃん!!余計にイラつくわ!!やっぱり俺、部外者やないかーい!!でも…フラグは立たせない事が大切。
「みっ、神子様にイシスさんとの関係を疑われました。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません!!これからはこの様な事が起きない様に、近づかない事を誓います」
謝る時は一気に畳み掛けるように!!俺の勢いに押されたのか、腕の拘束が緩む。今の内に!!するりと抜け、また当てもなく走り出す!!あばよ!!
ガシッ!!
なぬ──────?!今度はタイミング悪くジンさんに捕まってしまった…。何コレ?部外者の俺にゲームの強制力か何か働いてるんですか?せっかく…せっかく攻略対象者を一人遠ざける事に成功したのに…くぅー!!
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣
はぁ──────。今日もため息をつきながら、訓練場に向かって歩く。イーリアス国の騎士団長それが俺の肩書きだ。誰もが憧れ、敬い、慕う。そんなイメージだが、実際は違う。それは俺の顔のせいだ。
小さい頃から、強面で人が寄ってこなかった。仲が良かったのは幼馴染ぐらいだ。その幼馴染と共に騎士団に入団し、今や団長にまで上り詰めた。しかし、屈強な強者揃いの騎士団でも、おれの孤独は変わらない…。追い討ちをかけるように魔物討伐中に負った顔の傷…。俺が歩けば皆が逃げるまでになった…。
正直、訓練後に皆が集まって冗談を言い合う光景が羨ましい。仲間と集って飲みに行く事が羨ましい。俺も経験したい…。わかってるんだ。俺が行けば場が凍りつく。副団長の幼馴染だけは誘ってくれるが…俺はちゃんと弁えてる。
そんな事を考えながら歩いていると、クルトとジンの姿を見つけた。近づくとフードを被った怪しい奴と一緒だ。何を勝手な事を…声を掛け、苛立ちをぶつける様に注意する。
すると、俺より幾分も小さい奴が二人を庇った。無性に腹が立ち、冷たくあしらう。しかし、次の行動は俺を驚かせた。なんと、自分より大きい二人を身を呈して庇ったのだ。これには目を見張った。更に俺に手をかざし魔法を唱えた。一瞬の事に驚き反応が遅れる。何をした?!状態異常か?!攻撃か?!
だが、目を開き違和感を感じる。なっ…しっ、視界が…。どういう事だ?!久しぶりに感じる光が眩しくて、目を細めてしまう。くっ、眩しいな…その視線の先には、二人に隠れるように、此方の様子を伺う者がいた。
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