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寝落ちてしまったフィーリアは、一宿の恩を彼らに返す。
第7話 努力を見つけてくれる喜び(2)
しおりを挟む手には、肉の串がそれぞれ三本ずつ。二人合わせて六本の串焼きはいい焦げ色がついていて、炭火の香りが香ばしい。
外からの風に乗ってふんわりと鼻に届いた香りに人知れず食欲をそそられながら、出迎える。
「お帰りなさい、ご飯は買えました?」
「当たり前だ! 銀貨一枚で十分美味い飯が沢山――えっ」
「うっわぁー……」
部屋に入ってきた二人は、中を見るなり目を丸くして立ち止まった。
完全に表情まで一時停止したディーダと、思わずといった感じで苦笑したノイン。もしかして私、また何かやってしまっただろうか。
全く心当たりが無い。急に不安になってくる。
「少し掃除をしてみたのですが……」
掃除したのがまずかった? もしかして平民には、埃を同居人として愛する文化が? だとしたら私は、大切な同居人たちに何という事を……。
眉をハの字にしながら言うと、ノインが「いやまぁ」と苦笑を深める。
「この家って、こんなに綺麗だったんだなぁ」
「え。しかしまだ窓の掃除も残っていますし、キッチンだって手付かずです。玄関や外などのドア回りも、まだまだ綺麗にする余地があると思いますが」
「まだ明るくなるのかよ」
「僕も思った。この部屋、何だか明るくなったよね」
そうだろうかと思ったが、ふと手元の雑巾に目をやって少し納得した。
朝にはそれなりの白さを誇っていたソレが、もう真っ黒のくたびれた布になっている。
ちゃんと都度洗って綺麗にして使っていたのだけれど、それでも落ちなかった雑巾の汚れだ。雑巾を洗う水も、汚くなって何度も変えた。
たしかにそれだけの汚れを部屋から取り除いたという事になる。そう思うと、たしかに室内も随分と綺麗になったような気がしてきた。
じわじわと嬉しくなってくる。
自らの頑張りに気付いてくれた事が、何だかちょっとくすぐったい。どれだけ屋敷の中の事をやっても、ザイスドート様やマイゼルは全く気付いてくれなかったから猶更なのかもしれない。
一人思わず照れ笑いをすると、やっと再起動したらしいディーダがフンッとすかさず物申したげに鼻を鳴らした。
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