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SS:やっぱり愛してる
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「環さんにね、あちこちの観光地へ連れて行ってもらったの。大きな大仏とか、綺麗な神社とか美術館とかね。関西から出たことがあまりなかったから、本当に楽しかったわ」
尊と環を見送った後、凪は今日の出来事を章に報告した。
凪の前の同棲相手は、凪を徹底的に支配していた。同性の友人と遊びに行くことも許さず、社員旅行も欠席させる。凪はただ職場と狭いアパートを往復するだけの毎日を送ってきたのだ。そして、お金も時間さえも凪の自由にできなかった。
そんな彼女だから、章との生活には全く不満を持っていない。毎日大好きな章のためにご飯を作って、家事をして過ごす。自動車免許を取得できたので、シェアカーを借りてスーパーの特売回りもできる。安くていいものを見つけることができるととても嬉しい。そして、その食材で作った料理を章が美味しそうに食べるのを眺めていると、凪は本当に幸せだと感じていた。
しかし、本当に久しぶりに女性と出かけて、それも楽しいのだと凪は思った。
「ナンパとかされなかったか?」
章が心配そうに凪に訊いた。
「環さんは可愛いから心配したけど、全然大丈夫だったよ。高級車で乗り付けたからかも」
「違うよ。俺は凪が他の男に誘われたんじゃないかと心配しているんだ」
キッチンの方へと行こうとしていた凪は、驚いて章を振り返る。
「私は男の人から声をかけられたことなんてないよ。どちらかというと、女性からの方がモテるかも」
自分で言ったのに、凪は少し落ち込んでしまう。
「凪は綺麗だから。どんな女より美人だから。本当は他の男の目にさらしたくないぐらいだ」
凪はあまりにも無防備だと、章は心配になる。彼女は中性的ではあるが文句なしの美形だ。章と住み始めてからの凪は栄養が不足することもなく、ストレスも過労もない。皐月が度々エステサロンに誘っているからか、凪の肌は色艶も良く、匂い立つほど魅力的だと章は思っている。
「ありがとう。章がそう言ってくれるだけで嬉しい。でも、『亭主妬くほど女房モテもせず』って言葉通りだから、本当に心配しなくてもいいよ」
章の心配は頓珍漢だと思う凪はだが、そんな心配をしてくれる章が愛おしい。
「それは逆じゃないのか? でも、俺はモテるはずないから、本当に凪はそんな心配はいらないな」
「そんなことないよ! 章は優しくて頭が良くて、とっても勤勉だから。それに、背も高いし顔だって整っている。本当に最高の旦那様で、私なんかにもったいないのはわかっているから」
本来なら章は住む世界が違う人だと凪は思う。出会うはずのなかった人だ。
あの時章に出会わなかったら、自分はどうなっていたのだろうかと、凪はいつも考えてしまう。寂しさと不安で、あのアパートに再び戻ったのだろうか。それとも、生きることを諦めたのかもしれない。
いずれにせよ、今頃生きていなかったかもと凪は思ってしまう。本当に章は凪の命の恩人なのだ。
「俺は凪以外の女は駄目なんだ。俺には凪だけだ」
小柄で女性らしい体つきの環は本当に苦手だと章は思う。近づける気がしない。
「私も章だけだから」
凪だけだと言ってくれる章の全てが愛おしくて、彼女は彼が欲しくて仕方がない。
「お肉を焼くね。章の十代最後の日だから」
環が来るというので昼はひな祭りの料理にしてみたが、章の好きな肉類が少なかった。夜は皐月に買ってもらったステーキ肉を焼こうと凪は考えている。
「それは楽しみだな。それから、食後のデザートは凪だよな、十代最後だから」
「でも、明日の誕生日は?」
「明日は明日。今日は今日だから」
「わかった。部屋にベッドを運んでもらったんだよね。今日は部屋でしようか?」
「うん」
章は本当に嬉しそうに頷いた。その顔も可愛らしくて大好きだと凪は思う。
「凪、この部屋には何もないから、俺は凪を虐待しているって尊に言われたんだ。欲しいものがあったら、何でも言ってくれ。貯金はあるからな」
夕食を済ませて風呂に入った凪と章は、凪の部屋にやってきた。
机の上にある料理本以外、以前から何も増えていない部屋を見ながら、章は凪に何度も欲しいものを訊く。
「クローゼットの中には結構物が増えているのよ。ここの作り付けのクローゼットは二間分もあって、洋服をかけるところも棚もあるし、引き出しだってある。衣装ケースも置けるし、家具なんて本当に必要ないよね。テレビだって居間の大型スクリーンで視た方が迫力があるしね。それに、結婚までに貯めていたお金は章のものだよ。二人で必要なものはこれから一緒に買おうよ」
節約には自信がある凪だった。章の給料が上がっても今まで通り十万円で生活して、残りは貯金しようと凪は思っている。必要なものはそこから買えばいい。
「凪が要らない物を無理に買えとは言わないけど、欲しいものは我慢しないでくれ」
「わかった。でも、一番欲しいものは章だからね」
「俺もだ。一番欲しいのは凪だ」
以前使っていた手かせの表面が剥がれて見かけが悪くなったので、凪は皐月から貰った手かせを使うことにした。凪が新しい手かせを取り出すと章は少し呆れた顔をした。しかし、凪とのセックスへの期待で手かせのことなど気を配っていられない章は、拒否の言葉は発しない。
既に全裸になっている章に凪はゆっくりと近づいた。章をなるべく緊張させないように。
「大丈夫だから、章は私を傷つけたりしない」
章の手首に手かせをかけながら、凪は魔法の言葉を口にする、強張っていた章の体が少し弛緩した。
「ベッドへ横になって」
凪は章の胸を軽く押して移動させ、章を奥のベッドに寝かせた。それは凪の使っているベッドだ。
シーツは洗いたてのものがかけられているが、章は凪の匂いがすると感じる。それだけで、彼の陰茎が硬くなる。凪が与えてくれる快楽に思いを馳せ、章は凪の方を見た。
凪は章に見せつけるように服を脱いでいく。愛しい章を煽るように。十九歳の最後の夜をできうる限り楽しむために。
部屋はいつものリビングより明るい。一面がガラス張りのリビングより羞恥心を感じにくいらしく、凪は照明をそれほど落とさなかった。
そんな中で最後の下着を取り去った凪は、見事な全裸を章にさらした。もうそれだけで章は勃起している。
凪はベッドの乗り上げて、章にはめた手かせの鎖をヘッドボードの突起の引っ掛ける。
「もう我慢できないというように大きくなっているわね。でも、もっと楽しみたいのでしょう?」
大きくなっている章自身を凪がそっと撫でると、それはぴくっと動く。章は顔をしかめるが、それは思わぬ快楽のためだった。
愛しい章の体に手を這わず凪。その美しい若い肉体の凹凸を楽しむように、ゆっくりと手を動かしていく。
尊と環を見送った後、凪は今日の出来事を章に報告した。
凪の前の同棲相手は、凪を徹底的に支配していた。同性の友人と遊びに行くことも許さず、社員旅行も欠席させる。凪はただ職場と狭いアパートを往復するだけの毎日を送ってきたのだ。そして、お金も時間さえも凪の自由にできなかった。
そんな彼女だから、章との生活には全く不満を持っていない。毎日大好きな章のためにご飯を作って、家事をして過ごす。自動車免許を取得できたので、シェアカーを借りてスーパーの特売回りもできる。安くていいものを見つけることができるととても嬉しい。そして、その食材で作った料理を章が美味しそうに食べるのを眺めていると、凪は本当に幸せだと感じていた。
しかし、本当に久しぶりに女性と出かけて、それも楽しいのだと凪は思った。
「ナンパとかされなかったか?」
章が心配そうに凪に訊いた。
「環さんは可愛いから心配したけど、全然大丈夫だったよ。高級車で乗り付けたからかも」
「違うよ。俺は凪が他の男に誘われたんじゃないかと心配しているんだ」
キッチンの方へと行こうとしていた凪は、驚いて章を振り返る。
「私は男の人から声をかけられたことなんてないよ。どちらかというと、女性からの方がモテるかも」
自分で言ったのに、凪は少し落ち込んでしまう。
「凪は綺麗だから。どんな女より美人だから。本当は他の男の目にさらしたくないぐらいだ」
凪はあまりにも無防備だと、章は心配になる。彼女は中性的ではあるが文句なしの美形だ。章と住み始めてからの凪は栄養が不足することもなく、ストレスも過労もない。皐月が度々エステサロンに誘っているからか、凪の肌は色艶も良く、匂い立つほど魅力的だと章は思っている。
「ありがとう。章がそう言ってくれるだけで嬉しい。でも、『亭主妬くほど女房モテもせず』って言葉通りだから、本当に心配しなくてもいいよ」
章の心配は頓珍漢だと思う凪はだが、そんな心配をしてくれる章が愛おしい。
「それは逆じゃないのか? でも、俺はモテるはずないから、本当に凪はそんな心配はいらないな」
「そんなことないよ! 章は優しくて頭が良くて、とっても勤勉だから。それに、背も高いし顔だって整っている。本当に最高の旦那様で、私なんかにもったいないのはわかっているから」
本来なら章は住む世界が違う人だと凪は思う。出会うはずのなかった人だ。
あの時章に出会わなかったら、自分はどうなっていたのだろうかと、凪はいつも考えてしまう。寂しさと不安で、あのアパートに再び戻ったのだろうか。それとも、生きることを諦めたのかもしれない。
いずれにせよ、今頃生きていなかったかもと凪は思ってしまう。本当に章は凪の命の恩人なのだ。
「俺は凪以外の女は駄目なんだ。俺には凪だけだ」
小柄で女性らしい体つきの環は本当に苦手だと章は思う。近づける気がしない。
「私も章だけだから」
凪だけだと言ってくれる章の全てが愛おしくて、彼女は彼が欲しくて仕方がない。
「お肉を焼くね。章の十代最後の日だから」
環が来るというので昼はひな祭りの料理にしてみたが、章の好きな肉類が少なかった。夜は皐月に買ってもらったステーキ肉を焼こうと凪は考えている。
「それは楽しみだな。それから、食後のデザートは凪だよな、十代最後だから」
「でも、明日の誕生日は?」
「明日は明日。今日は今日だから」
「わかった。部屋にベッドを運んでもらったんだよね。今日は部屋でしようか?」
「うん」
章は本当に嬉しそうに頷いた。その顔も可愛らしくて大好きだと凪は思う。
「凪、この部屋には何もないから、俺は凪を虐待しているって尊に言われたんだ。欲しいものがあったら、何でも言ってくれ。貯金はあるからな」
夕食を済ませて風呂に入った凪と章は、凪の部屋にやってきた。
机の上にある料理本以外、以前から何も増えていない部屋を見ながら、章は凪に何度も欲しいものを訊く。
「クローゼットの中には結構物が増えているのよ。ここの作り付けのクローゼットは二間分もあって、洋服をかけるところも棚もあるし、引き出しだってある。衣装ケースも置けるし、家具なんて本当に必要ないよね。テレビだって居間の大型スクリーンで視た方が迫力があるしね。それに、結婚までに貯めていたお金は章のものだよ。二人で必要なものはこれから一緒に買おうよ」
節約には自信がある凪だった。章の給料が上がっても今まで通り十万円で生活して、残りは貯金しようと凪は思っている。必要なものはそこから買えばいい。
「凪が要らない物を無理に買えとは言わないけど、欲しいものは我慢しないでくれ」
「わかった。でも、一番欲しいものは章だからね」
「俺もだ。一番欲しいのは凪だ」
以前使っていた手かせの表面が剥がれて見かけが悪くなったので、凪は皐月から貰った手かせを使うことにした。凪が新しい手かせを取り出すと章は少し呆れた顔をした。しかし、凪とのセックスへの期待で手かせのことなど気を配っていられない章は、拒否の言葉は発しない。
既に全裸になっている章に凪はゆっくりと近づいた。章をなるべく緊張させないように。
「大丈夫だから、章は私を傷つけたりしない」
章の手首に手かせをかけながら、凪は魔法の言葉を口にする、強張っていた章の体が少し弛緩した。
「ベッドへ横になって」
凪は章の胸を軽く押して移動させ、章を奥のベッドに寝かせた。それは凪の使っているベッドだ。
シーツは洗いたてのものがかけられているが、章は凪の匂いがすると感じる。それだけで、彼の陰茎が硬くなる。凪が与えてくれる快楽に思いを馳せ、章は凪の方を見た。
凪は章に見せつけるように服を脱いでいく。愛しい章を煽るように。十九歳の最後の夜をできうる限り楽しむために。
部屋はいつものリビングより明るい。一面がガラス張りのリビングより羞恥心を感じにくいらしく、凪は照明をそれほど落とさなかった。
そんな中で最後の下着を取り去った凪は、見事な全裸を章にさらした。もうそれだけで章は勃起している。
凪はベッドの乗り上げて、章にはめた手かせの鎖をヘッドボードの突起の引っ掛ける。
「もう我慢できないというように大きくなっているわね。でも、もっと楽しみたいのでしょう?」
大きくなっている章自身を凪がそっと撫でると、それはぴくっと動く。章は顔をしかめるが、それは思わぬ快楽のためだった。
愛しい章の体に手を這わず凪。その美しい若い肉体の凹凸を楽しむように、ゆっくりと手を動かしていく。
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