詞詩集

鳥丸唯史(とりまるただし)

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蝶を追いかけた

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もうかえろう はやくかえろう
けれどもまだキミが なくしたものが
見つからない

朝霧の光の 輪まとう小鳥の
リンゴの花色づく 風の光の

黒紅くろべに染める なびく髪をすく
物狂ものぐるおしい 指甲套しこうとう螺鈿らでん
シロツメクサの七色の 蒼白の似合う頬のぬくもりの

朝露の甘き 在りし光の
魔近まちかいキミの涙 したたる花唇かしん

触れる指に高光る 蝶の翅脈しみゃく
七枝ななさやの命の 金鏤きんるの祈りの

夢のたえ

月がかげろう 蝶がかげろう
リンゴの飴しゃぶろう 水楼すいろうの白磁の

清酒の上の 回る花びらの
花脈かみゃくの冷たさの 命の光の

キミの失せ物
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