詞詩集

鳥丸唯史(とりまるただし)

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月は東に日は西に

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菜の花や、
月は東に惹きつけられていく

夕日隠れ 春暖の空
鮮やかさに息が詰まった
無視をしていた雲間に、目移りしてしまう

アア、時間は成長を促す
大人になったあかつき、どんな力が芽吹くという

菜の花や、
月は東に奪われた、鉄の幻
信じることもできずにいたというのに

おぼろかになる胸の内に
戸惑いすら覚えていく
のどが渇き脈打つ 菜種梅雨よ降れ

アア、行き場なんて……どこにもないと思う
名すら知らぬ色さえ、息吹いて散るだけでいい

菜の花や、
月は東の仮初めの、夢の幻
疑うことをしたら途絶えるだろうか

菜の花が咲いた頃には、お前は門出を迎えて
根づいてしまえばいいのに、青きままで

菜の花や、
月は東に行こうと、抗い続けたのに
自然の摂理というものに、敵わなくて

菜の花や、
月は東に惹きつけられて、光り始める
菜の花や、
日は西に導かれて、夜に抱かれながら
眠りにつくのさ
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