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46.人攫い

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 リンジェーラ達は、声をかけてきた彼のアトリエについて行った。着いた場所は見た感じは怪しくない普通のアトリエだ。中は広さだけは無駄にあった。


「ちょっと待っていてね。今持ってくるから」

 アトリエに入り、案内してきた彼は奥の部屋に入って行った。けれど出てきた時には彼は1人ではなく、複数の男性と出てきた。


「どうだ?上玉だろう」

「確かにな。今までと系統が違ってて、いいんじゃないか」

「そうだな。今までのは成熟しすぎてたからな」

「一から躾られる方がいいだろう」

「生娘もたまにはえらばないとな」


 部屋へ入ってきた男たちは、リンジェーラ達を値踏みするかのようにジロジロ見てくる。やはり、彼は人攫いの仲間で、強引にではなく、アトリエへ誘い出す役だったようだ。彼以外は人相がいかにも悪そうな顔をしていた。

「あんな言葉でつられるんだからな、簡単だったよ」


 正確には、つられたふりだ・・・。


「貴方達はいったいなんなの?」
 リンジェーラはとりあえず聞いてみた。


「知る必要はないな。お前達は今から売られるんだから」
 頭は弱いようだ。普通に言ってしまっている。言質はとった。

「つまりは人攫いって事ね。お間抜けなね」
 ディミドラは彼らを挑発するように言った。


「なんだと!」
 1人の男が食い付いてくる。


「だって、私達しばられてもないのに、それで捕まえた気になってるの?簡単に逃げられそうだけど」


「どうやら口が減らないお嬢ちゃんみたいだな。だがな、ここは外からしかドアは開かないようになっている。部屋の中にはドアノブがないだろ?だから、しばらなくても逃げられない。ましてやこの人数の男相手には、いつも女達は抵抗しても無駄と思って暴れやしなかったよ」
 彼らは卑下た笑いをしてきた。


 彼らが言ったのは抵抗できない、術を持たない人達の場合だ。2人には術があるためこのまま何もしないという選択肢はない。
 それに彼らは、今までも前科がある言い方をしていたのだ。


「私達に目をつけたのが・・・運のつきよ!」
 ディミドラは暗器を速攻で投げつけ、2人の足を潰した。暗器が足に刺さった奴らはのたうち回っている。

 ここにいるのは全部で5人。残りは3人になった。 


「こいつッ」
 1人が勢いよく向かって、一歩踏み出してきたが、リンジェーラがすかざず、スプレーを吹きかける。そのまま向かってきた勢いのまま床に倒れこみ、敵は寝息をたて始めた。

 リンジェーラ特製の催眠スプレーは強力でかなりの即効性だ。

 
 残りの2人は無駄に近づいては来ず、様子を伺っていた。
「お前達、ただの娘じゃないな・・・」


「さあ?肩書きならいくつかあるけど・・・聞く暇はないかもね」
 ディミドラは言い終わると、また別の暗器をなげつけて壁に男を叩きつけて気絶させ、吊し上げた。


「残るは・・・1人」
 ディミドラは普段の可愛らしい顔ではなく、戦うのが楽しいと言う表現で笑みを浮かべている。

 最後の1人は、逃げようとしたのか、内から開けられないはずの入り口の扉を背にしていた。だが、外が騒がしくなり、いきなりドアが叩き割られたように崩れるのだった。
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