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47.確信犯
しおりを挟むドアが叩き割られるように壊れ、現れたのは団長だった。かなりご機嫌が悪い凶悪な顔をしている。以前リンジェーラが睨まれた時以上だ。今その標的は、ドアの前に立っていた男になっていた。
リンジェーラは、あの破壊の仕方で瞬時に、団長である可能性に気づいた。
あんな風に破壊できるのは、リンジェーラが知る中で団長だけだろう。ゾディアス様もできるだろうが・・・彼はやらないだろうと思うので除外だ。
「お前・・・何をした」
団長は目の前の男を掴み上げて、凶悪な顔で睨みつけている。
「なっ何も・・・」
団長から逃げられるとでも思っているのだろうか・・・。答えはノーだ。直ぐに男は団長の視線だけで・・・気を失ってしまった。
団長は掴んでいた男を後ろに控えている部下に投げ渡すと、ディミドラに近づいて行った。
「怪我はなかったか?」
団長はディミドラに、先程の視線とは違う優しい視線を向けた。
「どう見ても大丈夫に決まっているでしょう」
ディミドラは呆れたように団長に返事をしている。
「こんな怪しい奴についていくとは、危険なのがわからないのか」
「怪しいから、わざとついて行ったに決まっているじゃない?わからないの?」
ディミドラは団長が相手になると喧嘩腰になるみたいだ。
「だから・・・なんでついていくんだ。怪しかったらついていくな。何かあったら危ないだろう」
団長は心配してディミドラに言っているのがわかる。
「だから、確かめようとしたんです。他で被害が出たら大変でしょう。私なら問題ありません」
ディミドラは引かないし、団長も引かない。ずっとこのままは困るのでリンジェーラは間に入る事にした。
「デラ、デラが戦えるのは団長も知っているわよ。それでも、団長は心配してくれているだけだから、お礼でも言ってもう行きましょう」
「・・・まあ、心配されるだけならいいですけど。わざわざありがとうございます。後はお任せしますから、それじゃ」
ディミドラは団長から離れようとしたが、団長はディミドラの手を引いた。
「待て・・・送って行く」
「送ってもらわなくていいです。まだ帰りませんから」
ディミドラは団長の手を振り解こうとした。
「そんな可愛らしい格好でこれ以上うろつくな・・・。部下からこうなった報告を聞いている。本当は部下達が今回の奴らを誘い出そうとしていたが、奴らは部下達より、お前達の方が目立っていたから声をかけたようだとな」
団長はもともと、今回の人達を捕まえる気でいたらしい。すでに部下も任務についていて、囮捜査をしていたのだとわかった。
だが、目をつけられたのは、部下ではなく自分達だったため問題になったのか・・・。団長は話を聞いて、焦って来たのがわかる。
「目立つのは当たり前です。だって私達けっこう可愛いですしね」
ディミドラはリンジェーラににっこり笑みを浮かべた。団長にも可愛いから仕方がない、不可抗力だと言うように、スカートをつまんで、首を傾げてみせた。
団長はぐうの音もでないようで、言葉を詰まらせている。団長の表情からは、ディミドラの仕草にやられている事は一目瞭然だ。ディミドラはわかってやっているのだろう、なんだか慣れているように見える・・・確信犯だ。
そして、ディミドラは団長の隙をついて、リンジェーラの手を掴み、その場を逃げるのだった。
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