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30話目 ステラ VS 七海(2)

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「拓真ッ!」

 俺に詰め寄ってくる七海。
 そして、俺の肩を掴むと前後に強く揺さぶってくる。

「ステラ! あまり、妹を焚きつけないでくれ」
「そんなこと、私の知った事ではありませんわ。そもそも妹ですよね? 妹が兄に対して恋情を抱くことこそ、そもそも間違いではありませんこと?」
「拓真と私は、血は繋がっていないもの! 他人だからっ!」
「――た、他人……」

 思わずショックを受ける。

「――ち、違うの! 拓真っ! えっと血は繋がってないからって! そうじゃなくて――。あー、もうっ! ねええ! 戻ってきてよ!」
「それは出来ない」
「どうして!」
「どうしても何も、叔父さんと叔母さんに、何て言えばいいんだ? 散々、世話になったんだから。もう少し、兄妹として生きてきたことを考慮に入れてくれ」
「絶対に嫌ッ!」
「本当に我儘な子ですね」

 ステラが、深く溜息をつく。
 そんなステラを見ながらも、俺はステラが静かにしておいてくれれば、ここまで七海が暴走する事はなかったのにと、心の中で思わす毒づく。

「貴女には言われたくないわ」

 七海が噛みつく。
 物理的ではなく言動的に。

「まったく、仕方ない人ね。好きな人に迷惑をかけるなんて」

 その発言、完全にブーメランだぞ? ステラ。
 まぁ、ステラが俺を本当に好きかどうかは分からないが。

「――と、とにかくだ! ステラは、隣に戻ってってくれ。これ以上、ややこしくなるとあれだから」
「……どうして?」
「――いや、だから……。こういうのは兄と妹で会話して解決するのが良いと――」
「それが出来ないから、彼女は旦那様を追いかけてきたのではなくて?」
「――うっ」

 あまりにも的を射た発言に俺は言葉に詰まるが――、ステラは立ち上がると流し台にティーカップを戻したあと、「それじゃ、また来るわね」と、ベランダから隣の部屋に戻っていく。

「え? え? え?」

 俺の部屋のベランダから出ていくステラの後ろ姿。
 それを見ていた七海と言えば困惑した表情。
 ステラが出ていき、しばらく固まっていた七海は、

「ど、どどどど、どういうことなの? 拓真!」
「どういうことと言われても――」
「どうして! あんな女が、拓真の部屋のベランダから出ていくのよ!」
「あんな女とか言うな。ステラって名前がある」
「ステラって……。どうして名前で呼ぶのよ! どうして……、どうして……」

 なんで、そんなに泣きそうな目で上目遣いに俺を見てくるんだ。

「拓真のことを旦那様って呼ぶのよ!」
「まぁ、それは色々とあって――」

 本当のことを言ったら社会的に死亡してしまうので、そのことを口にすることはできないし、説明もできない。

「そんなに私に言えないことなの?」
「……」

 無言になる俺。
 なんて説明していいのか分からないので、無言になるのは仕方ない。
 


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