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13話目 定時制と同じ?

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 教室に到着すると、机には空きが多く見られた。
 しばらくすると教師の神代先生が教室に入ってきて、檀上に立つと出席簿を取り出す。

「えー、本日は、二人以外は欠席になります。本日、出席している二人以外は、実家の仕事の手伝いということです」

 教室の席は全部で9席あるが、そこに座っているのは俺とステラさんだけ。
 つまり、俺とステラさん以外の学生は授業初日だというのに休みという事……なのか?」
 こんなこと普通ありえるのか?
 疑問が頭の中を通りぬけるが――、

「どうかしましたか? 星空君」

 態度に出ていたのだろう。
神代先生が、聞いてくる。

「い、いえ……。普通なんですか? こういうことって……」
「そうね。ここは、勝浦漁業組合とも密接な関係があるから、漁師の子供もたくさんいるの」
「そうなんですか」
「ええ。そして漁師と言えば舟の手伝いで来られない事も多いわ。その辺は定時制の高校と同じだと思ってくれて結構よ」
「なるほど……」

 どうやら、平日の高校ではあるが、漁業高校と言われているだけあって、色々と普通の高校とは趣は違うようだ。

「ちなみに! 車やバイクでの通学も可能よ?」
「それも定時制にはよくあるんですか?」
「あるわね」

 即答してくる神代先生に俺は思わずバイクや車の通学は可能なのかと感心した。
 朝のホームルームが終わったあとは、給食は高校の食堂で取ることになった。

「ねえ、星空君」

 4時限目の国語の授業が終わったあと、食堂に向かっているところで、横を歩いていたステラさんが話しかけてきた。

「何か?」
「ここって食堂には色々と料理があるそうよ? 入学式のパンフレットに書いてあったわ」
「そうなのか。それじゃ期待大だな」
「なんでも農林水産省御用達の業者さんが食堂を営業しているって書いてあったわ」

 俺は、随分とステラさんが情報を貪欲に仕入れていると感心しながら食堂に辿り着く。
 食堂は、学生食堂のように広い。
 100人は同時に食べられそうだ。
 さすが農林水産省と、文部科学省が頑張って建てた建物だけはある。
 
「ステラさんの言う通り、たくさんの種類の食券があるな……」
「そうでしょう?」

 満足そうに笑みを浮かべているステラさんの横顔を見ながら、俺はサンマ定食を選ぶ。
 金額は300円なり。
 安い!
 食券を持って職員が居る場所へと移動をしたところで、お盆を渡される。

「サンマ定食ね! ご飯は大盛りにするかい?」

 そう調理人が確認してくる。

「お願いします」
「あいよ!」

 1分も経過せずにサンマ定食が出てきた。
 定食を渡されたあとは、外の景色が見える窓際のテーブルに移動する。
 すると遅れてラーメンをお盆に載せたステラさんも俺の横に座った。

「す、ステラさん?」
「何?」
「どうして俺の横に?」
「別にいいじゃない」

 何の感情も読み取ることができない。
 ステラさんは箸を手にしたあと、器用に醤油ラーメンを食べ始めた。





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