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11話目 養父からのメール
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ステラさんが髪の毛を乾かしている間、俺はパソコンを起動しメールをチェックしたあと、改稿用の原稿をチェックしていく。
「あとは、出版社からの折り返しメール待ちか……」
書籍化出版まで、あと一カ月ほど。
校了までの期間を考えると、そんなに日数は残っていない。
「さて――」
メールボックスを閉じようとしたところで、一通のメールが届く。
「出版社からか?」
メールボックスを開くと、件名には『緊急』と、書かれていた。
「緊急? 仕事か? メールアドレスは……」
そこまで言いかけたところで、俺のマウスを動かす手は止まる。
「浩二さんから?」
――波風(なみかぜ)浩二(こうじ)。
俺の後見人であり、両親が亡くなった時に俺を引き取ってくれて育ててくれた恩人であり親戚。
少し考えたところで、俺はマウスを動かす。
「七海が、引き篭もった? どういうことだ?」
本文には、俺が一人暮らしを始めたあと、精神的に不安定になって引き篭もったと書いてあった。
何かあったという事は察することは出来るが、俺は義理の妹との関係がうまく構築できずに家を出て、この勝浦市に来たというのに。
「もう今更だよな……」
浩二さんには、恩もあるし義理もある。
だが、俺が戻ったところで何も変わらないだろうし、どうしようもない。
「何かあったんですか?」
メールの本分を見ていたところで、横からステラさんが話しかけてきた。
俺は慌ててメールボックスを閉じる。
「――い、いや。それよりも髪の毛は乾かし終わったのか?」
「はい!」
「そ、そうか……」
ジーッと俺を見てくるステラさん。
「な、なにか?」
「なんでもないです。それよりも、それってパソコンですよね?」
「そうだな」
「ぴかぴか光っているパソコンですね」
「ゲーミングパソコンって言うんだ」
「ゲーミング?」
「まぁ、普通のパソコンより性能が高いパソコンって思ってくれればいい」
「へー」
真横から話かけていたステラさんが、俺の後ろ側へと回ってくると、モニターへ視線を向けてきた。
「モニターが3枚もあるわね」
「仕事でも使っているからな」
「え? 星空君って、学生よね? 日本では、高校生でも仕事をするのが普通なの?」
「まぁ……」
流石にプロの小説家とは言えないのでお茶を濁す。
プロの小説家というのは、基本的にペンネームで仕事をしている。
なので、身内であったとしても身バレを防ぐために自分が小説家だということを伏せる作家もいるほどだ。
「へー、何の仕事をしているの?」
「企業秘密だ」
「ふーん。あっ! このパソコンなら、イングランドのお父様とお話とか出来る?」
「携帯でも出来るだろ」
「それはそうだけど……」
渋々と言った様子で引き下がるステラさん。
俺が、パソコンを他人に触れて欲しくないという鋼の意志が伝わったのかも知れない。
「えっと星空君」
「何だ?」
「トランプしない?」
「どうして、このご時世にトランプを……」
もうすぐ時刻は午後10時になろうとしていた。
「駄目?」
「分かった。一回だけな」
仕方なくステラさんのお願いをまた聞くことになった。
「あとは、出版社からの折り返しメール待ちか……」
書籍化出版まで、あと一カ月ほど。
校了までの期間を考えると、そんなに日数は残っていない。
「さて――」
メールボックスを閉じようとしたところで、一通のメールが届く。
「出版社からか?」
メールボックスを開くと、件名には『緊急』と、書かれていた。
「緊急? 仕事か? メールアドレスは……」
そこまで言いかけたところで、俺のマウスを動かす手は止まる。
「浩二さんから?」
――波風(なみかぜ)浩二(こうじ)。
俺の後見人であり、両親が亡くなった時に俺を引き取ってくれて育ててくれた恩人であり親戚。
少し考えたところで、俺はマウスを動かす。
「七海が、引き篭もった? どういうことだ?」
本文には、俺が一人暮らしを始めたあと、精神的に不安定になって引き篭もったと書いてあった。
何かあったという事は察することは出来るが、俺は義理の妹との関係がうまく構築できずに家を出て、この勝浦市に来たというのに。
「もう今更だよな……」
浩二さんには、恩もあるし義理もある。
だが、俺が戻ったところで何も変わらないだろうし、どうしようもない。
「何かあったんですか?」
メールの本分を見ていたところで、横からステラさんが話しかけてきた。
俺は慌ててメールボックスを閉じる。
「――い、いや。それよりも髪の毛は乾かし終わったのか?」
「はい!」
「そ、そうか……」
ジーッと俺を見てくるステラさん。
「な、なにか?」
「なんでもないです。それよりも、それってパソコンですよね?」
「そうだな」
「ぴかぴか光っているパソコンですね」
「ゲーミングパソコンって言うんだ」
「ゲーミング?」
「まぁ、普通のパソコンより性能が高いパソコンって思ってくれればいい」
「へー」
真横から話かけていたステラさんが、俺の後ろ側へと回ってくると、モニターへ視線を向けてきた。
「モニターが3枚もあるわね」
「仕事でも使っているからな」
「え? 星空君って、学生よね? 日本では、高校生でも仕事をするのが普通なの?」
「まぁ……」
流石にプロの小説家とは言えないのでお茶を濁す。
プロの小説家というのは、基本的にペンネームで仕事をしている。
なので、身内であったとしても身バレを防ぐために自分が小説家だということを伏せる作家もいるほどだ。
「へー、何の仕事をしているの?」
「企業秘密だ」
「ふーん。あっ! このパソコンなら、イングランドのお父様とお話とか出来る?」
「携帯でも出来るだろ」
「それはそうだけど……」
渋々と言った様子で引き下がるステラさん。
俺が、パソコンを他人に触れて欲しくないという鋼の意志が伝わったのかも知れない。
「えっと星空君」
「何だ?」
「トランプしない?」
「どうして、このご時世にトランプを……」
もうすぐ時刻は午後10時になろうとしていた。
「駄目?」
「分かった。一回だけな」
仕方なくステラさんのお願いをまた聞くことになった。
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