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15話 俺、何かやっちゃいましたか?

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 俺が投げた小石は、リッチの胸元の赤い水晶球に衝突し、粉々に砕け散る。
 途端に、リッチは周囲を見渡していたが、その姿は徐々に崩れ始めて、王都の方を見たあと、何か呟く素振りをしたあと爆散した。

「よし、これで安心して帰れるな」

 アイテムボックスに薬草を入れたまま、リッチの居た場所から少し離れたところを通り過ぎて俺は王都へと向かう。
 城壁が見えてきたところで、

「――お、おまえ! こんな時に、何で城壁の外に出ているんだ!」

 先ほど、出る時は何も言わなかった門番の兵士が怒鳴ってくる。

「――え? 何かありましたか?」
「な、何かあったって……、お前……、緊急を知らせる鐘を聞いていなかったのか?」
「ちょっと薬草採取に集中しすぎていて……」
「そうか……」

 兵士は、それだけ言うと俺をジロジロと見てきた後、

「そういえば、カズマ」
「何でしょうか?」

 俺の冒険者カードを王都外に出るときに見て名前を憶えていたのか。
 城壁の門をくぐる時に、俺の名前を呼んでくる。

「何か変なモノとか見なかったか?」
「とくには何も……」
「ならいい」

 まぁ、リッチなら見たが、それを言うと何故か面倒ごとに巻き込まれそうだったので黙っておくことにした。
 冒険者ギルドの建物に入れば、最初に冒険者ギルドに入った時に感じた喧騒が嘘のように無くなっており、完全武装した冒険者たちが、酒場の場所に座って、少し身なりのいい貴族風の奴から話しを聞いていた。

「ふむ」

 どうやら、俺が薬草採取を頑張っている間に、何かあったようだ。
 まぁ、新人冒険者の俺には関係のないことだな。
 
「ああっ! カズマさん!」

 冒険者ギルドの建物に入り、他の冒険者を見ていたら、最初に俺の受付をしてくれた女性が話しかけてきた。

「はい? カズマですが何かありましたか?」
「何かあったじゃないですよ! よく無事で帰って――」

 いや、普通の薬草採取なんだから無事に帰ってくるのは当たり前のことで。

「それにしても魔王軍四天王の一人、冥王アビスが攻めてきたのに、よく無事で――」
「……魔王軍?」
「はい。――でも、無事に戻って来られたということは遭遇しなかったのですね」
「それはどういう魔物なんですか?」

 少しだけ気になり問いただすことにした。

「アンデットの最上級に近いリッチという魔物です」
「あー」

 それなら大草原で見たわ。
 それで城壁の門番の人とか城壁入り口付近は何十人もの鎧を着込んだ騎士や兵士がいたのか。

「もしかして、何かご存じなのですか?」
「いえ。何も知らないですね」

 冒険者ギルドの面々の様子を見ても分かる。
 魔王軍襲来は、かなりの大イベントだったということが。
 それを解決したとバレたら俺のスローライフが脅かされてしまう。
 ただでさえ、王家に目をつけられているというのに。

「そうですか。それは良かったです。そういえば、カズマさん」
「はい?」
「今回は依頼は――」
「一応、終わりました」
「終わった?」
「はい。何か問題でも?」
「――いえ。冒険者初心者だと、薬草の判別がつくまで時間が掛かりますので、クエストの規定量を集めるのは、普通は難しいのです」

 そういえば、規定量は5個だと言っていたな。
 俺はアイテムボックスをチラリと見る。



【アイテムボックス】

 上級薬草X4892



 少し採取しすぎた気がする。
 ちょっと集中しすぎたな。



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