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第22話:新しい同居人

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 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
 お姫様マリエルと同居を開始。魔の森に実戦式の特訓にきた。

猫獣人の少女ミーケを助け、マリエルと三人でパーティーを組むになった。



魔の森での実戦稽古も終わり。
オレたち三人は、キタエルの街まで戻ってきた。

そのまま真っ直ぐ、マリエルの屋敷に向かう。

「マリエルお嬢様、お帰りなさいませ!」

「ハリト殿、お帰りです。ん? それは猫……ですか?」

屋敷の門番の剣士が見てきたのは、オレの胸に抱いている茶色の猫。

「そ、そうなんですよ。捨てられていたのを、マリエルが見つけて」

「そうですか。さすがはマリエルお嬢様。ご慈悲深いですな!」

「イザベーラ様も、稀代の猫好きなんの、きっと喜びますぞ!」

そんな感じで、門を無事に通過。
オレたちは屋敷の中に入る。

「あら、二人とも、鍛錬から帰宅したのですね?」

ちょうど玄関で、屋敷の主イザベーラさんに遭遇。
オレとマリエルの剣士修行に関して、彼女も後押してくれていた。

「あら? その猫ちゃんは、どうしたの?」

「叔母さま、実は街で……」

「あら、それは可哀想ね。この屋敷で飼っても構わないわ」

「ありがとうございます、叔母さま!」

こんな感じで、館の主の許可も得た。
オレたちはマリエルの寝室に向かう。

侍女たちに着替えをしてもらって、オレたち室内着になる。

マリエルは侍女たちと、先にお風呂に行った。
部屋に残ったオレは、茶色の猫と寝室で二人きりになる。

「えーと、ミーケ。聞こえているかな? 戻っても大丈夫だよ?」

そして連れてきた茶色の猫……猫獣人のミーケに合図をおくる。

『わかったニャン……『猫獣人……秘技……【変化へんげ】』ニャン!』

ボワン!

直後、凄いことが起こる。
小さな茶色の猫が、猫耳の少女に変身したのだ。

「す、すごい……本当に、また人型に戻れるんだね、ミーケは……」

魔法のような光景に、オレはミーケのことを凝視してしまう。

それにしても本当に凄い。
さっきまで本物の猫だったのに、今は人型。

ちょっと褐色の肌で、綺麗な手足。
腰や胸も、本当の女の子に……

「えっ⁉」

その時だった。
オレは気が付く。

人型に戻ったミーケが、全裸だったことに。
思わず手で、自分の目を覆い隠す。

「ん? どうしたニャン? ハリトたん? 顔が真っ赤ニャン?」

「い、いや、それは、ミーケが裸だから……胸とか下が……」

ミーケは凄い格好だった。

何故なら彼女は獣人の中でも、人に近い種族。

猫要素があるのは猫目、頭の猫耳、あとツルツルのお尻から伸びた尻尾だけ。

人族の女の子と同じで、全身には体毛は生えていない。

つまり無防備でやや褐色な裸の女の子が、オレの目の前に立っているのだ。
しかも仁王立ちで。

「裸? ミーは猫獣人だから、室内では基本は、この格好ニャン。それがどうしたニャン?」

「えっ……室内では……裸なの?」

「だって、猫が室内で、下着と服を着ていたら、変だと思わないニャンか?」

ミーケは自分の胸を、自信満々に叩く。
けっこう大きめな胸が、ぷるるん♪と揺れる。

「い、いや、猫はそうだけど、今のミーケは人型な訳で……というか。森では服を着ていたよね⁉ というか、あの剣と服は、どこに消えたの?」

「猫獣人は戦闘の時は、防御用に服を着るニャン。服と剣は、この【猫穴】収納しているニャン!」

ミーケは自分の身体に、下っ腹に手を突っ込む。
身体の表面に、異空間の穴が開く。

これは猫獣人の固有の能力なのだろうか。

異空間の小さな【猫穴】から、ミーケの服と剣を取り出す。

「す、すごい……そんな凄い能力があるんだね。猫獣人は……」

「これが使えるのは一族の中でも、ミーたち……王族だけニャン。あと、収納できるのも、ちょっとだけで、大きいのは無理ニャン。それに他人は、この【猫穴】に手を入れられないニャン。試してみて、ハリトにゃん?」

「あっ……本当だ……手どころか、指も入らないね。なるほど、こういう弱点もあるのか……って、ミーケって、王族……王女様だったの⁉」

「そうニャン。って言っても、今は滅んじゃってけどニャー。だから、気にしないでニャー」

「そ、そうか。まぁ、でも何となく。分かった」

色んなことがあり過ぎて、頭が混乱してきた。

ミーケの能力のことや、生い立ちについては、あとでマリエルにも話しておこう。

ガチャリ。

そんな時、寝室の扉が開く。

「ハリト様、お次は、お風呂をどうぞです……って⁉」

マリエルの動きが止まる。
そして、急に室内に一人で入り、すぐに鍵をかける。

「ハリト様……それにミーケさん。ここで何をしていたのですか?」

ゆっくりと振り向いてきたマリエル。

丁寧な口調だが、顔がちょっと怖い。

「あっ! そうだった……」

オレは我にかえる。
【猫穴】とミーケの王女の話で混乱して、すっかり忘れていた。

今のミーケは全裸、ここは寝室。

しかも、つい先ほどまでオレ二人きり。

マリエルが誤解するもの無理はない。

「えーと、マリエル……実は、これには深い訳があって、ミーケたち猫獣人は、その習慣があって、あと【猫穴】っていうので……」

「猫……穴ですか?」

「そうニャン! さっきハリトたんに、ミーの下半身の穴に、触ってもらったニャン! でも無理だっていったのに、ハリトニャンは強引に手を入れようとしてきたニャン!」

「えっ……ミーケさんの下半身の穴に……ハリト様が……強引に手を……?」

マリエルは完全に誤解している。

彼女の全身から剣気が……闘気は放たれていた。

顔もかなり怖い。

「えーと、マリエル……だから、それは誤解で、理由が……」

こうしてオレは正座。
マリエルに必死に弁明。

なんとかミーケの協力もあって、誤解を解くことが出来た。

「……なるほど、そうだったのですね。先ほどは、大変失礼いたしました。ハリト様!」

「いや、大丈夫だから。顔を上げてちょうだい、マリエル」

ふう……よかった。

なんとかマリエルの誤解を解くことに成功。
三人で寝室で、一息つく。

「でも、ミーケさんは、室内では裸の方が、良いのですよね? 今後はどうしましょう……」

「その辺は心配ないニャン、マリエルたん。ミーは里以外では、さっきの猫状態の方が、基本形態ニャン。だから戦闘以外では、ずっと猫の格好しているニャン!」

なるほど、そういうことだったのか。
猫獣人の戦闘能力は、人族よりも基本値が高い。

その分だけ消費する魔力が高いという。
だから戦闘以外では、常に猫状態で魔力を補充しているのだ。

「だから、この屋敷内では、ずっと猫の格好でいくニャン」

これで色んな問題が一気に解決した。
ミーケと一緒に暮らしても、屋敷の人にも気がつかれない。

食事やお風呂も、猫だから問題ない。
オレとマリエルがペットを飼っている感じだ。

「ふう……これでひと安心か……」

問題が解決したので、オレはお風呂にいく。

その後はマリエルと夕食。
猫に戻ったミーケは、テーブルの下で一緒に食べる。

あとは寝室に戻って就寝するだけ。

『ミーは、このベッドの端が、すきニャン。ここで寝るニャン』

ミーケはオレとマリエルの足元。
ベッドの足の方で寝ることになった。

シングルベッドだけど、猫型のミーケは小さい。
場所的は問題なかった。

魔道具の電気を消して、三人で練ることにした。

オレはいつものように、マリエルのすぐ隣に。

ネグリジェで肌の露出が多いマリエル。
肌同士があんまり付かないように、気を付けてベッドに入る。

あとは心を落ち着かせ、目をつぶって寝るだけだ。

『あっ、そういえば、ハリトにゃん。ミーの身体のことで、言い忘れていたことが、一つあったニャン』

「えっ、身体のことで?」

『そうニャン。戦闘以外にも、もう一個だけ、人型に戻る必要がある時ニャン!』

「人型に戻る必要な時? いつなの?」

『それは“交尾”の時ニャン! 猫獣人は交尾をする時は、どうしても人型に戻る必要があるニャン!』

えっ、交尾って……つまり人型だと……。

『あとハリトたんたち人族とも交尾は出来るニャン! 子供も産めるニャン!』

『そういえばマリエルたんとハリトたんは、これから交尾をするニャン?』

『猫獣人は、そういうのは気にしないから、子孫繁栄のために頑張ってニャン! じゃあ、おやすみニャン!』

――――なんか色々とすごい。

「…………」

「…………」

オレはマリエルと顔が真っ赤になってしまう。

そして、その夜は二人ともドキドキして、なかなか寝付けなかった。

一歩で猫型のミーケは、瞬時に爆睡していた。

『ミャー……ミャー……もう、食べられないニャー……ムニャ、ムニャ……』

こうして色々と危険な意味で危険なミーケと、オレたちの同居は始まるのであった。
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