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第23話:一人での修行

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 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
お姫様のマリエルと、猫獣人の少女ミーケ、三人で同居しながらパーティーを組むになった。



ミーケと出会ってから三週間ほど経つ。

「それじゃ、オレとマリエルは、学園に行ってくる。ミーケはおとなしくしておいてね」

『わかったニャー。頑張るニャン、ご両人!』

「何かあったら、ここの小窓を、お使いください、ミーケさん」

「わかったニャン!」

ミーケとの同居は順調な感じだった。
彼女は基本的にマリエルの寝室で、猫型で生活している。

用事があったら、猫だけが通れる小窓から、外に遊びにいく。
小窓はマリエルが執事に作らせたもの。

猫状態でもミーケは、自由気ままな生活を満喫していた。

お蔭でオレはマリエルと、安心して学園に通える。

「そういえば、ハリト様。次の週末も、魔の森に特訓にいきますか?」

「そうだね。ミーケとの連携も、かなり順調だし。また土曜日に行こうか?」

「そうですね。楽しみですね」

授業がない週末は、三人だけ魔の森に特訓に通っていた。

対人の稽古と、魔獣や魔物を狩る実戦式。
おかげでオレたちは、かなり実戦的な経験値を積んでいた。

「あっ、そういえば、今度の日曜日だけは、オレだけで、ちょっと特訓に行きたいんだ? いいかな、マリエル?」

「ハリト様、お一人で? もちろん、大丈夫ですが……何か、ありました?」

「いや、ちょっと、オレ技……我が家の一子相伝を、こっそり確認したいことがあってさ。あっ、森の奥には、行かないから、心配無用だからさ」

「なるほどです。それなら、私はミーケさんと屋敷で待っています」

「サンキュー。それじゃ、今日も授業を頑張っていこうか!」

「はい、そうですね、ハリト様!」

こんな感じで平日は、オレは剣士学園に真面目に通っていた。



そして、その週の日曜日になる。
予定通り、オレは一人で“魔の森”の入り口にやってきた。

目的は一子相伝の剣技……という名目の、オレの剣術技を確認するためだ。

「さて、改めて、色々と試してみるか……」

 森の入り口の巨木に向かって、オレは剣を抜く。

「まずは剣術技の最初の方から……ふう……」

剣を腰だめに構えて、精神を集中。
 剣術技の源である魔力を、全身の隅々まで行き渡せる。

「『春雷よ、敵を斬り裂け』……剣術技【第一階位】一の型、【雷斬ライ・ザン】!」

 巨木に向かって一気に踏み込む。
 剣術技を発動。
 
雷撃をまとった鋭い斬撃を繰り出す。

 ドッ、バターン!

 強烈な斬撃を受けて、巨木は倒れていく。

「よし、【雷斬ライ・ザン】は何とかマスターしたな……」

この剣術技は、マリエルから襲撃を受けた後日。
オレの脳裏に浮かんで、会得した技の一つ。

オレの中では基本的な斬撃タイプ。
威力もけっこうあり、魔物退治では重宝していた。

よし、次にいこう。

木の大きな破片を、オレは自分の頭上に放り投げる。

自由落下により危険な速度で、破片は襲ってきた。

「『空を舞い、切り替えせ』……剣術技【第一階位】二の型、【雷燕らいえん返し】!」

ザッ、ゴーーン!

頭上に落ちてきた、危険な木の塊。
オレはカウンター攻撃で、木っ端みじんに切り裂く。

「よし、こっちの新しい技も、なんとか大丈夫そうだな」

この【雷燕らいえん返し】も脳裏に浮かんでいた技。
ここ三週間の必死の鍛錬で、なんとか形にできるようなっていた。

系統的にはカウンターの剣術技。
タイミングがシビアだが成功したら、相手の攻撃を倍の威力で返せる。

よし、もう一つ、いってみよう。

次は無数の木の破片を、オレは自分の頭上に放り投げる。

先ほどと同じように、危険な威力で破片は襲ってきた。

「『流れる水のように、全て受け流せ』……剣術技【第一階位】三の型、【雷流らいりゅうの構え】!」

シャン! シャン! シャン!

頭上に落ちてきた、無数の危険な木の塊。
オレは剣術技で全て、受け流す。

身体には、傷一つ付いていない。

「よし、こっちも大丈夫そうな」

この【雷流らいりゅうの構え】も脳裏に浮かんでいた技。
ここ三週間の必死の鍛錬で、なんとか形にできるようなっていた。

こちらは受け流し系の剣術技。
相手に反撃はできないが、防御力はかなり高い。

よし、これで新しい剣術技は、だいたい確認できた。

あとは、メインの“アノ技”に挑戦する。

「ふう……」

剣を腰だめに構えて、精神を集中。
 剣術技の源である魔力を、全身の隅々まで行き渡せる。

よし、いくぞ。

「『迅雷よ、天を焦がし、大地を斬り裂け』 ……剣術技【第一階位】きわみの型……いくぞ……【雷光斬ライ・コウ・ザン】!」


……シーーーン……

だが今度は発動できなかった。

オレの声だけが、森の中に反響していく。
かなり虚しい。

「うーん、やっぱり、これだけは、上手く発動できないな……」

この技はオレが、最初に発動できた剣術技。
実戦でも何度か出してきた。

だが、こうした訓練の場では、一度の成功していないのだ。

「原因は……やっぱり、あれかな……“走馬灯そうまとうモード”に入ってないからかな?」

雷光斬ライ・コウ・ザン】を発動できた時は、いつも時間がゆっくり見える“走馬灯そうまとうモード”になっていた。

あっ……“走馬灯そうまとうモード”というのは、オレが勝ってに名付けたもの。

だから他の誰にも言っていない。

「そもそも、オレは何で、剣術技を会得できたんだろう……」

王都を出るまでオレは、必死になって剣術の修行に励んでいた。

だが才能がなく、初級の剣術技すら会得できずにいた。

だが学園に入学してから、急にオレは剣術の才能が花開てきた。
……ような気がするのだ。

「うーん、原因は、やっぱり、あの“十日間の気絶”していた時かな?」

キタエルの街に向かう道中、その山中ではオレは謎の記憶飛び。

そのすぐ後に、オレは馬車の王女様。
マリエルを救うために、第一回目の“走馬灯そうまとうモード”に入っていた。

「うーん、でも、あの十日間でしていたのは、夢を見ていたぐらいし……」

あの時は、オレは不思議な夢を見ていた。
起きた直後は、内容を覚えていたが、最近は何故かうっすらとしか覚えていない。

本当に不思議な夢だった。

「あと、この“雷系”というもの、謎だよな?」

カテリーナ先生に聞いたところ、雷系の剣術技はかなり希少なもの。
学園の生徒では他に誰もいない。

というか現存の剣士の中でも雷系は、存在しないらしい。

それ以外のことも詳しく先生に聞きたかった。

でもカテリーナ先生は凄く怪しい魔道具で、オレの身体を調べようと接近。
オレは逃げだしたので、今のところまだ聞いていない。

「とにかく【雷光斬ライ・コウ・ザン】は、なんとか会得したいな……今後のためにも」

この極みの剣術技の威力は、普通ではない。
上位魔獣ですら、一撃で葬り去ることが可能。

そのため学園の対人戦で使う機会はない。

「でも、この世の中には……もっと凄い剣士がいるからな……よし! 絶対に頑張るぞ!」

オレの目標は一人前の剣士になること。
そのためには妥協は不要。

今まで以上に鍛錬に励んでいくしかない。

「よし、そのためには、“走馬灯そうまとうモード”を自由に発動できるとうにしよう!」

今までは自分に危機が迫った時にしか、発動できなった。
だから成長のために、自由自在に発動できることが必須。

「マリエル……嘘ついて、ごめんね。でも、必ず戻るから」

オレは魔の森の奥に進んでいく。

目的は強大な魔物と魔獣と戦い、“走馬灯そうまとうモード”を発動させること。

そして自分のモノにすることだ。

「よし……いくぞ!」

こうしてオレは毎週日曜、一人での危険な特訓をすることになった。



森の奥での特訓は、かなり危険だった。

何度も命を落としそうになった。

オレは毎週のように、ボロボロになって屋敷に帰還。

でもマリエルはいつも優しく、オレのことを治療してくれた。

きっと気が付いていたはず。
オレが無茶をしていることを。

でも彼女は毎回、優しくオレを送りだしてくれた。
本当に有り難い存在。

だからオレもどんな困難でも、最後まで諦めなかった。

『絶対に一人前の剣士になる!』その想いが胸に、過酷な特訓に挑んでいった。


――――そして単独での特訓を毎週続けて、二月が経つ。



オレはついに“走馬灯そうまとうモード”、その第一段階に踏み込んでいた。

目の前の巨大な蛇の魔獣がいた。

赤大蛇……前回のよりも更に大きく、危険な個体だ。

「いくぞ……【走馬灯そうまとうモード・壱の段】発動!」

直後、巨大な赤大蛇の動きが、ゆっくり見える。

「よし、いまだ! 『春雷よ、敵を斬り裂け! より乱れて』……剣術技【第一階位】一の型・改……【雷斬ライ・ザン・乱舞《らんぶ》】!」

そして時は動き出す。

ザン! ザン! ザン! ザン! ザン! ザン! ザン!

連撃式の【雷斬ライ・ザン】をくらい、赤大蛇は絶命する。

「ふう……なんとか、最初の段階だけど、【走馬灯そうまとうモード】を会得できたぞ……よし、戻るとするか」

こうしてオレは自分の意思で、新たな段階に進むことに成功したのだ。
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