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シーズン1-クロトザク戦線
032-愚者の選択
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アコライトとアローが離脱した直後、艦載機は行き場を失いその場を通過した。
だがすぐに、その編隊の一部で爆炎が上がる。
遠距離からカノープスが艦載機を撃墜しているのだ。
『皇女様、各編隊の隊長が指示を求めてきています!』
「黙れ! 空母の指揮官に一任せよ!」
『はっ!』
皇女は顔に青筋を浮かべていた。
怒っているのだ。
国民の眼前で、皇国の精鋭たる騎士団を破られたのだ。
いくら多対一とはいえ、最強の戦艦であるアールケンがこうも容易く撃破されるなど、在ってはならない事なのだ。
それはつまり、大型艦艇とぶつかった場合押し負けるのは皇国軍側なのだと言っているようなものなのだから。
「決して逃すな! 我が騎士団は、北風のような猛攻と、反り立つ山脈のような防御を持っているのだ!」
『はっ!!』
まさか逆らうわけにもいかず、戦闘は続行される。
だが、皇女は気付いていない。
既に戦闘の主導権は、シンに握られていることに。
「動いたか、艦載機を全方位に展開して、こちらに攻撃する隙を与えないつもりだな」
『どうされますか?』
シンは少し思案し、次の作戦を指示する。
「カノープス、全艦タレットをオーバークロックさせ、発射速度を強化しろ。艦載機を撃滅後、急速修理モードへ移行!」
『了解』
広範囲に展開したことで、戦闘機隊は防御力を失った。
そのうえ、指揮系統が混乱していることで待機していたのがあだになり、カノープス艦隊のレーザーの雨に襲われ――――
『た、隊長! どうすれば――――』
『し、死にたくない!!』
たった数秒で、その三分の一が撃墜される事となった。
それだけではなく、「次は自分も」と思った者たちが恐怖に陥り、指揮系統と通信が混乱し始めたのだ。
大きく統率を乱した艦載機の群れを見て、皇女は机から身を乗り出し、シンは目を細めた。
「何をやっている!! 皇室騎士団の誇りを忘れたか! 形成を立て直せ!」
「カノープス隊は一度ワープで離脱。アコライトとアローは互いにタッグを組んでそれぞれバラバラに一撃離脱を繰り返せ!」
艦船同士がタッグを組み、バラバラにワープイン・ワープアウトを繰り返す。
人間であれば不可能な連携に、皇室軍は見事に翻弄された。
艦載機はカノープスが戦線を離脱したにもかかわらず、ランダムな地点にワープを繰り返すアコライト・アロー艦隊に対処できず、右往左往するばかりであった。
「皇女様、儂にお任せください」
「....よい、任せよう」
しかし、皇国軍もやられるばかりではなかった。
指揮権の一部を、押しやられていた将軍が掌握したことで、艦載機はアコライトにダメージを与えることができるようになっていた。
しかし、そのたびに手痛い反撃を受け、ロスは少しずつ拡大していたが。
『こちらレラック! 機関部に被弾、戦闘続行は不可能!』
『同じく、こちらレラック! 第二甲板に被弾、艦載機の収容が困難! 至急救援を!』
『こちらアールケン、第一、第二艦橋がやられた!』
皇女のいる会議室には、味方の情けない悲鳴のような声ばかりが響く。
そしてそれは、悲劇的な事に、国中にそれは配信されていた。
皇室騎士団の名誉はたった今、地に墜ちたのだ。
「まあ、おおかた名誉だメンツだと、そういうものを重視しているんだろうな」
『国家運営とは、大変なんですね....』
もはやすっかり穏やかムードになったシンは、おやつ代わりに非常食を齧りながら戦況を観察していた。
『残存艦、残り一隻』
「待て! 全部は破壊するな、少しだけ希望を残して撤退させる」
『わかりました、全艦”安置3”まで後退します』
そして、皇室騎士団の艦隊が全滅しかかったタイミングで、艦隊は鮮やかな転進と共にワープし、そして皇都に静寂が戻った。
「探せ! 探すのだ! 探して破壊する以外――――」
「落ち着いてください、皇女様。我等にはあれのワープを追跡する手段がないのです」
「わかっておるわ!」
皇女は大きく息を吐き出して、冷静さを取り戻そうとする。
だが、冷静さはいつまで経っても戻ってこなかった。
皇室の鼻っ柱を叩き折り、民衆に一抹の不安を抱かせたこの事件は、後に「鈍色の空」
事件として知られるようになるのであった。
だがすぐに、その編隊の一部で爆炎が上がる。
遠距離からカノープスが艦載機を撃墜しているのだ。
『皇女様、各編隊の隊長が指示を求めてきています!』
「黙れ! 空母の指揮官に一任せよ!」
『はっ!』
皇女は顔に青筋を浮かべていた。
怒っているのだ。
国民の眼前で、皇国の精鋭たる騎士団を破られたのだ。
いくら多対一とはいえ、最強の戦艦であるアールケンがこうも容易く撃破されるなど、在ってはならない事なのだ。
それはつまり、大型艦艇とぶつかった場合押し負けるのは皇国軍側なのだと言っているようなものなのだから。
「決して逃すな! 我が騎士団は、北風のような猛攻と、反り立つ山脈のような防御を持っているのだ!」
『はっ!!』
まさか逆らうわけにもいかず、戦闘は続行される。
だが、皇女は気付いていない。
既に戦闘の主導権は、シンに握られていることに。
「動いたか、艦載機を全方位に展開して、こちらに攻撃する隙を与えないつもりだな」
『どうされますか?』
シンは少し思案し、次の作戦を指示する。
「カノープス、全艦タレットをオーバークロックさせ、発射速度を強化しろ。艦載機を撃滅後、急速修理モードへ移行!」
『了解』
広範囲に展開したことで、戦闘機隊は防御力を失った。
そのうえ、指揮系統が混乱していることで待機していたのがあだになり、カノープス艦隊のレーザーの雨に襲われ――――
『た、隊長! どうすれば――――』
『し、死にたくない!!』
たった数秒で、その三分の一が撃墜される事となった。
それだけではなく、「次は自分も」と思った者たちが恐怖に陥り、指揮系統と通信が混乱し始めたのだ。
大きく統率を乱した艦載機の群れを見て、皇女は机から身を乗り出し、シンは目を細めた。
「何をやっている!! 皇室騎士団の誇りを忘れたか! 形成を立て直せ!」
「カノープス隊は一度ワープで離脱。アコライトとアローは互いにタッグを組んでそれぞれバラバラに一撃離脱を繰り返せ!」
艦船同士がタッグを組み、バラバラにワープイン・ワープアウトを繰り返す。
人間であれば不可能な連携に、皇室軍は見事に翻弄された。
艦載機はカノープスが戦線を離脱したにもかかわらず、ランダムな地点にワープを繰り返すアコライト・アロー艦隊に対処できず、右往左往するばかりであった。
「皇女様、儂にお任せください」
「....よい、任せよう」
しかし、皇国軍もやられるばかりではなかった。
指揮権の一部を、押しやられていた将軍が掌握したことで、艦載機はアコライトにダメージを与えることができるようになっていた。
しかし、そのたびに手痛い反撃を受け、ロスは少しずつ拡大していたが。
『こちらレラック! 機関部に被弾、戦闘続行は不可能!』
『同じく、こちらレラック! 第二甲板に被弾、艦載機の収容が困難! 至急救援を!』
『こちらアールケン、第一、第二艦橋がやられた!』
皇女のいる会議室には、味方の情けない悲鳴のような声ばかりが響く。
そしてそれは、悲劇的な事に、国中にそれは配信されていた。
皇室騎士団の名誉はたった今、地に墜ちたのだ。
「まあ、おおかた名誉だメンツだと、そういうものを重視しているんだろうな」
『国家運営とは、大変なんですね....』
もはやすっかり穏やかムードになったシンは、おやつ代わりに非常食を齧りながら戦況を観察していた。
『残存艦、残り一隻』
「待て! 全部は破壊するな、少しだけ希望を残して撤退させる」
『わかりました、全艦”安置3”まで後退します』
そして、皇室騎士団の艦隊が全滅しかかったタイミングで、艦隊は鮮やかな転進と共にワープし、そして皇都に静寂が戻った。
「探せ! 探すのだ! 探して破壊する以外――――」
「落ち着いてください、皇女様。我等にはあれのワープを追跡する手段がないのです」
「わかっておるわ!」
皇女は大きく息を吐き出して、冷静さを取り戻そうとする。
だが、冷静さはいつまで経っても戻ってこなかった。
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