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「ファリシアは、どうなった」

一番に気になる事だ。
先見でも、婚約破棄を言い渡した後のファリシアのその後は消息不明だった。

ファリシアを退け、その後新たに迎えた婚約者を妃にし、幸せな家族を持つ未来は見たことはあったが。

その妃の顔は思い出せない。
子供にも恵まれて、安定した国を維持できていたような気はする。

「…ファリシア様はご結婚されて幸せに暮らしております」

「嘘だっ!」

カッとなったリーゲネスは、再び置物を掴んで床に叩きつけた。

対になっていたその割れた二つの木彫りの置物は、リーゲネスの婚姻祝いで送られた物だった。
有名な作家の一点物だと頭の片隅で思い出すが、怒りが勝ってそれどころではない。

「…お子様にも恵まれて、幸せそうであると報告がありました」

「嘘だ嘘だ!そんなはずないんだ!」

ファリシアがリーゲネスを裏切って他の男と子を作るなんて、想像だけでおかしくなりそうだった。



キャスリンは唇を噛む。

こんな、駄々っ子のように喚き散らすリーゲネスなど見たことはなかった。
十年以上前に、キャスリンに協力を求めたときも、彼はもう少しまともだった気がした。

我が子でもこのような駄々をこねる時期は終えているのに。

リーゲネスが王太子だった頃、ファリシアが表舞台から姿を消し、キャスリンが婚約者に選ばれから十年。

彼は穏やかでかつ厳しい立派な王たる人間になっていた。

十年前の彼はこんなにも、幼かったのだろうか。
成人はしていたはずなのに、と思う。

こんな事なら、…戻らなければよかったと、キャスリンは心の底から思っていた。

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