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三
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「ファリシアは、どうなった」
一番に気になる事だ。
先見でも、婚約破棄を言い渡した後のファリシアのその後は消息不明だった。
ファリシアを退け、その後新たに迎えた婚約者を妃にし、幸せな家族を持つ未来は見たことはあったが。
その妃の顔は思い出せない。
子供にも恵まれて、安定した国を維持できていたような気はする。
「…ファリシア様はご結婚されて幸せに暮らしております」
「嘘だっ!」
カッとなったリーゲネスは、再び置物を掴んで床に叩きつけた。
対になっていたその割れた二つの木彫りの置物は、リーゲネスの婚姻祝いで送られた物だった。
有名な作家の一点物だと頭の片隅で思い出すが、怒りが勝ってそれどころではない。
「…お子様にも恵まれて、幸せそうであると報告がありました」
「嘘だ嘘だ!そんなはずないんだ!」
ファリシアがリーゲネスを裏切って他の男と子を作るなんて、想像だけでおかしくなりそうだった。
キャスリンは唇を噛む。
こんな、駄々っ子のように喚き散らすリーゲネスなど見たことはなかった。
十年以上前に、キャスリンに協力を求めたときも、彼はもう少しまともだった気がした。
我が子でもこのような駄々をこねる時期は終えているのに。
リーゲネスが王太子だった頃、ファリシアが表舞台から姿を消し、キャスリンが婚約者に選ばれから十年。
彼は穏やかでかつ厳しい立派な王たる人間になっていた。
十年前の彼はこんなにも、幼かったのだろうか。
成人はしていたはずなのに、と思う。
こんな事なら、…戻らなければよかったと、キャスリンは心の底から思っていた。
一番に気になる事だ。
先見でも、婚約破棄を言い渡した後のファリシアのその後は消息不明だった。
ファリシアを退け、その後新たに迎えた婚約者を妃にし、幸せな家族を持つ未来は見たことはあったが。
その妃の顔は思い出せない。
子供にも恵まれて、安定した国を維持できていたような気はする。
「…ファリシア様はご結婚されて幸せに暮らしております」
「嘘だっ!」
カッとなったリーゲネスは、再び置物を掴んで床に叩きつけた。
対になっていたその割れた二つの木彫りの置物は、リーゲネスの婚姻祝いで送られた物だった。
有名な作家の一点物だと頭の片隅で思い出すが、怒りが勝ってそれどころではない。
「…お子様にも恵まれて、幸せそうであると報告がありました」
「嘘だ嘘だ!そんなはずないんだ!」
ファリシアがリーゲネスを裏切って他の男と子を作るなんて、想像だけでおかしくなりそうだった。
キャスリンは唇を噛む。
こんな、駄々っ子のように喚き散らすリーゲネスなど見たことはなかった。
十年以上前に、キャスリンに協力を求めたときも、彼はもう少しまともだった気がした。
我が子でもこのような駄々をこねる時期は終えているのに。
リーゲネスが王太子だった頃、ファリシアが表舞台から姿を消し、キャスリンが婚約者に選ばれから十年。
彼は穏やかでかつ厳しい立派な王たる人間になっていた。
十年前の彼はこんなにも、幼かったのだろうか。
成人はしていたはずなのに、と思う。
こんな事なら、…戻らなければよかったと、キャスリンは心の底から思っていた。
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