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始まり
これから‥
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零時丁度
ボーーーンボーーンボーーン・・・
零時の鐘が鳴る古時計。現世と常世が交わる場所がある。それがこの洋館だった。1人の男がいた。中年の男は黒い着物を着ていた。男に似合う闇に溶け込む様なその姿は見るものが見れば、幽鬼の様に映るだろう。
その男が指を唇にあて唱えると、
リーーーーーーン
リーーーーーーン
リーーーーーーン
鈴の様な音が鳴り響いた。空間が歪んだと思ったら、そこから今までそこに居なかった者達が現れる。
「遅かったな。」
「申し訳ありません。」
「どうだった?」
100年は経つであろう洋館にある古時計の下、その場にずっといた男と今し方現れた2人の男。初めに口を開いたのは、ずっと其処にいた男だった。それに対して答えたのは、先程現れたそして魑魅魍魎の屋敷にいた茨木だった。男は茨木に聞いた。
「試験とはいえ、貴方は息子を殺すつもりですか?!」
先程の屋敷で見たモノノ怪の数は、並の数ではなかった。茨木は思い出しただけでも眉間に皺を寄せ額から汗が出る。
これが本当の事件ならば、茨木も五体満足でいられただろうか。そう思う程の数であった。
「そうか‥。それを見て、家の倅は伸びてしまったのだな‥。」
何とも情けない。そんな顔をしながら、伸びて目を覚さない森谷を眺める中年の男は、森谷の父で名を雄三という。今回は、依頼ではなく、森谷家の跡取りである睦月が何処までの能力を秘めているのかを知る試験であった。だが、その試験は本人は知らされていない。知られるわけにはいかなかった。睦月の能力を測る為であり、跡取りが代々続けている試験である。
妻も知らない試験であるから、この事がバレてしまうと子煩悩な妻に離縁を言い渡されるであろう事を覚悟で行った。
「つまらんな‥。」
本当に残念そうに雄三は、睦月を一瞥した。茨木は、溜息を吐きそうになった。
そんな茨木の腕の中には睦月が目を回し眠っている。
「お前も知っている通り、これから奴が目醒める年になる。」
「‥やはり文献の通りになりますか‥。」
奴とは、戦国時代に現れた怨霊だ。その当時は大した事が無く、当時の先祖が調伏しようとした。
傷だらけで斃れる寸前だった怨霊を助けた者達がいた。
その者達は、怨霊が生前共に暮らした者達だった。
怨霊は、助けられたがその者達を取り込んで力を経た。
大怨霊になった者を、今度は倒す事が出来ず辛うじて封印する事はできた。だが、その時に多くの同胞を亡くし、また封印した先祖が大怨霊の呪詛を浴びた。
その呪詛は呪いとなり、先祖達を苦しめ今に至る。
その呪詛は、身体が腐り死んでも動くゾンビの様になる事から、大怨霊の分身かの様だった。
そして、先祖は予め目覚めるだろう年を子孫達に書いて託した。
雄三は、その大怨霊が目覚める日が来るという。
ある日の事だ。
仲間が怨霊に殺された。そんなに直ぐに死ぬ様な弱い者ではなかった。
仲間は文献に書かれていた様にゾンビの様に死しても動き、そしてこう言った。
「もうそろそろで×××様が目を覚ます。くく、お前らの血を肉をもう一度我らの一部にしてくれようぞ‥。くくくっ!」
そうして急に動かなくなった。
直ぐに炎の術でもってして肉体を焼いた。
そうでもしなければ、また動き出して仲間を襲うからだ。
とてもでは無いが後味は悪いし、良い弔いをさせてやれない。
その死んだ者の家族に灰になった者を届けに行った。
家族は静かに受け取って一度もこちらを見なかった。
大怨霊はいつ目覚めるとは言わなかった。だがもう直ぐだといった。
文献に書いてある年も近付いてきていた。だからこそ此方も備えなければならない。
幸にして秘密兵器が此方にはある。だが、秘密兵器が目覚める様になるのかは微妙な賭けだった。
「目覚める気ねーな‥コイツは‥。」
雄三の息子は潜在的にはかなりの能力を秘めている。それは一族の中でもかなりのものだ。能力により大怨霊と戦った男はまだ生きている。不死では無いが不老の力を手に入れたからだ。その男が云うには一族きっての能力者だといった。
男も大怨霊との戦いの為に能力を上げて、迎え撃とうとしている。
「アイツを救えるのは俺だから。」
親友だったそうだ。
だからこそ、今度はちゃんと救ってやりたいと願う。
そう、男の先祖がそう云うのだから雄三も息子を目覚めさせないといけなかった。
(先が思いやられるな‥。)
まさか気絶するとは思わなかった。
ボーーーンボーーンボーーン・・・
零時の鐘が鳴る古時計。現世と常世が交わる場所がある。それがこの洋館だった。1人の男がいた。中年の男は黒い着物を着ていた。男に似合う闇に溶け込む様なその姿は見るものが見れば、幽鬼の様に映るだろう。
その男が指を唇にあて唱えると、
リーーーーーーン
リーーーーーーン
リーーーーーーン
鈴の様な音が鳴り響いた。空間が歪んだと思ったら、そこから今までそこに居なかった者達が現れる。
「遅かったな。」
「申し訳ありません。」
「どうだった?」
100年は経つであろう洋館にある古時計の下、その場にずっといた男と今し方現れた2人の男。初めに口を開いたのは、ずっと其処にいた男だった。それに対して答えたのは、先程現れたそして魑魅魍魎の屋敷にいた茨木だった。男は茨木に聞いた。
「試験とはいえ、貴方は息子を殺すつもりですか?!」
先程の屋敷で見たモノノ怪の数は、並の数ではなかった。茨木は思い出しただけでも眉間に皺を寄せ額から汗が出る。
これが本当の事件ならば、茨木も五体満足でいられただろうか。そう思う程の数であった。
「そうか‥。それを見て、家の倅は伸びてしまったのだな‥。」
何とも情けない。そんな顔をしながら、伸びて目を覚さない森谷を眺める中年の男は、森谷の父で名を雄三という。今回は、依頼ではなく、森谷家の跡取りである睦月が何処までの能力を秘めているのかを知る試験であった。だが、その試験は本人は知らされていない。知られるわけにはいかなかった。睦月の能力を測る為であり、跡取りが代々続けている試験である。
妻も知らない試験であるから、この事がバレてしまうと子煩悩な妻に離縁を言い渡されるであろう事を覚悟で行った。
「つまらんな‥。」
本当に残念そうに雄三は、睦月を一瞥した。茨木は、溜息を吐きそうになった。
そんな茨木の腕の中には睦月が目を回し眠っている。
「お前も知っている通り、これから奴が目醒める年になる。」
「‥やはり文献の通りになりますか‥。」
奴とは、戦国時代に現れた怨霊だ。その当時は大した事が無く、当時の先祖が調伏しようとした。
傷だらけで斃れる寸前だった怨霊を助けた者達がいた。
その者達は、怨霊が生前共に暮らした者達だった。
怨霊は、助けられたがその者達を取り込んで力を経た。
大怨霊になった者を、今度は倒す事が出来ず辛うじて封印する事はできた。だが、その時に多くの同胞を亡くし、また封印した先祖が大怨霊の呪詛を浴びた。
その呪詛は呪いとなり、先祖達を苦しめ今に至る。
その呪詛は、身体が腐り死んでも動くゾンビの様になる事から、大怨霊の分身かの様だった。
そして、先祖は予め目覚めるだろう年を子孫達に書いて託した。
雄三は、その大怨霊が目覚める日が来るという。
ある日の事だ。
仲間が怨霊に殺された。そんなに直ぐに死ぬ様な弱い者ではなかった。
仲間は文献に書かれていた様にゾンビの様に死しても動き、そしてこう言った。
「もうそろそろで×××様が目を覚ます。くく、お前らの血を肉をもう一度我らの一部にしてくれようぞ‥。くくくっ!」
そうして急に動かなくなった。
直ぐに炎の術でもってして肉体を焼いた。
そうでもしなければ、また動き出して仲間を襲うからだ。
とてもでは無いが後味は悪いし、良い弔いをさせてやれない。
その死んだ者の家族に灰になった者を届けに行った。
家族は静かに受け取って一度もこちらを見なかった。
大怨霊はいつ目覚めるとは言わなかった。だがもう直ぐだといった。
文献に書いてある年も近付いてきていた。だからこそ此方も備えなければならない。
幸にして秘密兵器が此方にはある。だが、秘密兵器が目覚める様になるのかは微妙な賭けだった。
「目覚める気ねーな‥コイツは‥。」
雄三の息子は潜在的にはかなりの能力を秘めている。それは一族の中でもかなりのものだ。能力により大怨霊と戦った男はまだ生きている。不死では無いが不老の力を手に入れたからだ。その男が云うには一族きっての能力者だといった。
男も大怨霊との戦いの為に能力を上げて、迎え撃とうとしている。
「アイツを救えるのは俺だから。」
親友だったそうだ。
だからこそ、今度はちゃんと救ってやりたいと願う。
そう、男の先祖がそう云うのだから雄三も息子を目覚めさせないといけなかった。
(先が思いやられるな‥。)
まさか気絶するとは思わなかった。
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