溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

文字の大きさ
323 / 473
義心の先にあるもの

323

しおりを挟む
「フロドゥール国はどうだった?」

 皇帝ファヴィリエ・ルカに尋ねられて、リリィは持っていたナイフを置いて顔を上げた。

 離宮“百合の宮”のキッチンからは美味しそうな香りが漂っていた。

 クツクツと湯気立つ鍋からは真っ白なシチューの姿が窺える。

 1つ1つのポットに注ぐと生地を丁寧に乗せて飾り付けをした。
 表面を溶き卵でコーティングすると熱したオーブンの中に入れていく。

 今日は、パイシチューと呼ぶそれを楽しみに皆が集まってくる。

 秘密の扉を利用して一足先にやってきたファヴィリエ・ルカにリリィは何てない顔で答えた。

「別に特別な感情はないわ。
 あるとすればドラゴニルスの男への嫌悪感ね。
 他国の手前、我慢したけれど、やっぱり無理やりにでも引っ捕まえてくれば良かったかもと思ってるくらいよ。」

 顔を顰めたリリィにファヴィリエ・ルカは苦笑した。

「それで良いよ。
 無理な事をすれば、向こうから無理難題を押し付けられる要因になってしまうじゃないか。
 それでなくとも、龍の姫巫女様が城の側面に作った大穴の補修代は、こちらが出す事になるんだよ?
 普通に扉から出てくる事は出来なかったの?」

 ファヴィリエ・ルカの言葉が至極真っ当と理解しつつもリリィはニッコリと笑った。

「だって、そっちの方がカッコ良いじゃない。」

ブホゥッ!

 庭の池が大きく波立っているのは、寝そべっていた青龍・スイテンがリリィの言葉に吹き出したからだろう。
 耳の良い彼らはリリィのどんな声も聞こえている。

「うちの城は壊さないでよ。
 修理費だって帝国民の国税から出てるんだからね。」

「はーい。」

 可笑しな会話にファヴィリエ・ルカは堪えられずに笑ってしまった。
 一通り笑い終えるとファヴィリエ・ルカはテーブルに置かれたクッキーを数枚取ると1枚を涎が垂れている白銀の龍・ルーチェに渡し、一枚を自分の肩で催促している緑龍・ジンに、続けて目を瞑っていた赤龍・カシャの口に差し込み、もう一枚を庭の池に向かって放り投げた。

 青龍・スイテンが器用にキャッチするのを見届けると自分も一枚食べ始める。

「実際問題。
 やって来るかな。
 フロドゥール国の王様は・・・。」

 呟くファヴィリエ・ルカにリリィは肩を竦めた。

「さぁね。
 一応、煽っておいたけど重い腰を上げるかどうかは分からないわ。
 たしか、あの人って、即位してから一回も国を出た事ないんでしょ?
 引き篭もりにも程があるわよ。」

 それにはファヴィリエ・ルカも困ったように笑った。

「まぁ、ロンサンティエ帝国とは色々あったし、来たって生産性のない話しか出来ない愚かな皇帝に会いに来てもね。
 私はレイド・フロドゥールの気持ちを理解するよ。」

 先代達の所業を許す事のないファヴィリエ・ルカにリリィが肩をするめ「まぁね。」と返事した時だった。

「おーぃ。
 レイド・フロドゥールが来るぞ。」

 と言いながらディミトリオ・ハクヤがリビングダイニングに入ってきたのだった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

今さら「間違いだった」? ごめんなさい、私、もう王子妃なんですけど

有賀冬馬
恋愛
「貴族にふさわしくない」そう言って、私を蔑み婚約を破棄した騎士様。 私はただの商人の娘だから、仕方ないと諦めていたのに。 偶然出会った隣国の王子は、私をありのまま愛してくれた。 そして私は、彼の妃に――。 やがて戦争で窮地に陥り、助けを求めてきた騎士様の国。 外交の場に現れた私の姿に、彼は絶句する。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

処理中です...