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ロンサンティエ帝国の明暗
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王都・ロンティエの街は多くの人が姿を見せていた。
看板を掲げる店に気軽に買い物ができる露店。
その中をディミトリオ・ハクヤとリリィを乗せた馬車はゆっくりと進んで行く。
「賑わってますね。」
何気に呟いたクレイの声が聞こえ、リリィは口元を緩めた。
「見た目はね。」
「・・・ど言う事でしょう?」
リリィの棘のある声にクレイは警戒した様に辺りを見渡した。
「人は沢山いるけれど、よく見れば実際に買い物をしている人はいないわ。」
その通りであった。
店や露店は覗いていても、実際に財布から金を出す客は少ない。
賑やかさの中にも何処か虚ろな目をしている露天商も見受けられる。
「それに、路地を見なさい。」
リリィの言葉に釣られるようにクレイが路地に目をやると、汚れ擦り切れた服を着た子供達が痩せほそった姿で蹲っているのが見えた。
中には松葉杖代わりの木枝にしがみつく子供もいる。
「分かったかい。
この国はハリボテなのさ。」
ディミトリオ・ハクヤが眉間に皺を寄せるとリリィは嫌味なくらいに鼻を鳴らして笑った。
「そのハリボテとやらも、いつまで持つのかしらね。」
「だから、君の力が必要なのさ。」
「人々を支えるのは貴方達、皇室や貴族の役目でしょう。
私が出来るのは精々、宝樹に龍気を満たすだけよ。
あっ。
王宮を混乱させるの忘れてたわ。」
「クククッ。
その両方が重要なんだよ。
龍気を完全に失えば、この帝国は崩壊する。
そして、今の帝国を財政面で苦労させているのは貴族であり、皇帝であり後宮にいる女達なんだ。」
「あら。
私、少しは役に立てそうね。」
「そうだね。
頼りにしてるよ。」
その時だった。
「あー。
真っ白な蛇さん。」
可愛らしい少女の声が聞こえた。
「あれは貴族様の馬車よっ!
駄目よ。やめなさい。
申し訳ございません。
申し訳ございません。」
その母親が馬車を指差す少女を必死に隠し、何度も頭を下げている。
リリィの首に巻き付いていたルーチェが不機嫌そうに鼻を鳴らすとリリィは優しく微笑み、その美しい体を撫でた。
「お嬢さん。
この子は蛇じゃなくて龍ですよ。」
ギョッとする母親の後ろから少女が顔を出し不思議そうに目をパチパチとさせた。
「龍?
私、知ってる!
御伽噺に出てくるよね。
お姉さん、龍さんと友達なの?」
物おじしない少女に比べて大人達の方が訝しがり、また怖がっている。
「えぇそうよ。
私、龍と友達なの。」
リリィが手のひらを広げ光の玉を出すとルーチェが息を吹きかけた。
すると、真っ白な百合の花が辺り一面に飛んでいく。
「わぁぁぁ。
キレイ!!」
跳ねて喜ぶ少女の周囲では大人達が惚けるように空を見上げている。
「お嬢さん。
御伽話ではなくて龍はいるのよ。
この国の人に龍が愛されると私も嬉しいわ。」
美しい百合の花が舞う中を馬車がゆっくりと去って行く。
「・・・龍の姫巫女様。」
ベンチに座っていた老人がポツリと呟いた。
「龍の姫巫女様?」
惚ける大人達の中で唯一聞こえた言葉に少女が振り返ると老人が涙を流しながら拝んでいた。
「そうじゃ。
龍の姫巫女様がお帰りなさったのじゃ。」
何故、泣いているの?
そんな少女の疑問を置き去りに大人達は龍を連れた娘に心を奪われいた。
「あれ?オイラの足が痛くない。」
松葉杖をついていた孤児の少年が不思議そうに自分の足を見つめた。
「ワシの腰も痛くないぞ。」
「あら、辛かった咳がとまったわね。」
街の騒ぎはたちまち王宮に伝わる事となる。
看板を掲げる店に気軽に買い物ができる露店。
その中をディミトリオ・ハクヤとリリィを乗せた馬車はゆっくりと進んで行く。
「賑わってますね。」
何気に呟いたクレイの声が聞こえ、リリィは口元を緩めた。
「見た目はね。」
「・・・ど言う事でしょう?」
リリィの棘のある声にクレイは警戒した様に辺りを見渡した。
「人は沢山いるけれど、よく見れば実際に買い物をしている人はいないわ。」
その通りであった。
店や露店は覗いていても、実際に財布から金を出す客は少ない。
賑やかさの中にも何処か虚ろな目をしている露天商も見受けられる。
「それに、路地を見なさい。」
リリィの言葉に釣られるようにクレイが路地に目をやると、汚れ擦り切れた服を着た子供達が痩せほそった姿で蹲っているのが見えた。
中には松葉杖代わりの木枝にしがみつく子供もいる。
「分かったかい。
この国はハリボテなのさ。」
ディミトリオ・ハクヤが眉間に皺を寄せるとリリィは嫌味なくらいに鼻を鳴らして笑った。
「そのハリボテとやらも、いつまで持つのかしらね。」
「だから、君の力が必要なのさ。」
「人々を支えるのは貴方達、皇室や貴族の役目でしょう。
私が出来るのは精々、宝樹に龍気を満たすだけよ。
あっ。
王宮を混乱させるの忘れてたわ。」
「クククッ。
その両方が重要なんだよ。
龍気を完全に失えば、この帝国は崩壊する。
そして、今の帝国を財政面で苦労させているのは貴族であり、皇帝であり後宮にいる女達なんだ。」
「あら。
私、少しは役に立てそうね。」
「そうだね。
頼りにしてるよ。」
その時だった。
「あー。
真っ白な蛇さん。」
可愛らしい少女の声が聞こえた。
「あれは貴族様の馬車よっ!
駄目よ。やめなさい。
申し訳ございません。
申し訳ございません。」
その母親が馬車を指差す少女を必死に隠し、何度も頭を下げている。
リリィの首に巻き付いていたルーチェが不機嫌そうに鼻を鳴らすとリリィは優しく微笑み、その美しい体を撫でた。
「お嬢さん。
この子は蛇じゃなくて龍ですよ。」
ギョッとする母親の後ろから少女が顔を出し不思議そうに目をパチパチとさせた。
「龍?
私、知ってる!
御伽噺に出てくるよね。
お姉さん、龍さんと友達なの?」
物おじしない少女に比べて大人達の方が訝しがり、また怖がっている。
「えぇそうよ。
私、龍と友達なの。」
リリィが手のひらを広げ光の玉を出すとルーチェが息を吹きかけた。
すると、真っ白な百合の花が辺り一面に飛んでいく。
「わぁぁぁ。
キレイ!!」
跳ねて喜ぶ少女の周囲では大人達が惚けるように空を見上げている。
「お嬢さん。
御伽話ではなくて龍はいるのよ。
この国の人に龍が愛されると私も嬉しいわ。」
美しい百合の花が舞う中を馬車がゆっくりと去って行く。
「・・・龍の姫巫女様。」
ベンチに座っていた老人がポツリと呟いた。
「龍の姫巫女様?」
惚ける大人達の中で唯一聞こえた言葉に少女が振り返ると老人が涙を流しながら拝んでいた。
「そうじゃ。
龍の姫巫女様がお帰りなさったのじゃ。」
何故、泣いているの?
そんな少女の疑問を置き去りに大人達は龍を連れた娘に心を奪われいた。
「あれ?オイラの足が痛くない。」
松葉杖をついていた孤児の少年が不思議そうに自分の足を見つめた。
「ワシの腰も痛くないぞ。」
「あら、辛かった咳がとまったわね。」
街の騒ぎはたちまち王宮に伝わる事となる。
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