溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

文字の大きさ
47 / 473
ロンサンティエ帝国の明暗

46

しおりを挟む
 王都・ロンティエの街は多くの人が姿を見せていた。
 看板を掲げる店に気軽に買い物ができる露店。

 その中をディミトリオ・ハクヤとリリィを乗せた馬車はゆっくりと進んで行く。 

「賑わってますね。」

 何気に呟いたクレイの声が聞こえ、リリィは口元を緩めた。

「見た目はね。」

「・・・ど言う事でしょう?」

 リリィの棘のある声にクレイは警戒した様に辺りを見渡した。

「人は沢山いるけれど、よく見れば実際に買い物をしている人はいないわ。」

 その通りであった。
 店や露店は覗いていても、実際に財布から金を出す客は少ない。
 賑やかさの中にも何処か虚ろな目をしている露天商も見受けられる。 

「それに、路地を見なさい。」

 リリィの言葉に釣られるようにクレイが路地に目をやると、汚れ擦り切れた服を着た子供達が痩せほそった姿で蹲っているのが見えた。
 中には松葉杖代わりの木枝にしがみつく子供もいる。

「分かったかい。
 この国はハリボテなのさ。」

 ディミトリオ・ハクヤが眉間に皺を寄せるとリリィは嫌味なくらいに鼻を鳴らして笑った。

「そのハリボテとやらも、いつまで持つのかしらね。」

「だから、君の力が必要なのさ。」

「人々を支えるのは貴方達、皇室や貴族の役目でしょう。
 私が出来るのは精々、宝樹に龍気を満たすだけよ。
 あっ。
 王宮を混乱させるの忘れてたわ。」

「クククッ。
 その両方が重要なんだよ。
 龍気を完全に失えば、この帝国は崩壊する。
 そして、今の帝国を財政面で苦労させているのは貴族であり、皇帝であり後宮にいる女達なんだ。」

「あら。
 私、少しは役に立てそうね。」

「そうだね。
 頼りにしてるよ。」

 その時だった。

「あー。
 真っ白な蛇さん。」

 可愛らしい少女の声が聞こえた。
 
「あれは貴族様の馬車よっ!
 駄目よ。やめなさい。
 申し訳ございません。
 申し訳ございません。」

 その母親が馬車を指差す少女を必死に隠し、何度も頭を下げている。

 リリィの首に巻き付いていたルーチェが不機嫌そうに鼻を鳴らすとリリィは優しく微笑み、その美しい体を撫でた。

「お嬢さん。
 この子は蛇じゃなくて龍ですよ。」

 ギョッとする母親の後ろから少女が顔を出し不思議そうに目をパチパチとさせた。

「龍?
 私、知ってる!
 御伽噺に出てくるよね。
 お姉さん、龍さんと友達なの?」

 物おじしない少女に比べて大人達の方が訝しがり、また怖がっている。

「えぇそうよ。
 私、龍と友達なの。」

 リリィが手のひらを広げ光の玉を出すとルーチェが息を吹きかけた。
 すると、真っ白な百合の花が辺り一面に飛んでいく。

「わぁぁぁ。
 キレイ!!」

 跳ねて喜ぶ少女の周囲では大人達が惚けるように空を見上げている。

「お嬢さん。
 御伽話ではなくて龍はいるのよ。
 この国の人に龍が愛されると私も嬉しいわ。」

 美しい百合の花が舞う中を馬車がゆっくりと去って行く。

「・・・龍の姫巫女様。」

 ベンチに座っていた老人がポツリと呟いた。

「龍の姫巫女様?」

 惚ける大人達の中で唯一聞こえた言葉に少女が振り返ると老人が涙を流しながら拝んでいた。

「そうじゃ。
 龍の姫巫女様がお帰りなさったのじゃ。」

 何故、泣いているの?

 そんな少女の疑問を置き去りに大人達は龍を連れた娘に心を奪われいた。

「あれ?オイラの足が痛くない。」

 松葉杖をついていた孤児の少年が不思議そうに自分の足を見つめた。

「ワシの腰も痛くないぞ。」

「あら、辛かった咳がとまったわね。」

 街の騒ぎはたちまち王宮に伝わる事となる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

今さら「間違いだった」? ごめんなさい、私、もう王子妃なんですけど

有賀冬馬
恋愛
「貴族にふさわしくない」そう言って、私を蔑み婚約を破棄した騎士様。 私はただの商人の娘だから、仕方ないと諦めていたのに。 偶然出会った隣国の王子は、私をありのまま愛してくれた。 そして私は、彼の妃に――。 やがて戦争で窮地に陥り、助けを求めてきた騎士様の国。 外交の場に現れた私の姿に、彼は絶句する。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

処理中です...